「パリ2024オリンピック(下記:パリオリンピック)」のBMXフリースタイル・パーク種目が現地時間2024年7月30日(火)~7月31日(水)の2日間にわたって開催され、31日(水)に決勝が行われた。男子はアルゼンチンのホセ・トーレス、女子…

「パリ2024オリンピック(下記:パリオリンピック)」のBMXフリースタイル・パーク種目が現地時間2024年7月30日(火)~7月31日(水)の2日間にわたって開催され、31日(水)に決勝が行われた。男子はアルゼンチンのホセ・トーレス、女子は中国のデン・ヤーウェンが金メダルを獲得。なお日本人唯一の出場となった中村輪夢選手は前回の東京大会と同じ5位入賞となった。

本種目のオリンピックデビューとなった東京2020オリンピックから3年が経ち、ついに迎えた2度目のオリンピック。出場選手にはここ3年で急激に力をつけたライダーもいれば、東京大会の雪辱を果たすべくリベンジを胸に挑むライダーなど、まさに今のBMXフリースタイルパークシーンを牽引する選手たちが勢揃いした。そして今大会はオリンピックの舞台にふさわしい史上最高レベルの一戦が繰り広げられ、BMXフリースタイルパークの歴史に新たな1ページが刻まれることとなった。

本記事ではそんな一戦の立役者となった中村輪夢選手とメダル獲得選手たちのパフォーマンスにクローズアップ。

5位入賞とメダル獲得にはならなかったが、BMXフリースタイル界に衝撃を与えた中村輪夢の世界初の2トリック

男子カテゴリーでは、参加選手12名の中から前日の予選を勝ち上がった上位9名によって争われた。日本からは中村輪夢が出場し予選6位で決勝進出を果たした。決勝では「オリンピックには魔物がいる」言われる所以はこのことか、今大会で1番の優勝候補と言われたアントニー・ジャンジャン(フランス)が1本目でビッククラッシュ、また東京オリンピック金メダリストのローガン・マーティン(オーストラリア)がラン2本ともに度重なる失敗から9位となりメダルを逃すなど強豪選手が苦戦を強いられる波乱の展開となった。その一方で各選手たちが今大会のために用意してきた新技を披露し競技レベルを引き上げ、まさにオリンピックにふさわしい歴史的な一戦となった。

そんな大会で中村は前日の予選を少し抑えめにも見えるような余裕を持ったライディングで6位通過を果たすと、決勝には4番目の出走者として登場。1本目のランでは最初からボックスジャンプでの「バックフリップ・テールウィップキャッチ to テールウィップ」や「360・ダブルダウンサイドテールウィップキャッチ to テールウィップ」という世界初の新技であるトリックを2つも組み込んだランで90.35ptをマーク。

暫定3位で迎えた2本目ではメダル獲得の確かにするためにもスコアを伸ばしたい中、ファーストトリックを同じく「バックフリップ・テールウィップキャッチ to テールウィップ」、その後「720・タックノーハンド」や「720・ダブルバースピン」など高難度トリックをメイクし、再度「360・ダブルダウンサイドテールウィップキャッチ to テールウィップ」も決めてフルメイクしたがスコアを思ったほど伸ばすことができず90.89ptをとなり、最終的には2つ順位を落として5位で大会を終えた。

今回は結果として惜しくもメダルを逃す形となったが、彼の繰り出した2つの新技はBMXフリースタイルのトリックレベルをさらに引き上げたことだろう。トリック一つ一つはそこまで真新しいものではなかったかもしれないが、今回注目したいのは「空中で一度キャッチする動作」だ。

この空中でキャッチしてから再度トリックを繰り出す動作は、対空時間のあるエアーと尋常ではないバイクコントロールを必要とするもので、それを「バックフリップ」や「360」などの回転技の中で行うのは、遠心力の影響も相まってさらに難易度が高いものになっている。彼が今後これらのニュートリックを武器に加えて、どのようにライディングを進化させて結果に結びつけてくるのか注目だ。

中村が善戦を繰り広げた今大会で、アルゼンチンのホセ・トーレスが並いる強豪選手たちを圧倒して金メダルを獲得

そんな戦いで見事金メダルを獲得したのはアルゼンチンのホセ・トーレス。彼のライディングの特徴はトリックのレパートリーはもちろんのこと、コース内のセクションを余すことなく活用しハイスピードのライディングかつ飛距離のあるエアーの中でトリックを繰り出す部分だろう。

ラン1本目は大きなトランスファーでの「アーリーウープ 360・ダブルテールウィップ」で始めると「720・テールウィップ」「フレア・ダウンサイドテールウィップ」など超高難度のトリックを詰め込み、終始スピードを途切らせることなく1分間のランを走り切りフルメイク。彼の良さが100%活かされたか、後続選手に大きなプレッシャーをかける大会最高得点となる94.82ptをマークし暫定1位に躍り出た。ラン2本目では1本目を上回ることはできなかったが、その後も94.82ptを超える選手はいなかったためパリオリンピックという大舞台で金メダルを母国アルゼンチンにを持ち帰った。

銀メダルに輝いたは現世界チャンピオンのキーラン・ライリー(イギリス)。豪快な回転技に定評のある彼はラン1本目では「720・ダブルバースピン」を皮切りに「トリプルテールウィップ 」や「バックフリップ・ダブルバースピン」など超高難度トリックをメイクしていき、最後は「フロントフリップ」を決めて強さを見せるライディングで93.70ptをマーク。

暫定3位で迎えた2本目ではなんとか暫定1位のトーレスを下すべく、1本目のトリックの完成度を上げながらいくつかトリックを変更。その中でも「360ダブルテールウィップ to バースピン」や「フレア・テールウィップ」など超高難度トリックを決めていくと93.91ptへ僅かながらスコアアップ。惜しくも金メダルには手が届かなかったがメダルの色を銅から銀に変える好成績を残した。

そして銅メダルは今回金メダルが一番期待された開催国フランスのアントニー・ジャンジャン。ラン1本目はプレッシャーもあったのかビックスパインでの「バックフリップ・ダブルテールウィップ」でミスしビッククラッシュ。

背水の陣で迎えた2本目では金メダルに返り咲くために渾身のライディングを見せる。1本目で失敗したファーストトリックである「バックフリップ・ダブルテールウィップ」をメイクすると、会場を沸かすビックトランスファーでの「アリウープ・ダブルフレア」や「バックフリップ・トリプルテールウィップ」などをメイクしていくと終盤には「オポジットフレア」をメイクし意地のパーフェクトランを見せたが、スコアは93.70ptとなり金メダルは逃したものの銅メダルを獲得した。

女子カテゴリーは優勝候補がフルメイクを逃す波乱の展開。そんな中で勝ち越したのは中国のデン・ヤーウェン

女子カテゴリーは男子同様で12名が参加し、決勝は予選を勝ち抜いた9人で行われた。こちらも東京オリンピック金メダリストのシャーロット・ワーシントン (イギリス)が予選敗退と波乱の幕開けとなったがその流れは決勝でも続いた。優勝候補だったアメリカのハンナ・ロバーツや中国のスン・ジアキが2本ともミスが続きフルメイクできずメダル争いから離脱するなど、オリンピックの独特な雰囲気に選手たちが翻弄された。 

そんな今大会で並いる強豪を抑えて金メダルを獲得したのはデン・ヤーウェン(中国)。ラン1本目では「ダブルテールウィップ」を皮切りに、ステップアップでの「バックフリップ・タックノーハンド」や、「トリプルバースピン」など様々な男子顔負けの高難度トリックをメイクし92.50ptをマークし暫定1位に。そのまま勢い付き迎えた2本目では、さらに1本目の完成度を上げるべく挑むと見事こちらもフルメイクで終えて0.1pt上回るスコアを残し、最高の色のメダルを見事中国に持ち帰った。

銀メダルはライダーたちが選ぶ「NORA CUP」にて2023年にウーマンライダーオブザイヤーに選ばれたそのライディングスタイルが人気のペリス・ベネガス(アメリカ合衆国)。昨年は前十字靭帯の怪我を経験した彼女だったが1年後のオリンピックでメダル獲得となる見事な復活劇を見せた。

ベネガスは1本目では他の選手よりも際立ったハイエアーと流れるようなフローのライディングの中に「スイサイド・ノーハンド to X-up」などスタイル溢れるランで83.40ptをマーク。2本目ではメダル獲得を目指しさらにランをアップデート。各セクションでトリックを入れながらハイエアーに「バースピン」や「360」など様々なトリックをメイクするパーフェクトランでスコアを90.70ptへ大きくジャンプアップさせて、東京大会では4位となり惜しくも目の前で逃したメダルを見事獲得した。

銅メダルを獲得したのはオーストラリアのナターリャ・ディーム。予選では8位通過だった彼女だが、決勝では見事なライディングを見せた。1本目では「ノーフットキャンキャン」やクオーターでの豪快な「フレア」など完成度の高いライディングで88.80ptをマークし暫定3位に。更にメダルの色を変えるべく2本目ではファーストトリックとしてボックスジャンプでの「フロントフリップ」や「タックノーハンド to タイヤグラブ」をメイクするも「フレア」のミスも響いたのか、ランをフルメイクで終えるも87.70pt。スコアを伸ばせなかったがそのまま順位をキープし銅メダルを獲得した。

今大会で新たなフェーズに突入したBMXフリースタイルパークシーン。会場を沸かせる新技もさることながら、どれだけコンスタントにかつコースを広く使って1分間同じフローの中でトリックを決め続けられるかが、今後の大会での成績を左右することになりそうだ。そんな歴史の1ページを刻んだパリオリンピックが終わり、また新たな戦いが始まる。今後もBMXフリースタイルパークシーンから目が離せない。

大会結果

<男子>
優勝: ホセ・トーレス (アルゼンチン) / 94.82pt
準優勝: キーラン・ライリー (イギリス) / 93.91pt
第3位: アントニー・ジャンジャン (フランス) / 93.76pt
5位: 中村 輪夢 (ナカムラ・リム) / 90.89pt

<女子>
優勝: デン・ヤーウェン (中国) / 92.60pt
準優勝: ペリス・ベネガス (アメリカ合衆国) / 90.70pt
第3位: ナターリャ・ディーム (オーストラリア) / 88.80pt

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