エディー体制下での国際試合で初勝利を挙げた(C)産経新聞社 7月6日にジャパンⅩⅤはマオリオールブラックス(以下MAB)と2度目の対戦を行い26-14で勝利した。日本代表、ジャパンⅩⅤを通じてMABからは初勝利。エディー新体制下での…

エディー体制下での国際試合で初勝利を挙げた(C)産経新聞社

 7月6日にジャパンⅩⅤはマオリオールブラックス(以下MAB)と2度目の対戦を行い26-14で勝利した。日本代表、ジャパンⅩⅤを通じてMABからは初勝利。エディー新体制下での国際試合としても初の勝利となった。

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 正直なところ、驚いた。数々の課題が露呈し、大敗を喫した第1戦のチーム状態と、第2戦のスタッツとして発表された顔触れを考えれば、チームとして劇的な変化は望めず、よく戦ったとしても僅差の「惜敗」程度の結果に終わるという予想を見事に覆された。ラグビー日本代表(以下ジャパン)が2015年のW杯で南アフリカに勝利した「ブライトンの奇跡」、2019年のW杯で当時世界ランキング1位のアイルランドに勝利した「静岡の歓喜」に匹敵する歴史的勝利を豊田の地で出現させたのだ。

 この日のジャパンⅩⅤの勝因の一つは、相手がトップスピードになる前のダブルタックルと、タックル後の素早いプレーヤーのリロードが最後まで継続したことだ。第一次エディー体制下でジャパン躍進の礎となり、後を襲ったジェイミー・ジョセフ体制下でも引き継がれたジャパンの生命線ともいえるこのプレースタイルが試合の最後の瞬間まで途切れることはなかった。

 しかもこの試合のディフェンスは精度・強度ともに高く、MABにキツいプレッシャーを与え続けた。MABは、いつになくノックオンやパスの乱れなどのミスが多かった他、得意とする相手キックをキャッチしてからのカウンターアタックによるロングゲインがほとんど観られなかった。強いディフェンスラインに当たった時の打開策として、パントキックやグラウンダーなどもそれなりに使ってきてはいたが、SO山沢、根塚、高橋、矢崎のバックスリーのキックへの対応が適切で、こちらも大きな破綻を生じさせなかった。

 また、攻撃面では、前2試合を戦っての課題として原田衛共同主将が挙げていた「遂行力」不足が見事に解消されていた。チャンスの数は第1戦とほぼ同程度だったが、そのチャンスを確実に得点に結びつけたのだ。これも素早いリロードがもたらした選手の集散の速さ、多さの賜物ではある。

 しかし、この遂行力は一朝一夕に身につくものではなく、チームの成熟度の高まりに伴って完成に近づくものなのだ。この試合のジャパンⅩⅤは、1週間前とは別チームではないかと思われるほどの高い遂行力を見せたが、これが本物であるかどうかは、ジャパンとして戦うあと2試合のテストマッチの戦いぶりをウォッチせねばなるまい。

 残り2試合の相手はジョージア代表とイタリア代表だ。

 ジョージア代表は、2024年7月1日時点の世界ランキングは13位で同12位であるジャパンとはほぼ互角の実力と目されている。このチームの特徴は「世界一」とも評される強いスクラムで、昨年のフランスW杯でも世界の強豪チームのスクラムを度々粉砕した。この3試合、相手チームを押しまくったジャパンのスクラムとの真っ向勝負が見ものだ。

 今回のサマーシリーズ最終戦の相手はイタリア代表。世界ランキングは8位で、堅いセットプレーと奔放なラン、多彩なキックが持ち味だ。昨年のジャパンがW杯前の最終テストマッチで対戦し、21-42とダブルスコアで敗れた相手だ。その試合は、MABとの第1戦同様、数々のチャンスを自らのミスで潰して、そこからの逆襲を許して最終的に点差が大きく開いた、というような試合展開だった。果たしてMABとの第2戦のように隙のない試合運びと高い遂行力を発揮できるか。今後のエディージャパンを占う意味で、目の離せない一戦となるだろう。

[文:江良与一]

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