先日、所属するポルトガル1部ベンフィカからベルギー一部シント=トロイデンへの移籍を発表した、パリ五輪サッカー日本代表ゴールキーパーの小久保玲央ブライアン。 初戦パラグアイ戦で5-0の完封勝利に貢献した日本の守護神へのインタビュー第5回は、…

 先日、所属するポルトガル1部ベンフィカからベルギー一部シント=トロイデンへの移籍を発表した、パリ五輪サッカー日本代表ゴールキーパーの小久保玲央ブライアン。
 初戦パラグアイ戦で5-0の完封勝利に貢献した日本の守護神へのインタビュー第5回は、海外リーグでゴールキーパーとして戦う上で気をつけていることや、ミスして落ち込んだときに支えてくれた元日本代表レジェンドの言葉、そして、ベンフィカで遭遇した怪物アタッカーまで、パリで奮闘を続けるS・G・G・K(スーパー・グレート・ゴール・キーパー=『キャプテン翼』©高橋陽一)に、話を聞いた!

 「ポジティブな言葉をかけるように」

――コーチングで大切にしていることは、なんでしょうか?

小久保 セットプレーなど、チームメートが集まる瞬間を大事にしています。「ここは絶対に守るぞ!」とか、プラスになる声かけをして、みんなはもちろん自分の意識も高めています。
 それに、試合の終盤はみんな疲労がたまって走れなくなるので、そんなときこそ、キーパーが後ろから声をかけて助ける。他のポジションに比べて、キーパーは、あまり疲れないので(笑)。疲れている選手がいたら、「このまま0点で抑えよう!」とか、「あとちょっと頑張ろう!」とか、そういうポジティブな言葉をかけるようにしています。
 海外では、強い言い方でビシッと気合を入れるのが良いキーパーの条件に挙げられているんですけど、自分は、あまりそういうことはしません。誰かがミスをしても、それは試合中のできごとなので叱ってもしょうがない。それよりも、強い言葉を使わずに、いかにチームメートを鼓舞できるかが重要だと思います。

――では、自分がミスをしてしまった場合は?

「試合後に反省をするように」

小久保 それが難しいんですよね、けっこう落ち込むタイプだったので(笑)。でも以前、元日本代表の川島永嗣さんとお話しする機会があって、自分の良くない部分として、失点したときに落ち込んでしまうと相談したんですね。
 すると、川島さんが「試合中はプレーが続いているから、とりあえず試合が終わってから考えよう」ってアドバイスをくれて、そのうえで、「ミスや失点を積み重ねて、俺(川島)はここまで強くなったんだよ」と励ましてくれたので、その言葉がすごく胸に刺さりましたね。
 それからは、ミスをしても次のプレーに集中することを意識して、試合後に反省をするようになりました。
アジアカップの試合でも、ミスをしたときは、試合が終わってから動画を見直して、こういうプレーをすればよかったなあとか、この場面は集中力が足りてなかったなとか反省をしていましたね。

――では、海外リーグで戦う中で、印象に残っている選手はいますか?

小久保 昨シーズンから13年ぶりにベンフィカに復帰したアルゼンチン代表のディ・マリア選手ですね。
 シュートが別格なんです。ディ・マリア選手は、シュートスピードはそこまで速くないんですが、最後の最後までキーパーを惑わす。右に蹴るよという素振り見せて、左に蹴ってきたり、キーパーの動きを見て蹴るのをワンテンポ遅らせてみたり。そうやってキーパーが踏み込みにくいようにして、質の良いシュートを打ってくるので、本当にすごいなって。
 だから、言い方は悪いかもしれませんが、ディ・マリア選手のシュートは気持ち悪いというか、いやらしいんですよね。自分がちょっとでもポションをミスしたら、上を通すループシュートを狙ってくるし、ちょっとでも構えるのが遅れたら、鋭くて速いシュートをスパンって打ってくる。すっげえ、うまいんです。

――そんな選手がチームにいたら、小久保選手がすごいスピードで成長するのも分かる気がします。

小久保玲央ブライアン(こくぼ・れお・ぶらいあん) 2001年1月23日生まれ、千葉県出身。193センチ、91キロ。ナイジェリア人の父と日本人の母との間に生まれ、小学生時代は柏エフォートFCでプレー。柏レイソルU-15、U18で才能を伸ばし、18年、柏レイソルトップチームへ。同年1月開催の「アルカス国際カップ」で大会最優秀GKに選出されたことで世界的に注目され、翌19年1月、ポルトガル1部の強豪SLベンフィカのU-23チームに加入することに。20年8月には、UEFAユースリーグ決勝でレアル・マドリードと対戦。2-3で敗れるも、大会準優勝に貢献した。同年10月、2部SLベンフィカBで初ベンチ入り。22年1月、Bでデビューを果たし、5月にトップチームで初ベンチ入り。日本代表としては、U-15代表候補に選ばれたのを皮切りに、各年代で選出。今年4月のAFC U23アジアカップでは、数々のビッグセーブでパリ五輪出場権、アジア制覇に貢献。7月11日、ベルギー1部のシント=トロイデンVVへの完全移籍を発表した。

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