北海道コンサドーレ札幌戦で勝負の4枚替えとシステムチェンジで、4ー3ー3のアンカーとして投入された浦和レッズの堀内陽太は「4人を一気に交代するということで、やっぱりチームとしてもうまく行ってない状況をひっくり返して、逆転まで持っていくペア…

 北海道コンサドーレ札幌戦で勝負の4枚替えとシステムチェンジで、4ー3ー3のアンカーとして投入された浦和レッズの堀内陽太は「4人を一気に交代するということで、やっぱりチームとしてもうまく行ってない状況をひっくり返して、逆転まで持っていくペア=マティアス・ヘグモ監督の意図が伝わりましたし、そこでフレッシュな僕たちがここで試合を変えないといけないと思っていた」と振り返る。

 後半スタートから投入されていたFWチアゴ・サンタナをターゲットマンとして、右の二田、左の本間がどんどん前向きに勝負をかけて、二列目の小泉とキャプテンの伊藤敦樹が多彩に絡んでいく。彼らの背後を運動量の豊富な堀内が幅広くカバーしながら、起点として振る舞う。終盤に差し掛かる時間帯で、0−4という状況だからこそ出せた思い切りの良さかもしれないが、ここから先につながるポジティブな要素が多く見られたことも確かだ。

 中盤の底からアタッカー陣を支えた堀内は左右のウイングを生かすイメージについて堀内は、「前に前にという感じで。(二田)理央くんなんかは足が速いですし、(本間)至恩くんは狭いところでボール持って、推進力で運べるというのは強みだなと感じてましたし、二人がやりやすいような流れに持って行くというのは意識していました」と振り返る。

 さらに堀内は、交代選手たちのエネルギッシュなプレーを後押しするスタジアムの雰囲気についても「スタジアム全体で勝ちに行くぞという声援はすごく後押しになりますし、自分の体も自然と動くというか。心強さを感じましや」と語る。常に熱い浦和のサポーターではあるが、0−4から投入された4人の直向きなプレー、それに触発されたサンタナやスタメン選手たちの奮起が、そうした一体感を生んだことも間違いないだろう。

■「皆さんに勝利を届けるのが自分たちの使命で、責任」

 後半32分に小泉のCKをサンタナが合わせる形で1点を返すと、小泉のパスを起点にサンタナが絡み、最後は二田が右足で流し込んで2点目。さらにセットプレーの流れで前に残ったDF井上黎生人が岡村大八のファウルでPKを獲得すると、キャプテンの伊藤が決めて、土壇場で1点差とした。アディショナルタイムでも同点ゴールに迫ったが、石原広教のクロスにドンピシャで合わせたサンタナのヘッドがGK菅野孝憲にセーブされると、試合終了の笛が吹かれた。

 最後まで諦めない応援と試合後のブーイングをピッチ上で体感した堀内は「この悪天候の中で、後半途中まで0−4という厳しいスコアになった中でも、ああやってスタジアム全体で支えてくれるというのは本当に感謝しないといけないし、幸せないことだと思うので。そういった皆さんに勝利を届けるのが自分たちの使命で、責任だと思う」と前向きに語った。

 秋春制に移行したACLは昨年のうちに敗退、天皇杯の参加資格がなかった浦和は1年目のへグモ監督にも、リーグ優勝に向けた戦いが求められた。序盤戦は4ー3ー3をベースに、開幕前から想定されたメンバーが固定的に起用されたが、苦戦を強いられる中で怪我人も続出。

 試行錯誤を繰り返しながら、最近では4ー2ー3ー1にチェンジしたり、4ー3ー3の鍵と言われたウイングの仕事も変化してきた。そしてキャプテンだった酒井宏樹岩尾憲アレクサンダー・ショルツという心身両面でチームを支えてきた3人が移籍。規格外のオプションとして期待されたオラ・ソルバッケンもレンタル期間の終了で、ローマに帰った。

■遠のくタイトルとACL

 チームは伊藤が新たにキャプテンを担う形でリスタートしたが、ここに来て湘南ベルマーレ、京都サンガF.C.、そして札幌と下位3チームを相手に勝ち点1で終わり、現在10位。首位との勝ち点差は16で、ACL圏内である3位の鹿島アントラーズにも勝ち点11離されている状況だ。そして数字上はまだ何も決まっていないとはいえ、タイトルやACLの出場権をひたすら目指すというのは厳しくなっている。

 へグモ監督はJリーグの結果と同時に、来年の参加が決まっている新フォーマットのクラブW杯に向けたチーム強化も担っている。ただ、タイトルが厳しくなろうと、基本的には勝利を目指しながら成長を図っていくべきだ。そうした基準に照らし合わせても、このブレイク期間に今一度、システムを含めた戦い方を整理して、へグモ監督が目指すスタイルを共有していくことが大事になってくるだろう。

 もちろん札幌戦でアピールした4人など、フレッシュな選手たちの取り込みも大事な要素になってくる。ここまで色々な試行錯誤を経験してきたからこそ、4ー3ー3に立ち返るというプランも有効かもしれない。試合には対戦相手があるものだが、今選手たちが躍動できる戦い方が何なのか。図らずも、そのヒントを与えてくれたような0−4からの逆襲劇だった。

(取材・文/河治良幸)

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