◆パリ五輪 第4日 ▽柔道(29日、シャンドマルス・アリーナ) 男子73キロ級の橋本壮市(パーク24)が銅メダルを獲得した。準々決勝でジョアンバンジャマン・ガバ(フランス)に延長戦の末、反則負けを喫したものの、敗者復活戦を勝ち上がり、アキル…

◆パリ五輪 第4日 ▽柔道(29日、シャンドマルス・アリーナ)

 男子73キロ級の橋本壮市(パーク24)が銅メダルを獲得した。準々決勝でジョアンバンジャマン・ガバ(フランス)に延長戦の末、反則負けを喫したものの、敗者復活戦を勝ち上がり、アキル・ジャコバ(コソボ)との3位決定戦では開始8秒で背負い投げで技ありを奪って優勢勝ち。日本柔道に通算101個目のメダルをもたらした。32歳11か月5日でのメダル獲得は、2008年北京五輪銅の谷亮子を3日上回る日本柔道最年長記録。橋本の激闘を、1996年アトランタ五輪金メダルの中村兼三・旭化成総監督が分析した。

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 橋本の銅メダルは本当に誇らしい。これまで、リオ、東京五輪連覇の大野将平(旭化成)との代表争いで苦労してきたし、将平の影に隠れてしてきた悔しい思いが、メダルに結びついたんだと思う。

 本来は勝負度胸があって、ものおじしないのが強み。引かずに前に出て、自分の柔道に徹していた。敗者復活戦では危ない場面もあったが、経験から身につけた勝負感でかわしていた。32歳とチーム最年長は、ジュニア時代から長い間、第一線で活躍してきたのは素晴らしいことだと改めて思うし、持てる力は発揮していた。

 初戦、3位決定戦と技ありを奪った組み際の技は、橋本の持ち味だ。ある時期、得意の袖つり込み腰のかけ方が危ないと指摘されると、技を変化させた。やってきたことに固執するタイプの選手もいる中、橋本は持ち味を生かしながら柔軟に対応した。体にしみついたものを変えるのは大変なこと。それができたのが進化したことにほかならない。

 準々決勝は、ガバに組み手の変化や間合いをつめられて、得意の形にはなかなか持ち込めなかった。地元の英雄に送られた声援はすごかった。海外の試合では、熱狂的な観客が審判にアピールしたりもする。僕もフランス国際で、すごいブーイングを受けたこともあった。でも、こういう完全アウェーの試合を経験することによって、「もっと力をつけないと」とか「決めきる技を身につける」などの意識を高めることができる。若い選手が橋本らベテランとしのぎを削ることで、日本柔道全体のレベルは上がる。同時に、積極的に海外に出て試合をすることも大事だと思う。(1996年アトランタ五輪男子71キロ級金メダル、旭化成総監督)