経験豊富と言える選手はリーチ・マイケルくらい。世代交代の過渡期にある日本は今後、どのように歩みを進めるのか(C)産経新聞社 ラグビー日本代表(以下ジャパン)は7月21日、イタリア代表とサマーシリーズの最終戦となるテストマッチを行い、…

経験豊富と言える選手はリーチ・マイケルくらい。世代交代の過渡期にある日本は今後、どのように歩みを進めるのか(C)産経新聞社

 ラグビー日本代表(以下ジャパン)は7月21日、イタリア代表とサマーシリーズの最終戦となるテストマッチを行い、14-42で敗れた。イタリア代表との通算対戦成績はジャパンの2勝8敗。第二次エディー体制下でのテストマッチ初勝利は秋シーズンのパスフィックネーションズカップまでお預けとなった。

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 一言で言うと、第一次エディー体制以前の「弱いジャパン」に戻ってしまったような一戦だった。

 サマーシリーズを通じて、試合開始早々はテンポよく攻めて流れを引き込んでいたのだが、この試合は最初から劣勢で、その流れのままポンポンと点を取られ一気に点差を広げられた。イングランド、ジョージアは互角以上に渡り合い、強化試合でマオリ・オールブラックスを圧倒したスクラムも、強いプレッシャーを受けて再三反則を取られた。ラインアウトに至っては目を覆わんばかりの惨状。2番目の選手に合わせようとすれば、スチールを喰らい、それではとロングスローを放れば、今度はサインミスで誰も選手が反応していない。こんなシーンばかりが繰り返され、まともにボールを獲得できたラインアウトの方が稀だったのだから試合展開を有利に導けるはずもない。

 前半終了間際に、ようやくディラン・ライリーがトライを奪ったが、組織的な攻撃が機能したのはこれ1回だけだった。後半開始早々のチームとしてもライリーとしても2本目のトライは、相手のパスコースを読み切ったライリーの「個人技」で奪ったもの。そしてこのトライ以降、ジャパンの攻撃は見事に封じ込められてしまった。

 イタリアに付け入る隙がなかったわけではない。反則の数は日本を大幅に上回っていたし、度重なる反則と危険なタックルによりイエローカードが3枚も出された。ジャパンは30分近くの時間を一人多い状態で戦ったのだが、そのアドバンテージを全く活かせなかった。むしろ数的不利にあるイタリアの方が余裕を持って構え、心理的に余裕がないジャパンのミスを誘い、そのミスを着実に得点に繋げていった。

 後半ロスタイムに入って文字通りジャパンにトドメを刺したイタリアのスクラムからのトライが象徴的だった。シンビンで一人少ないイタリアをジャパンが必死に押し込むが、その力をうまくそらしたイタリアが、押しに専念してディフェンスがお留守になったスクラムサイドをついて、悠々とインゴールを陥れたのだ。

 全ての場面で常に必死だったジャパンと、相手のミスを待つ余裕のあったイタリア。この余裕は、今年のシックスネーションズでスコットランド、ウエールズを撃破し、フランスと引き分けた実績からくる自信がもたらしたものだろう。

 以前のイタリアはラテン気質そのままに、ツボにハマればとてつもない強さを発揮するが、反面ミスで自滅することが多いチームだった。昨年のW杯後からチームを指揮するようになったアルゼンチン人のゴンサロ・ケサダHCの下、チームは着実に強化が進められている。7月15日時点の世界ランキングは8位(ジャパンは同14位)と「強豪の一角」と目されるに相応しい位置にいることを鑑みても、シックスネーションズの王座獲得、南半球の強豪国撃破もそう遠い日のことではないかもしれない。

 このイタリアの躍進はシックスネーションズに参加し、毎年強豪国との対戦を繰り返してきたことがもたらしたものであると言って良い。ジャパンも南半球のザ・ラグビーチャンピオンシップか、シックネーションズの枠組みに入ることを本格的に検討すべき時期に来ているのではないか。

 イタリアの躍進もさることながら、ザ・ラグビーチャンピオンシップに参加してからのアルゼンチンもW杯で常に4強以上を狙えるチームに成長した。試合後のインタビューでエディーHCは「経験や知識を蓄積することが大切」と語っていたが、経験や知識の蓄積に最適なのは海外の格上のチームたちとの対戦を数多くこなすことだ。イタリア戦で明らかになった技術不足を解決するための猛練習とともに、毎年、世界のレベルを実感できる舞台を用意することがジャパン躍進のカギとなるだろう。

[文:江良与一]

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