圧倒的なフィジカルの相手に「対抗する」ために 私は、今大会の組分けが決まったとき、ナイジェリアが最もやりにくい相手ではないかと考えていた。とにかく体が大きく、足も速く、並外れたパワーがある。なでしこジャパンの小柄な選手たちに体をぶつけてきた…
圧倒的なフィジカルの相手に「対抗する」ために
私は、今大会の組分けが決まったとき、ナイジェリアが最もやりにくい相手ではないかと考えていた。とにかく体が大きく、足も速く、並外れたパワーがある。なでしこジャパンの小柄な選手たちに体をぶつけてきたら、パスワークも分断されてしまうだろう。
2021年の東京オリンピック後に就任した池田太監督が努力してきたのは、そうした圧倒的なフィジカルの相手に対抗できるチームづくりだった。フィジカルな戦いを挑んでくる相手に対抗するには、「プレースピード」を高めるしかない。
その要素は、切り替えの速さ、アプローチのスピード、パススピードなど、いくつもあるが、何より重要なのは判断の速さに違いない。パスを受けてさばく判断だけでなく、どこにポジションを取るかの判断で相手に先んじることができなければ、「フィジカルの餌食」になってしまうからだ。
このナイジェリア戦で、前半の限られた時間だけとしても、その池田監督の努力が実を結んだのは、称賛に値する。それだけに、それを保つ時間が短かったこと、後半にはほとんど出せなかったことは、小さくない懸念だ。
守屋都弥と北川ひかるを「引っ込めると」と
「プレースピード」が落ちた結果、後半のなでしこジャパンがつくったチャンスは、前半の2つの得点時のような美しいコンビネーションではなく、前がかりになった相手の裏をつくカウンターだけだった。高い「プレースピード」でゲームを支配し、相手陣で試合を進め、得点するという、目指す形は生まれなかった。
後半のリズムの悪さの原因は、選手交代にあったかもしれない。とくに「サイドバック系」の選手が守屋とケガ明けの北川しかいない結果、その2人を引っ込めると組織力が大幅に下落してしまったことは否定できない。熊谷紗希がそのチームの崩れを何とか最終ラインで支え、3-1のまま逃げ切ったが、次の準々決勝に向け、懸念材料となってしまった。
準々決勝は8月3日土曜日、15時(日本時間22時)キックオフのアメリカ戦。会場はパリのパルクデプランス。アメリカはかつての「無敵チーム」ではない。ナイジェリア戦の前半5分から32分にかけて見せた「プレースピード」を出し、長時間保つことができれば、勝機はある。