アルゼンチン戦の終盤に小野寺のブロックで流れを引き寄せた(C)Getty Images 決勝トーナメント進出に向け、日本、アルゼンチン、両者にとって絶対に負けられない大一番。勝利を引き寄せたのは、第5セット、14-13の場面での小野寺太志の…

 

アルゼンチン戦の終盤に小野寺のブロックで流れを引き寄せた(C)Getty Images

 

 決勝トーナメント進出に向け、日本、アルゼンチン、両者にとって絶対に負けられない大一番。勝利を引き寄せたのは、第5セット、14-13の場面での小野寺太志のブロックだ。

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 アルゼンチン代表で、石川祐希と同じイタリアセリエAのミラノでプレーし、来季は共にペルージャへの移籍が発表されているアグスティン・ロセルのBクイックを小野寺が1枚で止めた。会心の一本に、普段は自身が得点をしても冷静沈着に振る舞う小野寺も、喜びを爆発させた。

 試合中継の実況、解説でも「ミドルブロッカーが課題だった」と何度も触れられていたように、東京オリンピックを終えてからの3年間、日本の課題として掲げられ、求められてきたのがミドルブロッカーの成長だ。

 小野寺、山内晶大、髙橋健太郎。全員が2メートルを超え、日本の誇るミドルブロッカーであるのは間違いないが、世界を見渡せば高さやパワー、技や経験で勝る、いわば猛者とも言うべきミドルブロッカーはいくらでもいる。

 海外で経験を重ねてきた石川祐希や髙橋藍、外国人選手にも負けないパワーを持つ西田有志といったアウトサイドヒッター、オポジットも日本の武器ではあるが、攻撃が偏れば相手のブロックもレシーブも対策するのは簡単だ。実際に銀メダルを獲得したネーションズリーグの決勝でも、フランスはここぞという時にことごとく石川をブロックで仕留めた。

 当然石川に対しての警戒が厚かったこともあるが、いかに相手に絞られにくい状況をつくり、より多く得点を取るか。そのために多彩な攻撃は不可欠で、その鍵になるのがミドルブロッカーでもある。セッターの関田誠大がミドルブロッカーを使う攻撃を得意とすることもあり、本数を増やし、決定力を上げることは日本にとって不可欠な課題と考えられてきた。

 もちろん攻撃だけでなく、ブロックも同じだ。東京オリンピックや、2022年の世界選手権、さらに昨年のパリオリンピック出場権のかかったワールドカップ、敗れたエジプト戦では相手の攻撃を何本もブロックに当てられて弾かれた。複雑な攻撃ではなく、高いトスを高いところから打つシンプルな攻撃の連発だっただけに、なぜあれほどブロックが弾かれるのか、と思わされた人も少なくないはずだ。

 ブロックといえばやはりミドルブロッカーが要になるのは言うまでもない。パリオリンピックに向けてもブロック力を強化し、セッター関田とのコンビをより強固にする。その成果を最高の形で発揮したのが小野寺だった。

 中学までは野球部に入り、ピッチャーとしても活躍した。そのまま野球の道に進む選択もあった中、2メートルの高さを買われ、中学3年の大会を終えてからバレーボールに転向した。東海大学入学後に日本代表にも選ばれ、アウトサイドヒッターにも挑戦した器用な選手だが、その器用さも小野寺の武器で、野球で鍛えた運動量もラリーが続いた場面で繰り返しブロックに飛び、攻撃に入る強さにもつながっている。

 次戦は日本時間8月3日未明に行われるアメリカ戦だ。世界屈指のスパイカーが揃うアメリカだが、アーロン・ラッセルやトーマス・ジェスキーといったアウトサイドヒッターの選手たちは、昨シーズンまで日本でプレーしていた選手で、サントリーでVリーグを制した小野寺ももちろん対戦している。きっと日本の壁となり、そびえ立つはずだ。

 

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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