世界王者のドイツに食らいつくことはできたが、終盤は息切れてしまい、77−97の20点差で敗れた日本。  ただ、昨年のワールド…

 世界王者のドイツに食らいつくことはできたが、終盤は息切れてしまい、77−97の20点差で敗れた日本。

 ただ、昨年のワールドカップでは前半で22点差(最終スコア63−81)、7月20日の強化試合では前半で25点差(最終スコア83-104)をつけられたが、今回は違った。前半を44-52と一桁差で折り返し、第3クォーターには打ち合いになったシーンもあった。八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)とジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)がインサイドで踏ん張り、トータルリバウンドで39対36本と上回ったからこそ、中盤まで競り合うことができた。明らかに、これまでよりステップアップした試合を展開したのだ。

 この1年で3度目の対戦。手の内を知るドイツに対しては、起点となる司令塔のデニス・シュルーダー(ブルックリン・ネッツ)と、高確率で3ポイントを決めるアンドレアス・オブストのラインを断ち切ることが命題とされた。そのプランに対して日本は、7月22日のセルビアとの強化試合から2番のスタメンに抜擢された吉井裕鷹(三遠ネオフェニックス)がシュルーダーにマッチアップすることで対策。また、渡邊雄太(千葉ジェッツ)の完全復活も日本にエネルギーをもたらしていた。

 6月上旬に左ふくらはぎの肉離れを起こしていた渡邊は、「オリンピックまでに間に合うかどうかギリギリの状態」であることを明かしており、国内で行われたオーストラリアと韓国との強化試合を欠場。「大会までにやれる最大のことをやって死ぬ気で治します」と語っていた。

 その言葉通り、7月22日にセルビア戦との強化試合で復帰。プレータイムは15分程度で制限がかかっていたが、スタメンとして登場し、3ポイント2/4本を含む10得点をマーク。渡邊の復活は高さとディフェンス面で効果をもたらし、チームの3ポイントも20/46本(43パーセント)まで上がったことで、上昇の兆しを見せた試合になった。左足全体に黒いサポーターをつけて走る姿からは、リハビリを懸命にこなしたであろう日々が目に浮かび、「絶対にオリンピックのコートに立つ」という心意気が伝わってきた。

 渡邊はトランジションのから3ポイントを確率よく決めて(3/5本)前半で13得点。見せ場となったのが、16点差をつけられた前半残り3分。富樫勇樹(千葉J)からのパスを受けて3本目の3ポイントを決め、停滞していた流れを引き寄せたシーンだ。この後、八村がフリースローでつなぎ、前半を8点差で終えている。

 だが、後半は修正してきたシュルーダーのゲームメイクを止められず、ドイツのベンチメンバーに多くのスコアを許してしまい、第4クォーターに失速。八村とホーキンソンはプレータイムが35分超え、渡邊も34分出場。決勝トーナメントに進むには得失点差が重要となるため、初戦は手堅く点差を離されないプランを遂行するしかなかった。

「前半の戦い方は自分たちが間違いなく成長できている手応えを感じました。しかし後半、相手の高さ、パワーに対応しきれず、体力を奪われて足が止まりました」(渡邊)

 後半に失速してしまったことは反省点だ。ただ、渡邊個人のことで言えば、オリンピック前に一試合しかこなせない中で、よくぞ本番に間に合ったと言える。渡邊は3ポイント4/9本(44パーセント)、2ブロック2リバウンド16得点を記録し、オリンピックで戦える体調であることを示した。ドイツ戦で得た経験値と手応えを次戦につなげるのみだ。

 渡邊はこう締めくくり、3日後のフランス戦を見据えた。

「大事なのは次の試合。フランスは間違いなく高さで勝負してくる。高さを嫌がって足を止めたら終わり。自分たちからオフェンスを早く仕掛けて、相手を疲れさせることが大事。次の試合では40分間戦い続けます」

文=小永吉陽子