硬式を打てるバッティングセンター運営…福原芳之氏「野球本来の楽しさを」 将来の野球界を担う子どもたちに思う存分、硬式ボー…
硬式を打てるバッティングセンター運営…福原芳之氏「野球本来の楽しさを」
将来の野球界を担う子どもたちに思う存分、硬式ボールを打ってもらいたい。徳島県小松島市で野球塾「J-PARK」を運営する福原芳之さんは、最先端の野球理論と反復練習を組み合わせた“質と量”の指導が評判を得ている。今回、First-Pitchでは全国の注目野球塾の指導方針や、こだわりの練習法などを取材。技術指導にとどまらない、コーチングの信念を聞いた。
福原さんが育った徳島は都会に比べると野球施設が少なく、硬式ボールを打てるバッティングセンターもなかったという。地元の球界関係者も危惧するなか「バッティングセンターや個人練習ができる施設が必要だと話は出ますが、なかなか実現できない。それなら自分がやればいいのでは」と、すぐさま行動に出たという。
打撃練習ができる室内練習場となれば、それなりの大きさが必要。福原さんは当時、家を建てたばかりで「借入には苦労しました。道楽でやるわけにもいかないので」と苦笑する。それでも、知り合いから220坪の倉庫を用意してもらい、2022年に県内屈指の施設が誕生した。
SNSにも力を入れており、福原さんのインスタグラムはフォロワー数5万6000人を超える。日本だけでなく海外のフォロワーも多く、練習動画には英語のテロップを入れるほど。なかでもバットとフラフープを組み合わせた打撃ドリルが好評で、正しいバット軌道がわかりやすく学べる。
「SNSは“エンタメ”と思ってやっています。野球塾に来られない子どもが家でもできるように。日本人だけでなく世界共通で学べるのがSNSですね。実際に塾に来る子にはフラフープを使った打撃指導はほとんどしません。フラフープがなくても直接、体の動きなどは指導できますので。集客もSNSに頼るわけでもなく、口コミがほとんどですね」
まだ存在する勝利至上主義の指導者「悩んだ親子が泣きながら相談」
これまで数多くの子どもたちを指導してきた福原さん。昔に比べると技術は各段に上がっているが、自らを表現できない子どもたちが多いという。指示を待ち、監督の顔色を伺うなど……。精神的にも追い詰められながらプレーする姿に疑問を抱いている。
「まだ、勝利至上主義の指導者はたくさんいます。言葉は選んでいると思いますが、伝え方なども含めて。チーム内で悩んだ親子が泣きながら相談に来たこともあります。野球の本来の楽しさを知ることなく、やめていく子どもたちも多い。これははっきり言えます」
福原さんが指導するのは技術だけではない。悩む子どもたちに耳を傾け、野球の本来の楽しさも伝えている。「控えの選手ならチームでの役割も限られるので、自分のできない体験をさせてあげます。例えばバントばかりの子でも、ホームランを打つ喜びを知ってもらったり。個々によって違いますが、頑張れば超えられるハードルを与えてあげます。もちろん、しっかりとした理論、練習法があり、数もやることが大事です」。目標を近くに置き、たくさんの成功体験を与えていくという。
悩みを持つ子どもたちに寄り添い、技術向上のためには練習量も必要。“質と量”にこだわった指導法を展開する「J-PARK」は、8月5日からの「少年野球個人練習EXPO」でも紹介予定。徳島の地から将来を背負う、多くの野球人を輩出するため、福原さんは歩みを止めることはない。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)