メディア向けに公開されたパリ五輪の選手村の様子。(C)Getty Images 来る7月26日に開幕するパリ五輪は、環境面にも最大限の考慮をした大会となる。 その象徴とも言えるのが、セーヌ川沿いの広大な敷地に完成した選手村だ。24時…

メディア向けに公開されたパリ五輪の選手村の様子。(C)Getty Images

 来る7月26日に開幕するパリ五輪は、環境面にも最大限の考慮をした大会となる。

 その象徴とも言えるのが、セーヌ川沿いの広大な敷地に完成した選手村だ。24時間営業の食堂や映画館など参加する207か国の選手やスタッフが快適に暮らせるように様々な工夫が凝らされているわけだが、当然、各室にもこれまでとは異なるテイストとなっている。

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 最大の注目を集めているのが、部屋にエアコンが設置されていない点だろう。招致時から「史上最も環境にやさしい大会」を目指している組織委員会は地下水を利用した床下冷房を採用。室温を23〜26度に保てると明言し、エアコンを完備しない方針を取った。

 もっとも、真夏のパリもご多分に漏れず、猛暑が予想される。昨年には熱中症などにより5000人の死者を出したという状況だ。それだけにエアコンがないという環境に対するアスリートたちへのストレスは想像に難くない。ゆえに各国のスタッフはエアコンを自主的に持ち込む方針を取っている。英公共放送『BBC』によれば、すでに2500台の設置申請が届いているという。

 ただ、「史上最も環境にやさしい大会」の目論見が崩れかねない状況ではある。ゆえにエアコン導入を決めた国の意向には、批判的な声も上がっている。米紙『Washington Post』は「エアコンを使わないというのは、大規模なイベント開催による環境負担を減らすというパリ市の計画の一部に過ぎない。しかし、この計画は非常に象徴的なものであり、参加国に環境プロジェクトの“実験”に参加したいかどうかを考えさせるものである」と指摘。その上で、自主負担が可能になる先進国が“有利”となる可能性を論じた。

「一部の大国が下した決定は大会の平等性にも疑問を投げかける。というのも、ポータブルエアコンは貧しい国の代表団には負担できないかもしれないコストであり、選手村にいる選手たちが異なる環境で暮らすことになるかもしれない」

 さらに同紙は、ウガンダの五輪委員会で会長を務めるドナルド・ルカレ氏の切実な訴えも伝えている。

「私たちに潤沢な資産はない。私たちはトルコで行われた国際大会にもポータブル型のエアコンを持ち込めずに、うだるような暑さの部屋で宿泊した。それは我々に資金がなかったからだった」

 環境か、はたまたアスリートの健康か。今回の選手村のエアコンを巡る問題は、しばらく余波が続きそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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