富永啓生インタビューバスケットボール男子日本代表「史上最強チーム」の挑戦(2) 昨年のFIBAワールドカップで男子日本代表チームの躍進に貢献した富永啓生が、いよいよパリオリンピックのコートに立つ。 富永にとってオリンピックは2度目。3年前の…

富永啓生インタビュー
バスケットボール男子日本代表
「史上最強チーム」の挑戦(2)

 昨年のFIBAワールドカップで男子日本代表チームの躍進に貢献した富永啓生が、いよいよパリオリンピックのコートに立つ。

 富永にとってオリンピックは2度目。3年前の東京オリンピックでは3人制バスケットボールに出場している。東京大会では無観客のなかで戦った富永は、5人制でコートに立つ今回、満員の観客の前でどのようなパフォーマンスを披露するのか。

 日本が目標とする「ベスト8進出」のカギを握る天才シューターに、過去のオリンピックの記憶やパリへかける思いなどを語ってもらった。

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富永啓生の3Pシュートは日本代表に欠かせない

 photo by Hosono Shinji

── オリンピックと聞いて、思い浮かべる場面や映像はありますか?

「小さい頃に見ていたかと言われると、そんなには見ていなかったです。だけど、自分が前回の(東京)オリンピックの3人制で出た時の思い出はすごくありますね」

── 昔のオリンピックでバスケットボールは見ていましたか?

「あ、それはあります。アメリカとスペインの試合を見ました。いつだったかな......ロンドンかな(決勝でアメリカがスペインに勝って金メダル)」

── 印象的だったシーンは覚えていますか?

「あまり思い出せないんですけど、コービー(・ブライアント/SG/当時ロサンゼルス・レイカーズ)が出ていたのは覚えています」

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

── 少年時代のオリンピックヒーローは誰かいますか?

「そうですね。思い当たるのは、やっぱりコービー。オリンピックでの印象が一番強かったですね」

── オリンピックに出ている時のコービーはどうでしたか?

「NBAでプレーしている時と違うというか、アメリカ代表に集まってきたほかのスーパースターとコービーの組み合わせが面白かったです」

【東京オリンピックの無観客は寂しかった】

── 東京オリンピックでは3人制バスケットボールに出場し、チームは6位に終わりました。どんな場面が印象に残っていますか?

「無観客ではあったんですけど、そのなかで決勝トーナメントに行くことができた瞬間は、すごく覚えています。(予選ラウンド最終の)中国戦前までは厳しい状況でしたが、その試合で条件をクリアして決勝トーナメントに行けた瞬間はうれしかったですね」

── 富永選手は感情を表に出すタイプだと思いますが、東京オリンピックでも「吠えている」印象がありました。

「そうですね。やっぱり舞台が大きくなればなるほどモチベーションも上がってきますし、そういう気持ちを表に出すことも増えてくると思います」

── 無観客のなかでのプレーは、どのような感覚でしたか?

「もちろん、寂しさはありましたね」

── あれから3年が経ち、ネブラスカ大でも日本代表でも、富永選手が活躍すれば自然と会場は盛り上がります。パリオリンピックでも多くの観客が会場を埋め尽くすと思います。

「こういうトップレベルの大会で、多くの観客の前でプレーできるのは本当に楽しみなことです。観客と一体になって、それがブーイングなのか声援なのかはわからないですが、その雰囲気のなかでやるのはすごく楽しみですね」

── 昨年のワールドカップ以上の声援を期待しますか?

「そうですね。期待しています。ワールドカップで自分たちがもらった声援は、すごいものがありました。今回もまた、ああいった大勢の人たちの前でプレーができるのは楽しみです」

── パリオリンピックで日本は「ベスト8」を目標としています。それを達成するために、何が課題だと考えていますか?

「ワールドカップでは僕も含めて若い選手が多くて、経験値は間違いなく少なかったと思っています。でも、ワールドカップを経験したことによってレベルアップができたので、自分たちがこの1年でどれだけ成長できたかをオリンピックで見せられると思います」

【3Pシュートでチームを助けたい】

── 富永選手は大舞台でもあまり緊張をしないと聞きます。

「そうですね。試合前は少し緊張することもありますが、いざ試合が始まってしまえば、もう全然。緊張することはないです」

── 緊張した思い出は?

「思い当たるとすれば、東京オリンピックの3人制で、初戦が始まるまでは緊張しました。だけど、そのほかに緊張した記憶はあまりないですね」

── 昨年はワールドカップに出場し、その後はネブラスカ大でラストシーズンを戦いました。最終学年では、どのようなことを意識してプレーしていましたか?

「体づくりと3Pシュートの精度、あとはプレーメイキングなど、オリンピックに向けてどれだけレベルアップできるかを意識していました」

── パリではドイツ、フランス、ブラジルと、ワールドカップ以上に強豪ばかりとの対戦となります。対戦相手についての感想を聞かせてください。

「僕は強いチームとやるほうが燃えますので、すごく楽しみにしています。特にドイツはワールドカップで負けているので、そのリベンジもしたいです」

── 日本はどう戦えばリベンジできるでしょうか。

「『自分たちはできる』という気持ちをチーム全員で信じることが、まずは一番大事だと思います。自分たちのバスケットを40分間やり続けて僕たちの流れができれば、世界が相手でも勝つチャンスはあるんじゃないかと思っています」

── 富永選手はパリでどんなプレーを見せたいですか?

「僕はまだ若いので、エネルギーを出して、エネルギッシュなところでチームを勢いづけたいです。自分の武器である3Pシュートでチームを助けられたらいいなと思っています」

<了>

【profile】
富永啓生(とみなが・けいせい)
2001年2月1日生まれ、愛知県名古屋市出身。元日本代表センターの父・啓之氏の影響により幼少からバスケットボールをはじめ、桜丘高3年時のウインターカップでは得点王に輝く。高校卒業後はアメリカへと渡り、レンジャー・カレッジを経て2021-22シーズンよりNCAAディビジョン1のビッグ10カンファレンスに所属するネブラスカ大に編入。最終学年にはエースとしてチームをNCAAトーナメント出場に導く。2022年7月にA代表デビューを果たし、2023年のFIBAワールドカップでは得意の3Pシュートでパリ五輪出場権の獲得に貢献した。2024年7月、インディアナ・ペイサーズとエグジビット10契約を結んだ。ポジション=シューティングガード。身長188cm、体重81kg。