平野コーチに抱えられ、会場を去った阿部。(C)Getty Images 日本柔道界の“絶対女王”が早期敗退。この衝撃的な…

平野コーチに抱えられ、会場を去った阿部。(C)Getty Images

 日本柔道界の“絶対女王”が早期敗退。この衝撃的な結果に列島、いや世界が大きな驚きに包まれた。

 現地時間7月28日にパリ五輪・柔道女子52キロ級が行われ、五輪連覇を狙った阿部詩は2回戦で世界ランク1位の名手ディヨラ・ケリディヨロワ(ウズベキスタン)と対戦。開始2分すぎに内股で技ありを奪い有利に試合を進めていたが、3分4秒に谷落としでまさかの一本負けを喫し、畳に倒れた。

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 ケリディヨロワの一本がコールされた直後、阿部は何が起きたのかを理解できていないような表情で呆然と座り込む。そして何とか立ち上がって礼を済ませ、フラフラした足取りで畳から降りるも大号泣。声が会場中に響き渡るほどに“ギャン泣き”した。

 平野幸秀コーチに抱えられてなんとか歩を進めた阿部。しかし、頭を下げたままの彼女の姿は、敗戦の衝撃がどれだけのものなのかを何よりも物語った。

 常に勝利を求められ、兄・一二三とともに兄妹での金メダル獲得も期待された。ゆえに重圧の大きさは想像に難くなく、五輪と言う大舞台での敗北という現実が彼女を追い詰めたのは間違いなかった。

 ただ、ケリディヨロワも世界ランク1位の実力者である。敗北の要因や責任が阿部だけにあるというわけはない。実際、「谷落とし」は見事だった。

 試合後に阿部のインスタグラムには、涙する光景に感銘を受けた視聴者からコメントが殺到。「もらい泣きしました」「とんでもない努力をしていたと思うと感動しました」「誇り高く胸を張って帰ってきてください」と本人の気持ちを慮るメッセージが相次いだ。

 一方で心無い声も相次いだ。匿名のアカウントは阿部を嘲笑うかのように「泣きじゃくるのは控室に帰ってから。他の選手にも迷惑」「柔道家なら控室で泣くべきだろ」「ギャン泣きの柔道家は恥ずかしい」「あの態度はない」「甘い」といったコメントも並べた。それも日本語でわざわざ書き記されているから悪質だ。

 近年、SNSはアスリートにとっても必要不可欠なものとなった。とりわけ個人スポーツに励む選手たちにとっては、重要なセルフプロモーションの機会ともなる。しかし、阿部のような有名選手にとっては諸刃の剣にもなり、卑劣な口撃の的となる場合も多々ある。

 スポーツは人間がやる以上は敗北やミスは必ず付きまとう。当然、選手たちもある程度の「批評」は覚悟の上であるだろう。とはいえ「SNSをやっているから仕方ない」「柔道家なら」と選手の人格や尊厳を否定するのは言語道断だ。

 阿部は悔しさを隠せず、感情が溢れ出た――。その人間らしい行動がなぜダメなのだろうか。

 今回の一件は改めてSNSの在り方を考えるキッカケとすべきかもしれない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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