全米オープンが開催されているUSTA(全米テニス協会)ナショナル・テニス・センターの4番コートで、予選2回戦が行われていた。ポイント間で次のサーブを打つまでの時間制限である25秒が電光掲示板で青色の数字でカウントダウンされていた。この数字…

 全米オープンが開催されているUSTA(全米テニス協会)ナショナル・テニス・センターの4番コートで、予選2回戦が行われていた。ポイント間で次のサーブを打つまでの時間制限である25秒が電光掲示板で青色の数字でカウントダウンされていた。この数字が0を表示したとき、主審によりタイム・バイオレーションとして警告がサーブ側の選手に与えられていた。

 USTAプロテニス部門のチーフ・エグゼクティブを務めるステーシー・アラスター氏は、このサーブ・クロックや、コーチが試合中にコ-チングを選手に行うイン・マッチ・コーチングなどの新規導入事項について語った。

 これらの新規導入事項が、全米オープンの予選で試験的に行われ、うまく機能するようであれば、来年からは本戦で導入される可能性がある。例えば、ラファエル・ナダル(スペイン)はポイント間の25秒の時間制限を厳守する必要があり、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)は試合中にコーチからアドバイスを受け、ロジャー・フェデラー(スイス)のセットごとのシャツの着替えは5分以内に制限されることになる。

「これは、私が求めていることではなく、ましてやUSTAやテレビ局のためにやっていることでもないの。すべてはテニスファンのためのもの。私たちは、テニスというビジネスを発展させることが仕事であって、身内のことを考えるのはやめて、ファンが何を求めているかを考えるべきなのよ。そのほかのスポーツとの競合に勝つためには、特に若年層のファン獲得のために、できるだけ早く私たちのサービスをファンに届ける必要があると思うの」とアラスター氏はコメントした。

 USTAは、これらを一部、またはすべてを2018年の全米オープンの本戦で一方的に採用する可能性はあるが、その他の運営組織と連携して行うことも考えられる。アラスター氏は、今回の予選の試合から得られるデータや選手、コーチ、主審、およびその他の大会関係者からのフィードバックを参考にし、様子を伺っている。

 全米オープン予選1回戦では、男女シングルスの128試合、合計1万7000ポイント以上が行われ、サーバーのポイント間のタイム・バイオレーションは9回、5分間のウォームアップ後の試合開始までの制限時間の違反は2回、着替えの制限時間の違反はなかったとアラスター氏は答えている。

「大会前は、サーブ・クロックの導入や必要性には懐疑的だったけど、今回2試合を戦ってみて、これまでと大した違いはなかったよ。だけど、ポイントが終わったら、またすぐにサーブを打たないといけないことはサーブ・クロックを見てわかったよ」と予選決勝に進出した23歳のミッチェル・クルーガー(アメリカ)はコメントした。

 一方、これまでグランドスラム大会では禁止されていた試合中のコーチングにおいては、予選初日は73%、2日目は81%の選手たちが、試合中にコーチからアドバイスを受けていたとアラスター氏はコメントしている。

「各試合で選手にアドバイスすることができるんだけど、選手たちはそれを受け入れないとね。コ-チングがこれまでも行われていたのは事実だし、皆いろいろな言語でするからね。こんなふうに自然にコーチングできることは、素晴らしいルールだと思う。僕は好きだね」とクルーガーと予選に出場した3人の選手のコーチを務めるスタンフォード・ボスター氏はコメントした。

 クルーガー自身が試合中のチェンジ・コート時にボスターのアドバイスを受けることはなかったが、選手が試合中にコーチングを受ける気持ちはわかると答えている。

 試合中のコーチングにおいて、コーチが常に帯同している選手にしかメリットがないとの批判を一部の選手から受け、アラスター氏は、予選の賞金総額が昨年は200万ドル以下だったのに対し、今年は300万ドル以上に増額しているので、その賞金でコーチを雇うことができると答えている。

「誰の助けも借りずに1対1で戦うというテニスのもっとも基本的なルールが変わるというのは、ある意味このスポーツが進化したようなことだよね。それと、競った場面で選手とコーチ間でどのような会話がされるかを見るのは、ファンにとっては面白いだろうね」とクルーガーはコメントした。

「長期的な視野で若年層のテニスファンのことを考えると、常に新しいアイデアを取り入れていく必要があると思うし、ファンにもっと受け入れられることや、楽しんでもらえることをどんどんやっていきたいと思っているわ」とアラスター氏はコメントしている。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は2014年のWTAツアー最終戦(シンガポール)でスピーチをする当時WTAのチーフ・エグゼクティブを務めていたステーシー・アラスター氏

Photo:SINGAPORE - OCTOBER 18: L-R Staecy Allaster CEO and Chairman of the WTA makes a speach at the Marina Bay Sands shopping centre afterthe draw ceremony prior to the start of the BNP Paribas WTA Finals at Singapore Sports Hub on October 18, 2014 in Singapore. (Photo by Clive Brunskill/Getty Images)