今季序盤から首位・町田ゼルビアを追走し、2位のポジションをキープし続けてきた鹿島アントラーズ。J1折り返しの19節時点では町田と勝ち点2差まで肉薄しており、「後半戦は一気にトップに立つ」という強い意気込みをチーム全体が見せていた。  とこ…

 今季序盤から首位・町田ゼルビアを追走し、2位のポジションをキープし続けてきた鹿島アントラーズ。J1折り返しの19節時点では町田と勝ち点2差まで肉薄しており、「後半戦は一気にトップに立つ」という強い意気込みをチーム全体が見せていた。

 ところが、直後のガンバ大阪ヴィッセル神戸との上位対決に勝ち切れず、彼らは足踏み状態を強いられた。そのタイミングで主軸ボランチ・佐野海舟のドイツ・ブンデスリーガ1部・マインツ移籍が決定。極めて重要な戦力が抜ける形になってしまったのだ。

「海舟と知念(慶)の2人の関係性で言うと、守備の貢献度が高くて、そこにチームが助けられている。特に前線の選手は『彼らのボールを奪う能力に助けてもらっている』という気持ちは多くあると思います」

 佐野の穴を埋めるべく先発ボランチに抜擢されたキャプテン・柴崎岳はしみじみと語っていたが、いかにして守備強度を保ちつつ、柴崎の攻撃センスを鹿島に組み込むのか…。そこが新たな課題と位置づけられた。

■「非常にアンラッキーな形」

 一発目となった7月6日の北海道コンサドーレ札幌戦は、最下位に沈む相手のスキを確実に突いて2-0で勝利。弾みをつけて14日の横浜F・マリノス戦を迎えることになった。

 マリノスはまさかのリーグ4連敗中。だが、スイス1部・セルヴェットに半年間レンタルで赴いていた西村拓真が今節から復帰。選手層が厚くなった。さらにキャプテン・喜田拓也中心に結束を図り、6月1日に苦杯を喫した鹿島にリベンジを誓っていた。

 こうした中、スタートした試合はまず鹿島が主導権を握った。柴崎の右CKから植田直通のヘッドがクロスバーを叩き、跳ね返りを関川郁万が拾って最終的に知念が押し込んだ前半29分の先制点も彼ららしい一撃だった。

 このまま前半を1-0で折り返していたら、何ら問題なかったのだが、前半終了間際に信じがたい出来事が起きる。左の大外に開いたエドゥアルドにロングボールを蹴り込まれた際、GK早川友基がキャッチミス。こぼれたボールを天野純が拾って左足シュートを放ち、1-1に追いつかれてしまったのだ。

「前半のマリノスはチャンスっぽいチャンスはなかったのに、非常にアンラッキーな形で点を取られてしまった。それで相手が予想以上に乗ってしまって、ウチが予想以上にダメージ食らったと思います」

 エース・鈴木優磨は苦渋の表情を浮かべたが、鹿島は後半に入っても狂った歯車を止められない。開始7分に右CKからエドゥアルドに逆転弾を奪われたのが非常に痛かった。

■鈴木優磨「海舟の抜けた穴は正直、デカい」

 ランコ・ポポヴィッチ監督も直後にチャヴリッチを投入し、流れを取り戻そうと試みたが、相手には西村や宮市亮といったタレントがいる。特に西村の守備力と運動量、献身性はマリノスの大きな活力となり、鹿島はズルズルと間延び。自陣に引かされ、さらに2つの失点を繰り返すことになったのである。

「札幌戦でも感じましたけど、やっぱり海舟の抜けた穴は正直、デカいなと。正直、嘘はつけないので、そう感じてます。彼がチームですごく多くのタスクを普通にこなしていたので、言い訳になっちゃいますけど、彼がいなくなった今は新しい形をチームとして探していかないといけない。このままだといけないと思うし、そこを早く見つけていかないといけないなっていうふうには感じました」

 鈴木優磨が指摘した通り、この日の後半のように守勢に回った時こそ、佐野の不在が色濃く感じられたのは確かだ。彼と知念の守備強度があれば、間延びした状況下でもボール奪取回数を増やし、タテへの推進力を出せたはず。ここまで守りが崩れることもなかっただろう。

「優勝を掲げているチームが4失点してはいけない」と指揮官も苦言を呈したが、23節終了時点の総失点29というのは、町田とガンバ大阪の17、神戸の18よりはるかに多い。そこは明白な課題。4位に後退するのもやむを得ないというしかない。

 柴崎には柴崎のよさがあるし、佐野と全く同じ仕事を課すことはできない。優磨が言うように「早く新たな形を見出す」ことが先決だ。一部報道によれば、三竿健斗を呼び戻す可能性が高まっていると伝えられていたが、15日夜に正式発表。少しは穴埋めの見通しが立ちつつある。とはいえ、やはりこれまでとは違った中盤の最適解を見つけ、失点を減らしていくことが、再浮上のカギと言えるだろう。

(取材・文:元川悦子)

(後編へ続く)

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