「後半に失点して、逆転されたが、誰一人あきらめずに、最低でも勝点1を取りにいくという姿勢を出してくれた結果があのようなゴールにつながった。この勝点1を次のゲームにつなげなければいけないと強く感じている」  途中出場のMF山田大記による後半ア…

「後半に失点して、逆転されたが、誰一人あきらめずに、最低でも勝点1を取りにいくという姿勢を出してくれた結果があのようなゴールにつながった。この勝点1を次のゲームにつなげなければいけないと強く感じている」

 途中出場のMF山田大記による後半アディショナルタイムの同点ゴールで川崎フロンターレと2−2と引き分けたことについて、横内昭展監督はそう振り返った。磐田はジャーメイン良の10試合ぶりとなる、シーズン12点目のゴールで前半からリードを奪ったが、後半6分に交代出場の橘田健人を起点とした中央突破から同点ゴールを叩き込まれると、GK川島永嗣が左足を負傷した様子で、これまで未出場の大卒ルーキー杉本光希が突然ピッチに送り出された。

 その杉本に関しては横内監督も「本当にすんなりと試合に入ってくれた。ビルドアップも勇気を持ってやろうとしてくれた。練習でやっていることをピッチで出してくれた」と振り返るように、目立ったミスもなく試合を作ったが、山田新、山内日向汰、さらに家長昭博を入れて勢いを増す川崎に、ショートコーナーの二次攻撃から橘田に逆転のミドルシュートを叩き込まれた。

 磐田にとってはかなり苦しい流れだったが、横内監督は後半 41分にキャプテンの山田大記を投入。全体のラインを押し上げると、FWマテウス・ペイショットの後にジャーメインと山田、さらにサイドの古川陽介とブルーノ・ジョゼが高い位置で、5アタッカーによるスクランブルアタックで前からの守備ではめて、厚みのある攻撃を繰り出した。この数分間で、右サイドを破られかけるシーンもあったが、矢印を弱めることなく川崎ゴールに向かっていった。

■「ラッキーな形でしたけど」

 そして劇的な同点ゴールは後半アディショナルタイム2分にもたらされる。相手陣内のスローインを左サイドバックの佐々木旭にクリアされるが、そのボールを磐田のセンターバック鈴木海音がヘッドで大きく折り返すと、ジャーメインが橘田との競り合いを制してマイボールに。そのまま強引に、ゴール前まで持ち上がる。

 川崎はセンターバックの大南拓磨と佐々木がなんとか止めにかかるが、こぼれたボールを処理しようしたGKチョン・ソンリョンがピッチに足を取られて転倒。そして前にこぼれたボールにいち早く反応した山田がゴールに押し込んだ。

「ラッキーな形でしたけど、うん。直前で来るかなと思いました」

 そう振り返る山田は緊張する間もなかったという言葉通り、素早くも丁寧に蹴り込んだ。川崎側のアクシデントがなければ、起きていなかったシーンかもしれない。しかし、このシーンにいたるプロセスを生み出したのは紛れもなく、磐田のあきらめない姿勢と同点ゴールにつなげるビジョンだった。

(取材・文/河治良幸)

(後編へ続く)

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