今シーズンのセ・リーグは、昨年と打って変わって大混戦の様相を呈している。球団初の連覇を目指す阪神、26年ぶりV奪還を目…

 今シーズンのセ・リーグは、昨年と打って変わって大混戦の様相を呈している。球団初の連覇を目指す阪神、26年ぶりV奪還を目指すDeNA、阿部慎之助新監督率いる巨人、そして虎視眈々とペナントを狙う広島が、激しい首位争いを繰り広げている。解説者の緒方耕一氏に後半戦の展望を占ってもらった。
※順位、成績は前半戦終了時のもの


前半戦を首位で折り返した巨人・阿部慎之助監督

 photo by Koike Yoshihiro

【巨人のキーマンは坂本勇人】

── 巨人が1990年以来、じつに34年ぶりに前半戦全カード勝ち越し&首位ターンでした。

緒方 戸郷翔征(7勝)、山﨑伊織(7勝)が各カードでそれぞれ頑張り、そこに菅野智之(8勝)が加わり、首位ターンの原動力となりました。また、アルベルト・バルドナード、高梨雄平、カイル・ケラー、船迫大雅ら左右の中継ぎ陣も充実していましたし、抑えの大勢も戻ってきました。昨年に比べ、投手陣の充実度が光ります。

── 打撃陣はいかがですか。

緒方 1番・丸佳浩がハマりました。今季、全体的に「投高打低」のなか、丸は初球から積極的に打ち、打率も3割を超えています。プレーボールでいきなり丸を迎えるのは、相手投手にとってかなりプレッシャーになると思います。

── 4番の岡本和真選手は相変わらず本塁打、打点が多いですし、途中加入のエリエ・ヘルナンデス選手もいい働きを見せています。

緒方 私は開幕直後の大谷翔平(ドジャース)のように、岡本を2番に置いても面白いと思います。ヘルナンデスについては、相手のマークも厳しくなってくると思いますので、これからが本当の勝負になってきます。

── それ以外の選手はいかがでしょうか。

緒方 前半戦のMVPは外野手の丸と並び、内野陣を牽引した吉川尚輝だと思っています。それくらい攻守での貢献度が大きかった。気になるのは、新外国人のココ・モンテスです。ショートやサードの練習をしていたと聞きましたが、門脇誠や泉口友汰、坂本勇人らとの兼ね合いでどこを守るかですね。日本は細かいサインプレーが多いので、どこまで対応できるのか。あと、巨人にとって大きかったのは捕手の岸田行倫が成長したことですね。

── 巨人の後半戦のキーマンを挙げるとすると誰になりますか。

緒方 坂本勇人の復調だと思っています。彼が普段どおりの活躍をしてくれれば得点力は上がりますし、チームに勢いがつく。もうひとり挙げたいのは、捕手から一塁を守ることが多くなった大城卓三ですね。もともとバッティングに定評のある選手ですし、勝負強さも兼ね備えている。打線に厚みを持たせるためにも欠かせない存在です。

【勝利の方程式を確立した広島】

── 前半戦2位の広島は、チーム防御率2.16とダントツの成績を残しました。

緒方 得点力はDeNAよりも1試合平均で1点ほど少ない。それでいてこの位置にいるのは、投手陣の頑張りが大きいからです。ノーヒット・ノーランを達成し、防御率0点台の大瀬良大地、前半戦ハーラートップの9勝を挙げた床田寛樹、さらに森下暢仁、九里亜蓮もいて先発陣は安定しています。さらに抑えには栗林良吏が控えているので彼にまでどうつなぐのか。自分たちの戦い方を持っているというのは強みです。

── やはり野球は投手力が大事ですね。

緒方 広島は少ない得点で勝っているわけですが、投手交代を含め、新井貴浩監督の選手起用も見事です。

── 打線は、プロ6年目の小園海斗選手が4番に定着しました。

緒方 秋山翔吾、野間峻祥、小園の3人が打撃10傑に入るなど、前半戦を支えてきました。守備ではショートの矢野雅哉が、アクロバチックなフィールディングで注目を集めています。

── 後半戦のカギを握るのは?

緒方 投手力が安定しているだけに、あとは打線の奮起でしょう。先述した秋山、野間、小園のなかでひとりでもケガをしてしまうと大変なので、打線はこの3人の活躍に注目したいですね。

【リーグ屈指の攻撃力を誇るDeNA】

── 広島とは対照的に、DeANは攻撃力の高さが目立っています。

緒方 チーム打率、本塁打、盗塁、得点と、すべてリーグトップ。もともと伝統的に攻撃力に定評のあるチームですが、今季も佐野恵太、宮﨑敏郎、牧秀悟の中軸は健在。とくに牧は9盗塁を記録するなど、機動力も見せています。

── 今季はルーキーの度会隆輝選手が加わりました。

緒方 開幕戦で衝撃的なデビューを飾り、チームに勢いをもたらしてくれました。また、打てる捕手として売り出し中の山本祐大の成長も大きい。そしてなにより大きいのは、タイラー・オースティンですね。毎年ケガで長期離脱を余儀なくされていましたが、今年は本塁打王を争うなど、しっかりチームに貢献しています。

── DeNAの戦いを見て、感じることはありますか。

緒方 得点力の高さはリーグ屈指ですが、ひとつ気になるのは犠打数が圧倒的に少ないことです。昨年は143試合で106個だったのが、今年は88試合消化の時点で35個。シーズン終盤の落とせない戦いになった時に、現在のスタイルを貫けるのか注目したいですね。

── 26年ぶりの優勝に向け、あとは投手陣ですね。

緒方 先発陣では、昨シーズン最多勝の東克樹が今年もすばらしいピッチングを披露しています。彼に続く存在の投手が出てくれば、優勝も期待できると思います。

【投打の噛み合わない阪神】

── 昨年、2位に10ゲーム以上の大差をつけて優勝した阪神ですが、前半戦は4位と苦しみました。

緒方 才木浩人が前半戦8勝3敗と成長を遂げましたが、6月16日以来、勝ち星から遠ざかっています。また、昨シーズン最優秀防御率のタイトルを獲得し、新人王とMVPに輝いた村上頌樹も前半戦は3勝7敗。ただ内容は決して悪くはないので、どこまで踏ん張れるかがカギになりそうです。

── 打撃陣が軒並み不振です。

緒方 打線の援護に恵まれていません。近本光司、大山悠輔、佐藤輝明、森下翔太の中軸、つなぎ役の中野拓夢と、全員が打率2割5分以下です。もう少し得点力が上がれば、もっとラクな展開になるのですが......。

── 後半戦はどのような戦いを期待しますか。

緒方 森下、大山、佐藤のクリーンアップに期待したいですね。先発には才木、村上のほかに大竹耕太郎、伊藤将司、西勇輝が控えており、リリーフには桐敷拓馬、岩崎優をはじめ実力者が揃っています。隙のない昨年のような戦いに持ち込めれば、まだまだチャンスはあります。

── ズバリ、優勝はどのチームだと予想しますか。

緒方 ダンゴ状態なのでどこが優勝してもおかしくないと思います。ただ前半戦の戦いぶりを見ると、巨人だけが全チームに勝ち越しているわけです。私はお得意さんチームをつくるより、苦手チームをつくらないことのほうが大事だと考えています。

── それ以外、巨人にアドバンテージの要素は何かありますか。

緒方 巨人、広島、DeNA、阪神の4チームで、本拠地がドーム球場なのは巨人だけです。酷暑の夏場、疲労が蓄積していくのではなく、いいコンディションのなかでプレーできます。さらに雨天中止などで先発ローテーションの組み換えが少ないことも有利に働くと思います。それらの理由から、優勝争いは巨人を中心に展開すると予想します。

緒方耕一(おがた・こういち)/1968年9月2日、熊本県生まれ。熊本工業高から87年にドラフト6位で巨人に入団。プロ入り後にスイッチヒッターに転向し、3年目に一軍初昇格。快足一番打者として頭角を現し、90年に盗塁王獲得。その後、足の故障を克服して93年に2度目の盗塁王に輝いたが、相次ぐ故障により98年に30歳の若さで現役引退。通算成績(実働9年)は685試合出場、打率.263、486安打、17本塁打、130打点、96盗塁。引退後はコーチ、スポーツコメンテーターとして活躍。09年のWBCでは日本代表のコーチを務め、世界一に貢献した