これが選手たちの室内の様子。エアコンはなく扇風機が一台だけ設置されている。(C)Getty Images 花の都で100年ぶりに開かれるスポーツの祭典まで1か月を切り、いよいよ開幕に向けた機運が高まってきている。現地時間7月3日には…

これが選手たちの室内の様子。エアコンはなく扇風機が一台だけ設置されている。(C)Getty Images

 花の都で100年ぶりに開かれるスポーツの祭典まで1か月を切り、いよいよ開幕に向けた機運が高まってきている。現地時間7月3日には、パリオリンピック&パラリンピックで使用される選手村がメディアに公開された。

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 セーヌ川沿いの広大な敷地に完成した選手村には82棟約7200室が配備。参加する207か国の選手やスタッフが快適に暮らせるように様々な工夫が凝らされているわけだが、一方で体調管理が求められるアスリートたちにとっては小さくない“問題”も生じている。

 各国メディアでとりわけ話題となっているのは、各室にエアコンが設置されていなかった点だ。

 招致時から「史上最も環境にやさしい大会」を目指している大会組織委員会は、地下水を利用した床下冷房を採用。室温を23〜26度に保つことを目指すと明言し、選手村にエアコンを完備せず、希望する場合には、各選手代表団の負担で設置する意向を取っていた。

 ただ、真夏のパリは“トレトレ・ショー(※フランス語で『とても暑い』の意)”である。毎年のように熱波に包まれ、気温が40度を超える日もざらにある。昨年には熱中症などにより5000人の死者を出したという状況だ。

 ゆえにエアコンの発注が殺到しているという。英公共放送局『BBC』は「主に先進国から来る選手たちはエアコンがある環境に慣れているため、設置されていないのは問題という考えを持っている」とした組織委員会担当者のコメントを紹介。すでに2500台の設置を実施する意向を明らかにした。

 すでにエアコンを持ち込む意向を明らかにしている米国オリンピック・パラリンピック委員会のサラ・ハーシュランドCEOは、「アスリートたちと話したとき、彼らはパフォーマンス能力を発揮する上で、空調などの環境面が非常に重要な要素になると感じていた」と断言。猛暑に対する当然の対応であるという考えを明らかにした。

 一方で地元メディアからは懸念も指摘される。「パリ五輪の冷房不要の野望は消え去った」と辛辣に伝えたフランスの大手ニュース局『France 24』は、2500台のエアコンを導入する動きについて「『環境に優しい大会』という評判に打撃を与えることになる」と指摘。パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏が「アスリートの快適な環境には大いに敬意を払っています。ですが、私たちは人類の生存についてもっと考えなければいけない」と語ったことも報じている。

 早くも大会目標に問題が生じてしまった感が否めないパリ五輪。選手村の環境については、引き続き注視する必要がありそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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