ゴール後に複数回に渡って嘔吐してしまったミスラウチュク。(C)Getty Images 前代未聞の強行開催による影響は小さくなかった。現地時間7月31日に行われたパリ五輪の男女トライアスロンだ。 レース場のコンディションは芳しくなか…

ゴール後に複数回に渡って嘔吐してしまったミスラウチュク。(C)Getty Images

 前代未聞の強行開催による影響は小さくなかった。現地時間7月31日に行われたパリ五輪の男女トライアスロンだ。

 レース場のコンディションは芳しくなかった。スイム会場となるセーヌ川は、連日降り続いた雨の影響で、生活排水が流れ込んで水質が悪化。さらにシャンゼリゼ通りなどを走るバイク(自転車)でも雨のせいで転倒者が続出したほか、30度を超えた当日の気温が選手たちの体力を容赦なく奪った。

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 そもそもスイム練習は2日にわたり中止にされ、男子の競技自体も30日から開催延期に。異例のスケジュールで開催されたレースでは、健康被害を出してしまった選手もいる。カナダ男子代表のタイラー・ミスラウチュクだ。

 1時間44分25秒の全体9位でフィニッシュした29歳は、ゴールラインを突破した直後に嘔吐。両膝に手を当て、下を向いたまま、10回にわたってその場に吐き戻した。これが水質の悪化したセーヌ川の水を飲んだ影響か、はたまた肉体疲労によるものであったかは不明。だが、全世界に配信された中継でも流れた映像がショッキングなものであったのは言うまでもない。

 海外メディアは、当日の早朝にレース開催を推し進めた大会委員会の判断を断ずる。カナダの日刊紙『Toronto Sun』は「ミスラウチュクは文字通りすべてを出し切った」と皮肉交じりにリポート。そのうえで、今回の強行開催を批判している。

「トライアスロンという競技はそもそも過酷なものだ。しかし、この日は通常の非ではなかった。男子は午後に開催されたのだが、男子選手がフィニッシュラインを通過する頃には、気温が約30度にまで上昇し、空気の質も悪くなっていた。さらにスイム部門で使用されるセーヌ川の汚染状況も最悪だった」

 果たして、本当に強行開催をすべきだったのか。一部選手から「選手の健康は考えていない」と断じられている決断に対する論争は尽きそうにない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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