パリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU23アジアカップ決勝戦。日本の命運は、この男に託された。1-0で勝利をつかみかけた終了間際、ウズベキスタンに痛恨のPKを与えてしまった日本。PKキッカー、ウマラリ・ラクモナが蹴ったボールを、完璧なタイミン…

 パリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU23アジアカップ決勝戦。日本の命運は、この男に託された。1-0で勝利をつかみかけた終了間際、ウズベキスタンに痛恨のPKを与えてしまった日本。PKキッカー、ウマラリ・ラクモナが蹴ったボールを、完璧なタイミングで横っ飛びセーブすると、日本代表ゴールキーパー小久保玲央ブライアン(23)は、天空に向かって咆哮した――。
 日本にパリ五輪の出場権、アジア王者の称号をもたらした、U-23日本代表。その栄光のメンバーの中でも、全試合を通じての数々のビッグセーブ、そして決勝戦での劇的PKストップで、一躍、国民的ヒーローになった小久保玲央ブライアン。先日、所属するポルトガル1部ベンフィカからベルギー一部シント=トロイデンへの移籍を発表したパリ五輪日本代表の守護神に、サッカーとの出会いから、知られざる苦闘、ちょっと意外なプライベートや素顔、そしてパリ五輪への熱い思いまで、独占インタビュー。
「みんなを守りたい」と語るS・G・G・K(スーパー・グレート・ゴール・キーパー=『キャプテン翼』©高橋陽一)の魂の叫びを聞け!

 「試合に出たいという気持ちがどんどん…」

――パリ五輪代表に選ばれました。オリンピックに対する思いを聞かせてください。

小久保 2年前にU-23代表チームが結成された当時は、自分がオリンピックの舞台に立つという実感はありませんでした。でも、アジアカップでチームのみんながすごくいいプレーをして、パリ五輪の切符をつかむことができました。パリ五輪が近づいてきて、ここまで来たらレギュラーメンバーに選ばれたい、試合に出たいという気持ちがどんどん強くなっています。

――オリンピック日本代表とアメリカ代表との親善試合に参戦した、A代表でもある鈴木彩艶選手は今回、選出されませんでした。ライバルは、FC東京の野澤大志ブランドン選手ですね。以前、「大志はすごくいいヤツ、練習の雰囲気もいい」と話されていました。

今回の取材はZOOMで行われた。ステキな笑顔で取材に応じてくれた小久保選手。ありがとうございます!

「特にやることはないですね(笑)」

小久保 自分はライバルとか、まったく気にしていません。プライベートではみんなで仲良くごはんにも行っているし(笑)。
 鈴木彩艶くんも野澤大志ブランドンくんも超えなければいけない存在だとは思っていますが、他人との競争というよりは、自分をより高めて、良いパフォーマンスを見せ続けられるかの勝負だと思っています。あとは、大岩剛監督が試合で誰を使うかだけですね。

――小久保選手は、最年長世代の一人ということもあって、チームのムードメーカーだそうですね。自腹でゲームのアプリや音楽をダウンロードして、招集されたばかりの選手を自分の部屋に呼んで大勢でゲームをするなど、打ち解けやすい雰囲気を作られたとか。
 そのときにやっていた恒例のゲームは、「人狼ゲーム」だったという話も聞きますが、最近、チームを盛り上げるために、何かやっていることはありますか?
 
小久保 最初は自分の部屋にみんなを呼んで、UNO(ウノ)とか、ゲームをして盛り上げていましたが、最近は、チーム全体が仲良しなので、特にやることはないですね(笑)。
 エレベーターに乗った少しの時間でさえ、チームの課題などを話し合う雰囲気ができているんです。チームとして完成されてきたので、もう自分が世話を焼く必要はありません(笑)。

――では、そんなU-23日本代表のメンバーについて聞かせてください。もし相手チームにいて、攻めてきたらイヤだな、やっかいだなと思う選手はいますか? 逆に、一緒に守っていて頼りになるメンバーは?

小久保 選手はみんな、クオリティが高いですね。シュートがうまい選手もたくさんいますが、中でも細谷真大くんは、シュートを撃つときのタイミングの外し方が抜群にうまいなと思います。
 ヨーロッパの選手と比べても、細谷くんのほうがうまいので、敵側からしたら脅威だと思います。守備は、今のメンバーなら誰と組んでも安心できます。

――では、大岩剛監督は、小久保選手にとって、どんな監督ですか?

小久保玲央ブライアン(こくぼ・れお・ぶらいあん) 2001年1月23日生まれ、千葉県出身。193センチ、91キロ。ナイジェリア人の父と日本人の母との間に生まれ、小学生時代は柏エフォートFCでプレー。柏レイソルU-15、U18で才能を伸ばし、18年、柏レイソルトップチームへ。同年1月開催の「アルカス国際カップ」で大会最優秀GKに選出されたことで世界的に注目され、翌19年1月、ポルトガル1部の強豪SLベンフィカのU-23チームに加入することに。20年8月には、UEFAユースリーグ決勝でレアル・マドリードと対戦。2-3で敗れるも、大会準優勝に貢献した。同年10月、2部SLベンフィカBで初ベンチ入り。22年1月、Bでデビューを果たし、5月にトップチームで初ベンチ入り。日本代表としては、U-15代表候補に選ばれたのを皮切りに、各年代で選出。今年4月のAFC U23アジアカップでは、数々のビッグセーブでパリ五輪出場権、アジア制覇に貢献。7月11日、ベルギー1部のシント=トロイデンVVへの完全移籍を発表した。

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