メジャーリーグのオールスターゲーム(以下、ASG)当日、たまたまアメリカにいたとしよう。せっかくだから、生で試合を見てみたい。そんな願いは実現できるものだろうか。 つまりは、ASGほどの大きなイベントになると、簡単にチケットやホテルの手配…

 メジャーリーグのオールスターゲーム(以下、ASG)当日、たまたまアメリカにいたとしよう。せっかくだから、生で試合を見てみたい。そんな願いは実現できるものだろうか。

 つまりは、ASGほどの大きなイベントになると、簡単にチケットやホテルの手配ができるものなのか、という疑問である。

 結論から言えば、答えは「できる」だ。

 しかも、特別なコネが必要になるとか、膨大な時間と労力を費やすようなこともない。年に一度の特別な試合とはいえ、案外ラクに観戦できるものだな、というのが、実際にやってみた感想である。



オールスターゲームが開催されたグローブライフ・フィールド

 まずはチケットの手配だが、今は『Ticket Master』や『StubHub』といったチケット再販サイトが充実しているため、ASGであろうと(価格はともかく、手続きのうえでは)手軽にチケットの購入が可能だ。

 試合当日、すなわち現地時間7月16日の朝、サイトで検索してみたところ、いちばん安い価格帯の席だと、140~150ドル(2万3000円前後)あたりでいくつものチケットが表示された。

 それらの座席位置は、一塁側と三塁側、それぞれの最も外野寄り(ポール脇)で最上階のセクション。いわば天井桟敷といったところだ。

 確かにマウンドやホームベースからはかなり遠いが、いわゆる見切れ席ではなく、フィールド全体を見渡すことができる。できるだけ安く試合を見たい、本場の雰囲気を味わいたい、ということであれば、この席でも十分だろう。

 ただし、140~150ドルというのはチケット代のみの値段なので、ここに税金や手数料などが上乗せされると、実際に払う金額は200ドル(約3万1000円)を超えることになる。

 それでもメジャーリーグのASGという特別感からイメージするほどには高額ではないというのが、率直な印象だ。1ドル=80円とは言わないまでも、せめて100円くらいだったら、とは考えてしまうのだが。

 ホテルもまた、試合当日の朝、予約サイトでテキサス州アーリントン1泊を検索すると、まだ空室のあるホテルが、しかも、それほど高くない値段で数多く表示された。

 そこから、試合会場であるグローブライフ・フィールドの半径3kmくらいの範囲に絞ると、1泊200~500ドル(約3~8万円)の高いホテルが目立つようにはなったが、なかには50~70ドル(9000円前後)ほどのホテルもいくつか見つかった。

 安いホテルは概してクチコミの評価が低いのは気になるが、アメリカのモーテルは最低限の設備が揃っていて、多くを期待しなければ、それほどがっかりすることもない。試合後のことも考えて、できるだけスタジアム近くの安いホテルを選んで予約することにした。

 試合中に座る場所と、試合後に寝る場所を確保できたら、あとはスタジアムに行くだけだ。

 グローブライフ・フィールドに足を運んでみると、その壁面には、フアン・ソト(ニューヨーク・ヤンキース)、エリー・デラクルス(シンシナティ・レッズ)らとともに、大谷翔平の雄姿が。

 実際の試合でも、スタンドから最も大きな歓声を受けていたのは、地元テキサス・レンジャーズの選手たちだったのは確かだが、それに次ぐ歓声を受けていたなかのひとりが、大谷だったことは間違いない。



スタジアム外のイベント会場にあったグッズ売り場

 試合前にスタジアム内を散策していた時には、日本人と思しき人でなくとも、大谷のユニフォームやTシャツを着ているファンを多く見かけた。

 ならば自分も格好から入ってみるかと、ASGグッズを売っているショップに行ってみたのだが......。

「OHTANI 17」と入ったナショナルリーグのユニフォームは、205~225ドル(3万3000円前後。なぜかスタジアム内のショップと、スタジアム外のイベント会場にあるショップでは値段が違った)。ASGのロゴが描かれたTシャツは、デザインによって40~50ドル(7000円前後)。いろんなものがとにかく高い。

 ステッカーやピンバッチですら10ドル前後(約1500円)はするのだから、なかなかの値段である。

 高いのは、記念グッズだけではない。

 野球観戦につきもののビールも、種類によって値段は違うが、概ね15~18ドルほど(2500円前後)。ドラフトビールはASGのロゴ入りカップに注いでくれるため、空いたカップを持ち帰れば観戦記念にはなるのだが、値段を考えると悩ましいところである。



漬けマグロ丼がおよそ3500円。ビール一杯2000円超え!

 空腹を満たそうにも、ハンバーガーやホットドッグでさえも12~15ドル(2000円前後)くらいはするのだから、あれもこれもと手は出せない。

 このスタジアムにはアジアンメニューもあり、焼きそばを食べている人をよく見かけたが、それを提供している店が推していた「POKE BOWL(日本語にするなら、漬けマグロ丼といったところか)」は21.99ドル(約3500円)! 日本の感覚で言えば、"スタグル"のレベルを超える値段だ。

 ただし、これらは決してASG価格ではない。普段の試合でも同じ値段で売られているのだから、歴史的円安だけの問題ではなく、アメリカではかなりインフレが進んでいることを実感する。

 一昨年、カタールで行なわれたサッカーのワールドカップの際に、500mlの缶ビールが約1900円(50リアル)で売られていることが話題になったが、アメリカではもっと高いビールが日常的に飲まれているというわけだ。

 結果的に、スタジアム内では財布のひもを固く締めて過ごすことにはなかったが、試合自体は大谷のASG初ホームランあり、今永昇太の初出場にして無失点の好投ありと、十分に楽しむことができた。

 200ドルの価値があったかどうかは、人それぞれの感覚によって答えは異なるのだろうが、個人的に言わせてもらえば、来年以降のASG当日にもたまたまアメリカにいることがあるのなら、また見に行ってもいいなと思う。