シンプルなデザインとなっているパリ五輪の選手村の一室。(C)Getty Images 今夏にパリで開催される夏季五輪では、選手たちの健康管理も懸念されている。 真夏のパリはなにしろ暑い。過去には最高気温が40度を超えた日もあり、昨年…

シンプルなデザインとなっているパリ五輪の選手村の一室。(C)Getty Images

 今夏にパリで開催される夏季五輪では、選手たちの健康管理も懸念されている。

 真夏のパリはなにしろ暑い。過去には最高気温が40度を超えた日もあり、昨年には熱中症などにより5000人の死者も出ている。そんな環境下で“最高のパフォーマンス”を求められる選手たちには試合日以外の体調管理の徹底が求められている。

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 そうした中にあってパリ市が満を持して建設した選手村の環境は、アスリートたちに小さくない影響をもたらすとして注目を集めた。各部屋にエアコンが設置されていないのである。

 地下水を利用した床下冷房を採用した大会組織委員会は、室温を23〜26度に保てると明言。エアコンを必要とする各国団体には「自費」での持ち込みと設置を要求した。

 床下冷房は五輪招致プロジェクトの一つに「史上最も環境にやさしい大会」を掲げてきた同組織委員会の“象徴的”なアイデアだ。米紙『Washington Post』は「選手たちは適切な環境で休める。(一部参加国のエアコン導入について)残念ですね」と言い放つ環境エクセレンス担当ディレクターであるジョージナ・グレノン氏のコメントを紹介した。

 さらにセーヌ川沿いに建設された選手村の風通しの良いものにもなっているという。そうした建設地の環境もあり、一連の計画に対して関係者は強気だ。今回の建設に携わった建築家のニコラス・ジーゼル氏は「室内温度に関する予測はどれも極めて仮説的なものでしかない」と持論を展開している。

 ただ、同紙は、「床下に冷水を流すだけでは限界がある」と指摘する。

 開幕日となる7月26日の最高気温が38.9度になるという予想データをふまえた同紙は、「エリートアスリートたちが、『快適な温度』を保証してほしいと言うのには、それなりの理由がある」と断言。エアコンなどの設備による温度管理の重要性を説いている。

「競技時間やスケジュールの関係で、日中に睡眠を取りたい選手もいるだろう。さらにパラリンピアンの中には、自力での体温調節が難しい選手もいるかもしれない」

 また、資金力に乏しい国々との“不平等”さも指摘する。

 すでにエアコン導入を決めた米国や英国、イタリア、ドイツといった主要先進国は資金的な余裕があるものの、そうした新たな予算を組めない国もあるのだ。実際、ウガンダのオリンピック委員会のドナルド・ルカレ会長は「私たちにそこまでの潤沢な資金はない」と訴えている。

 人類の課題とも言える「環境問題」と向き合ってもいる今大会。そのなかでエアコンを使用しないという大胆なプランを講じたパリの判断は、どのような影響を生むのか。開幕が迫るなかで話題は膨らむ一方だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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