ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」――今週から夏の新潟開催がスタート。開幕週には、国内で唯一の直線・芝1000mを舞台とした重賞、GIIIアイビスサマーダッシュ(以下、アイビスSD。7月28日)が行なわれます。大西直宏(以下…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――今週から夏の新潟開催がスタート。開幕週には、国内で唯一の直線・芝1000mを舞台とした重賞、GIIIアイビスサマーダッシュ(以下、アイビスSD。7月28日)が行なわれます。

大西直宏(以下、大西)アイビスSDは、現役時代にカルストンライトオで2回優勝した思い出深いレースです。また、手前味噌ながら、この千直コースが2001年に誕生して初めて行なわれたレースでも、実は僕が勝っているんです。そういったこともあって、千直レースにはとても思い入れがあります。

――最近流行りの『ウマ娘』のキャラクターに、カルストンライトオが登場したことも話題になっています。

大西 タイムリーな登場でしたね。『ウマ娘』のことは周囲からも聞いていて、僕も興味を持つようになりました。カルストンライトオについては、右後肢が白いという特徴もしっかり反映されているのがうれしいですね。余談ですが、今では自分のスマホの待ち受け画面もカルストンライトオのキャラクターにしています(笑)。

――そのカルストンライトですが、今でも千直のレコードホルダー(53秒7)です。

大西 カルストンライトオがレコードタイムを出した時、アイビスSDが行なわれたのは8週開催時の6週目。まさに馬場が荒れてきた開催終盤です。その時にマークしたレコードが現在も破られずに残っているのは、非常に価値があると思います。

 その点、今のアイビスSDは夏の開幕週での開催。時計が出やすい条件なので、いつレコードが塗り替えられてもおかしくありません。カルストンライトオの記録を破られるのは寂しいですが、新たなスピードスターの登場を期待している自分もいます。

 レースの特徴としては、過去に57kg以上の斤量を背負った馬が勝利したことがない、軽量の牝馬が活躍しやすい、といったところでしょうか。

――確か、以前お話をうかがった際にも、カルストンライトオでアイビスSDの3勝目を狙った時は、59kgの斤量を背負って「スピードに対応できなかった」とおっしゃっていました。

大西 そうです。斤量59kgを背負っていたことで、いつものテンの行きっぷりがなく、他馬にスピード負けしてハナに立つことができませんでした。斤量が重くなると、初速に大きな影響を与えるのは間違いありません。

――さて、今年は斤量面で特に有利とされる3歳牝馬を含め、3歳馬の出走がありません。一番軽い斤量が55kgで、最も重い斤量は59㎏となっています。

大西 僕は、2006年にもマリンフェスタという3歳牝馬に騎乗して2着に入った経験があります。1000万下(現2勝クラス)の身でありながら格上挑戦でも通用したように、(千直レースは)軽量で出走できる3歳牝馬にとっては圧倒的に有利な条件です。それだけに、今年の出走馬に3歳牝馬がいないのは意外でした。

 カルストンライトオのレコードが更新されるとしたら、3歳牝馬の出走時だと考えているので、今年はその可能性が低いかもしれませんね。

 今回は、実績上位のウイングレイテスト(牡7歳)が初めての千直で最重量の59㎏を背負います。おそらくこの馬が人気を集めると思いますが、僕の経験上、それだけの斤量を背負った場合、この条件をクリアするのは簡単なことではないと見ています。

 また、58kgを背負うジャスパークローネ(牡5歳)も同様です。同馬は斤量が重くなると出脚が鈍くなる傾向があり、勝ち負けに加わるのは容易なことではないでしょう。

 これらのことを考慮すると、斤量55kgで出走できる馬が有利になると思います。

──具体的に注目している馬はいますか。

大西 近走で千直にこだわってレースを使っているマイヨアポア(牝6歳)が気になります。

 同馬の母エバーローズは、千直で3戦3勝という成績を残しました。初めて千直を走った時に54秒0という速いタイムをマーク。その際には、レコードを更新できる素材かもしれないと思いました。


アイビスSDでの勝ち負けが期待されるマイヨアポア

 photo by Sankei Visual

 その娘であるマイヨアポアにも、この条件での高い適性を感じます。同馬が千直2戦目に記録した54秒7という走破タイムは、今回のメンバーのなかでは2番目に速い持ちタイム(1位はロードベイリーフの54秒6)。単純な時計比較でも上位候補と言えます。

 しかも、マイヨアポアが同タイムをマークした一戦では、ふた桁馬番の馬が上位を独占。そうした状況にあって、同馬は3枠5番という不利な条件を克服して突き抜けました。

 オープン入り後の2戦は結果が出ていませんが、2走前のリステッド競走・ルミエールオータムダッシュ(9着。10月29日/新潟・芝1000m)は極端な道悪馬場が影響したもの。前走のオープン特別・韋駄天S(6着。5月19日/新潟・芝1000m)はおよそ半年ぶりのレースで、12kg増とデビュー以来最高体重での出走。少し太目が残っていたんでしょうね。

 今回のレースに向けては、中間の調整過程も良好。本領発揮が期待できます。後方から差し込みを狙うタイプゆえ、枠順に左右されないのも強みです。

 ということで、アイビスSDの「ヒモ穴馬」には、マイヨアポアを推奨したいと思います。