0-85。2016アジアチャンピオンシップ開幕戦(4月30日/ニッパツ三ツ沢競技場)に登場した韓国代表は日本代表に完膚なきまでに打ちのめされた。 試合終了後、韓国選手たちは茫然と立ち尽くした。 この日、LOで先発した延権祐(ヨン・クォンヌ…

 0-85。2016アジアチャンピオンシップ開幕戦(4月30日/ニッパツ三ツ沢競技場)に登場した韓国代表は日本代表に完膚なきまでに打ちのめされた。
 試合終了後、韓国選手たちは茫然と立ち尽くした。
 この日、LOで先発した延権祐(ヨン・クォンヌ/横河武蔵野)は「これが今の韓国の実力です」と完敗を認めた。
 今季、ニュージーランド出身の監督として初めて指揮したジョン・ウォルターズも「最初からミスをしてリズムに乗ることができなかった。もっとボールに固執して展開したかったがうまくいかなった」と自滅のチームを振り返った。
 試合前に主将のPR申東源(シン・ドンウォン/宗像サニックス)は「ディフェンスだけでなく最初の20分間、攻めたい」と話したが、試合はその20分で決まった。

 開始1分、日本が韓国のキックオフを蹴り返す。NO8韓建圭(ハン・コンギュ)が強風も影響したか、ハンブルした。日本のスクラムで再開すると、日本はSH内田啓介からパスを受けたSO山中亮平がCTB中村亮土へ。中村は後ろに走り込んだ山中へループパス、さらにダミーで切り込んだCTB石橋拓也の動きも効いて韓国ディフェンス外側にスペースができた。山中-FB野口竜司-最後はWTB山下一へとつなぎ、インゴールへボールを運んだ(5-0)。4分後、韓国陣内の韓国ボールスクラム。日本のプレッシャーを受けゴール前でラックに。日本もNO8テビタ・タタフがターンオーバーし右へ展開すると、山下が2本目のトライを奪った(12-0)。
 8分、韓国にもチャンスが訪れた。日本陣10メートルの内側で反則を得ると、22メートルライン付近のラインアウトへ。しかしノットストレートで機会を逸した。
 14分、山中が韓国陣でSO呉潤衡(オ・ユンヒョン)のキックをチャージする。こぼれたボールを韓国はいったん確保したが、ラックから韓国CTB諸葛彬(チェガル・ビン/NTTコミュニケーションズ)のパスを日本のLO宇佐美和彦が奪う。内田が左へ展開すると、WTB児玉健太郎がトライラインを越えた(19-0)。3分後、韓国はまたも日本陣内で反則から左ラインアウトを得るも、ジャンパーと合わずに日本が奪った。
 20分、日本が韓国陣22メートル内での右ラインアウトとなる。モールを押し込みHO森太志がライン際を快走、ラックへ。ラック周辺で勝負しFWがボールを運ぶ。最後は山中がポスト下へトライを決めた(26-0)。

 ここで韓国に不運な出来事が起きた。諸葛が山中にタックルへ行った際に山中の左ひじが右目上にあたり、偶然のバッティングで出血し、そのままグラウンドを後にした。
 その後も日本の攻撃は続き、26分、FWの突破から山下の3本目のトライが生まれた。29分は児玉、41分にはゴール前スクラムから内田がトライし、7トライ47点で前半を終えた。

 会場にはこの試合、右ひざに水が溜まり日本で治療しているFL劉永男(ユ・ヨンナム/パナソニック)が観戦で訪れていた。3年ぶりに復帰した韓国代表の前半を見て「みんな最初に点を取られてパニックになっている。FWは朴淳彩(パク・スンチェ/NTTドコモ)や延がいるので修正できるが、BKは諸葛がいないので心配」。
 劉の言葉通り、韓国は修正ができず後半も日本に6トライを献上し、計13トライ、日本戦史上最多の85点差で敗れ去った。

 後半、攻撃で韓国はWTB張成民(チャン・ソンミン)の自陣からのランを起点に19分から22分にかけて28次攻撃を仕掛けたが、最後は張のノックオンでチャンスを潰した。
 また、あえてPGを狙わずにラインアウトやスクラムを選択した理由を主将の申は「セットプレーでボールをキープしトライを取る気持ちが強かった」と振り返った。

 パニックに陥ってからの修正をできない韓国。在日韓国人選手として大阪朝鮮高出身者では初めて韓国代表入りし、後半にピッチに立ったHO鄭貴弘(チョン・キホン/2015年度まで釜石)は、「トップリーグのチームではほぼ15人全員が修正できる能力がある。半分の数でもチームとして修正できる。でも韓国は3人くらいしかいない」と語った。

 ベテランとなった延や劉は日本での経験を若手に教えてきた。「若い選手は『分かりました』と言うが、実際は身についていなかった。試合ではできなかった」(延)。

 唯一の救いはウォルターズ新監督がまだ選手を教えて3週間ほどしか経っていないことか。「基本のスキルを丁寧に教えてくれる」と延。監督も「準備期間のほとんどをコンディションの調整にあててきた。香港戦(5月14日)までにストラクチャーやシステムの部分を強化したい」と話した。

 監督が春季リーグ戦を見て初代表に招集した高麗大1年のLOシン・ダヒョンは後半15分に登場するとブレイクダウンで体を張った。張も突破ではその高いスキルを披露した。目標は2019年ワールドカップ出場だ。焦らずにじっくりと鍛えることを韓国ラグビー界が許容することも未来のために必要となる。(文:見明亨徳)