広尾晃のBaseball Diversity 今年8月7日~18日に、北海道栗山町で「LIGA Summer Camp 2024 in 北海道」が開催されることはすでにこのコラムでも紹介したが、このほど、それに先立って7月に「コンセプトミ…

広尾晃のBaseball Diversity

今年8月7日~18日に、北海道栗山町で「LIGA Summer Camp 2024 in 北海道」が開催されることはすでにこのコラムでも紹介したが、このほど、それに先立って7月に「コンセプトミーティング」が東京都内で行われた。

高校3年の野球部員が対象

このサマーキャンプは単に「夏休みに高校3年生が集まって野球をする」というイベントではない。高校野球生活の最後に、楽しい時間を過ごすとともに、今後の競技生活や人生にとっても、有意義な体験になることを目指しているのだ。

主催者の一般社団法人Japan Baseball Innovationの阪長友仁代表は、新潟明訓高校時代に夏の甲子園で本塁打を打ち、立教大学野球部では主将を務めた。

卒業後は一般企業勤務を経てJICA(青年海外協力隊)で、中南米諸国などへの野球普及事業に従事。ドミニカ共和国の少年野球の子供の未来を重視する育成法に出会い、この考え方を日本に普及することを決意。帰国後は、少年硬式野球チーム堺ビッグボーイズの指導者となったが、同時に、高校野球のリーグ戦である「LIGA Agresiva」の普及に努め、今年度は34都道府県182校が参加するに至った。

阪長友仁氏

「LIGA Summer Camp 2024 in 北海道」は、この「LIGA Agresiva」の考え方の延長線上にあるといえる。

対象は、夏の甲子園を目指す都道府県選手権大会を終えた高校3年生。彼らが8月に北海道栗山町に集結し、リーグ戦を戦う。期間中には農業体験、酪農体験が予定されている。また、最終日にはエスコンフィールドHOKKAIDOでの試合も予定されている。

個人参加で費用も選手が負担する。二十数万円と高価だから、参加できる選手は限られるが、高校野球の新たな展開として、大いに注目される。

元プロの指導者も参加

「コンセプトミーティング」の冒頭、阪長代表は参加者が22都道府県に及ぶことを発表した。

参加者は4チームに分かれてリーグ戦を戦うが、各チームのオリジナルのユニフォームを制作する。試合は木製バットを使用する。

さらにLiga Agresivaと同様、日本スポーツマンシップ協会の中村聡宏代表(立教大学准教授)のスポーツマンシップセミナーも開催される。

試合最終日の8月17日にはエスコンフィールドHOKKAIDOでの試合も予定されている。

エスコンフィールドHOKKAIDO

またこの「LIGA Summer Camp 2024 in 北海道」には、ロッテでクローザーとして活躍した荻野忠寛さんと、オリックス、日本ハム、ヤクルトで名内野手として活躍した大引啓次さんが、アドバイザーとして参加する。一流の元プロ野球選手の教えを直接受けることができるのも大きな魅力だろう。

このミーティングには、荻野忠寛さんも出席した。

荻野さんは

「このサマーキャンプ、僕自身も非常に楽しみにしていますし、少しでもその選手の将来につながるような手助けができたらと思っています」

と語った。

またNPO法人北海道野球協議会を通じて、大学野球とも連携。一球速報や、LIVE配信なども予定している。

荻野忠寛さん

選手の立ち位置

阪長代表は、今回のイベントにエントリーする選手の立ち位置として

1.将来的にプロ野球選手を目指し、甲子園出場を目指し、エース、レギュラーとして活躍している。

2.大学でのプレーを希望。甲子園には届かないかもしれないが、私学、公立でレギュラーとしてプレーしている。

3.部員数の多い高校で出場機会が得られていない。またはチームの人数が少なく公式戦の経験も少ない。

4.海外の高校に通う選手。現在野球部に所属していない選手。野球部のない高校に通っている選手。

の4つを想定、それぞれの選手に出場機会と、野球を心底楽しむ経験を与えるとしている。

参加を決めた動機

参加を決めた選手たちはその動機を以下のように語る。

「高校卒業後も野球を続けたいと考えていて、引退すると実戦練習の機会や試合機会も薄れてしまうと思ったから。全国の人と対戦してみて、自分のボールがどれだけ通用するかワクワクしたから。全国の強打者と真剣勝負したいです!」

「将来、プロ野球選手を目指していて、夢に近づくためのチャンスだと思い応募しました。

小さいころから野球をしていて、持ち味である足の速さや小柄でも飛ばせるんだなという力強さを最大限発揮したいです。50m走は6秒2です。誰にも負けません」

「私は県内で行われたリーガに2度参加しました。その際、多くのことを学びました。技術面では弘前学院聖愛高校さんの外野手とコミュニケーションを取り、どんな意図があって練習に取り組んでいるのか質問しました。そこで野球に対する価値観が拡がり、自分でも取り組むようになりました。(中略)野球を今『愉しむ』ことができていると感じています。また、参加できた際にはスポーツマンシップももっと学び、母校に持って帰りたいです」

「大学野球、社会人野球を目指しています。

そこで、全国の同学年の選手と一緒にやることで、自分の長所、短所を見つけてレベルアップできるのではと思ったため。

また、いろんな指導方法がある中で、試合後の相手チームも一緒に選手間で話し合うと言うことも初めてで興味を持ちました。

初めていく北海道で、野球の技術的にも人間的にもレベルアップしたいと思っています。

野球と真剣に向き合う同級生が集まるこの機会に、全国に友達を作りたいです」

「LIGA Agresiva」の試合

ボランティアが大きな戦力に

またこの「LIGA Summer Camp 2024 in 北海道」には、大学生のボランティアが多数参加している。

運営面ではコアメンバーとして、弘前学院大学2年生2名と、慶應義塾大学1年生2名が、各チームをコーディネートする。彼らはアドバイザーの荻野忠寛、大引啓次両氏のサポート役でもある。

また、他のボランティアは、試合や選手の活動をYoutubeやSNSなどで情報発信するなどのサポートも行う。

このコンセプトミーティングの司会進行も大学生ボランティアの立教大学の節丸真愛さんが担当した。

こうしたボランティアにとってもまたとない「成長の機会」になるだろう。

立教大学の節丸真愛さん

自身の輝ける場所を見つけられるように

阪長氏は今回のイベントのコンセプトを

「野球をプレーする選手が、自身の輝ける場所を見つけられるように」

だと語った。そして

「なぜ、こんなに試合数が違うのか?なぜ3年間野球部に所属して1試合も出場できない選手がいるのか?なぜ勝ち残る選手だけが試合を続けるのか?

負けたとしても同じ学年の選手が試合を続けている間は、プレーした方が良いのではないか?

むしろ経験値でいうと“した方が良い”のではないか」

と疑問を投げかける。

現在の夏の甲子園のシステムでは、50%のチームが1試合、25%が2試合、12.5%が3試合で姿を消し、約99%の高校生にとって、8月に実戦の場がない。

「彼らがプレーできる場を用意したい」と強調する。

そして

「一人一人の選手に輝ける機会を」

「プロ・社会人・大学でのプレーを目指している選手にとって、さらなるアピールの場に」

と語った。

FINAL DAYの説明をする阪長氏

プロ注目の選手も参加

「LIGA Summer Camp 2024 in 北海道」の参加募集は、夏の甲子園の予選に当たる各都道府県の選手権大会の最中に行われた。

当然ながら、応募した選手の中には、地方大会を勝ち進んで甲子園に出場する選手も出てくる。その場合は、キャンセルが可能になっている。

それもあって、甲子園に出場する可能性のある選手も参加を希望している。

その一人だった北星学園大学附属高校の石田充冴投手は191㎝の長身で、プロも注目する有望株だったが、学校は残念ながら南北海道大会で敗退した。

石田投手は「高卒でNPBを目指す」として、「LIGA Summer Camp 2024 in 北海道」への参加を発表した。

石田充冴選手の参加動機

このような機会を作ってくださり感謝しています。僕は身長が191㎝あり投手をしています。

2年春137㎞/h、秋140㎞/h、3年春145㎞/h、大会の前週には149㎞/hと上がってきたので、甲子園出場とともに個人的には150㎞/hを狙っていました。

しかし最後の夏の大会が、試合3日前にアクシデントがあり必死で治療しましたが間に合わず不本意に終わりました。

夏の大会が終わった翌日からトレーニングを開始しましたが、力を発揮できなかったこと、取り返す場がもうないと思うと、悔しさと辛さがありました。

大会の結果は不本意でしたが、僕の目標は高卒でNPBです。サマーキャンプの記事を見て、ここまでやってきた成果と、次へのステップで参加してみたいと思いました。

また、同学年の選手と原点である野球を楽しみ、故郷の北海道エスコンフィールドで150㎞/h出します。

セールスポイントは、長身からのストレートとスプリットとチェンジアップです。その他、昨年は5番センターで出場し、円山でホームランも打ちました。今年も飛ばないバットでしたがセンターにホームランを打っています。肩と長打力も自信があります。公式戦は負けてしまいましたが、高校3年の夏に大きな目標ができました。

ありがとうございました。