夏の北海道シリーズ唯一の牝馬限定重賞、GIIIクイーンS(札幌・芝1800m)が7月28日に行なわれる。同レースについて、スポーツ報知の坂本達洋記者はこう語る。「夏の札幌の牝馬限定重賞として定着して久しいですが、この開催時期からして『ここ…

 夏の北海道シリーズ唯一の牝馬限定重賞、GIIIクイーンS(札幌・芝1800m)が7月28日に行なわれる。同レースについて、スポーツ報知の坂本達洋記者はこう語る。

「夏の札幌の牝馬限定重賞として定着して久しいですが、この開催時期からして『ここを目標に』というより、『秋に向けてのいいステップに』といった陣営が多いのは事実です」

 そうした位置づけにあってか、過去にはGIでも好走歴のある馬が数多く出走。その実績どおり、きっちり結果を出している馬も少なくない。坂本記者が続ける。

「昨年は3歳馬のドゥーラがGIオークス(3着。東京・芝2400m)からの出走で快勝。51kgの軽量を生かして、1番人気に応えました。過去10年の結果を振り返ってみても、前走でGINHKマイルC(東京・芝1600m)を勝ったアエロリット(2017年)や、海外GIのドバイターフ(メイダン・芝1800m)で3着だったディアドラ(2018年)が勝利。ほかにも、GIヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)からの臨戦で結果を出した馬が何頭もいます」

 レースの傾向はどうか。坂本記者はこんな見解を示す。

「通常、札幌開催の2週目に行なわれる一戦ですから、芝コースの馬場状態は良好のため、逃げ・先行が有利なのは確かです。とはいえ、決して差しが届かないわけではありません。2020年には11番人気のレッドアネモスが最内の1枠1番からインで脚をタメて、馬場のいい内を通って差し切りました。

 同レースでは、1番人気ながら3着に終わったスカーレットカラーも、4角11番手から内の馬群をさばいて最後に突っ込んできました。実力派が集う重賞レベルなら、平場のレースのような逃げ・先行有利という先入観は捨てても構わないでしょう」

 GI出走馬や重賞実績豊富な実力馬が顔をそろえる一戦ゆえ、1番人気は過去10年で3勝、2着3回、3着2回と、その信頼度は高い。ただ一方で、坂本記者が触れたレッドアネモスや、2015年のメイショウスザンヌ(7番人気1着)、2016年のマコトブリジャール(9番人気1着)など、人気薄の台頭もしばしば見られる。

 はたして、今年はどうか。

 坂本記者は「今年もヴィクトリアマイルからの臨戦馬が6頭出走。それらが人気を集めそうですが、自分は思いきって穴を狙ってみたいと思います」と言う。そして、その推奨馬としてエリカヴィータ(牝5歳)の名前を挙げた。

「3歳時に勝ったGIIフローラS(東京・芝2000m)を最後に白星から遠ざかっていますが、秘めた実力は確かです。フローラSを勝った当時の馬体重は442kgでしたが、前々走のGIII福島牝馬S(4月20日/福島・芝1800m)、前走のGIIIマーメイドS(6月16日/京都・芝2000m)では、いずれも464kgとデビュー以来最高の馬体重。管理する国枝栄調教師も『馬体はしっかりしてきた』と成長を認めています。


クイーンSでの一発が期待されるエリカヴィータ

 photo by Sankei Visual

 福島牝馬Sでは、直線で他馬に寄られる場面もあって追い出しがワンテンポ遅れてしまいましたが、最後まで集中を切らさずに脚を使って5着を確保。復調の兆しを見せたレース内容でした。

 翻(ひるがえ)って、マーメイドSでは位置取りが悪くなってしまったうえ、ちぐはぐな競馬になって7着。それでも、スムーズなら、と思わせる走りでしたから、見限るのは早計です。

 この中間は、1週前に美浦Wコースで6ハロン82秒8、ラスト1ハロン11秒4と好時計をマーク。体調のよさをアピールしています。その後は、函館に移動。最終追い切りは函館Wコースで併せ馬を消化しました。

 現地で担当している厩舎スタッフに話を聞くと、『冷静に走れていましたし、後ろから(僚馬が)来てからの反応もありました。札幌への輸送もあるのでソフトにやりましたが、最後だけ気合をつける感じもよかったです』と好評価。うまく立ち回ることができれば、一発あってもおかしくありません」

 坂本記者はもう1頭、気になる馬がいるという。オークス(12着)からの転戦となるコガネノソラ(牝3歳)だ。

「前走後、放牧を挟んで気候的なアドバンテージがある函館で調整を重ねてきた点に好感が持てます。追い切りでは、今回鞍上を務める丹内祐次騎手が付きっきりで騎乗。仕上がりはよさそうです。

 オークス出走前に3連勝でリステッド競走のスイートピーS(4月28日/東京・芝1800m)を制していますが、重賞は未勝利。ここでは挑戦者の立場になりますが、斤量51kgというのは魅力です。

 北海道での競馬は今回が初めてになりますが、洋芝に強いゴールシップ産駒で、母のマイネヒメルも函館で3勝をマーク。血統背景はいかにも力を要する洋芝が向きそうで、狙いたくなる要素が多い穴馬と言えます。大駆けの条件がそろうなか、期待が膨らみます」

 北の大地で行なわれる牝馬たちの熱き戦い。高配当を狙うなら、ここに挙げた2頭から勝負してみるのも悪くない。