パリ五輪に臨むU-23日本代表のメンバーが以下の18人に決まった。GK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、野澤大志ブランドン(FC東京)DF関根大輝(柏レイソル)、半田陸(ガンバ大阪)、大畑歩夢(浦和レッズ)、高井幸大(川崎フロンターレ)…

 パリ五輪に臨むU-23日本代表のメンバーが以下の18人に決まった。

GK
小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、野澤大志ブランドン(FC東京)

DF
関根大輝(柏レイソル)、半田陸(ガンバ大阪)、大畑歩夢(浦和レッズ)、高井幸大(川崎フロンターレ)、木村誠二(サガン鳥栖)、西尾隆矢(セレッソ大阪)

MF
藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)、山本理仁(シント・トロイデン)、川﨑颯太(京都サンガF.C.)、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)、荒木遼太郎(FC東京)

FW
平河悠(FC町田ゼルビア)、佐藤恵允(ブレーメン)、斉藤光毅(ロンメル)、藤尾翔太(FC町田ゼルビア)、細谷真大(柏レイソル)

(国際大会の登録メンバー)26人に慣れてしまうと、18人というのはいかにも少なく感じる。せめて前回東京五輪(22人)並みにしないと、サッカーらしさは失われる。選手交代2人の時代(1990年代半ば)に戻ったような、選手ファーストの発想からほど遠い、非今日的発想だろう。



パリ五輪の日本代表メンバーを発表する大岩剛監督 photo by Fujita Masato

 今回、一番のニュースはオーバーエイジを招集できなかったことになる。しかし、久保建英、鈴木彩艶、鈴木唯人、松木玖生など、U-23に該当する選手でも満足に招集できない状況は、それ以上に問題だ。五輪サッカーとはいったい何の大会なのか。この金メダルはいったい、どういう定義の世界一なのか。定義は揺らぎまくっている。所属クラブに拘束力がある期間内に招集可能だった18人。世間から取り残された18人にも見えてしまうかもしれない。

 実際、パッと見には華々しさに欠ける地味な顔ぶれだ。だが、条件は他国も同じだ。今回の開催国であるフランスや、なぜか上質なメンバーが集まってしまった前回のスペインのような例外を除けば、他国のメンバーも似たり寄ったりかもしれない。この顔ぶれでも、世界的には上々だったりする可能性もゼロではない。

「初の決勝進出。そして金メダルを」とは大岩剛監督の弁だが、日本がどこまで行けそうか、いまの段階ではまったく予想がつかない。大きな期待はできないが、捨てたものでもないかもしれない。

【ネックは決定力不足】

 優勝したU23アジアカップの戦いぶりから見る限り、大岩采配に特段、大きな問題は見当たらない。ただ単に優勝したのではない。多くの選手を使い、能力を確かめるようにテストをしながら勝ち上がっていく姿に、余力を感じた。選手選考という視点に照らせばフェアだった。残念ながら落選した選手も、ある程度、納得できているのではないか。

 フィールドプレーヤー16人で行なう五輪サッカーは、ベンチに下げる選手と異なるポジションの選手を投入する、いわゆる戦術的交代が大きなポイントになる。選手を使い回す監督采配の善し悪しに成績は委ねられる。前回、東京五輪の森保一監督の采配は、その点に大きな問題を抱えていた。「日本は先を考えて戦うにはまだ早い」と同監督は述べたが、つまりそれは、途上国を指揮する監督の方法論でメダルを狙おうとしたことになる。大岩采配はそのレベルからは確実に脱している。

 決勝戦(3位決定戦を含む)までの6試合をほぼ中2日で戦う五輪。戦術的交代を円滑に行なうためには多機能型選手が必要になる。藤尾(右ウイングと1トップ)、平河、佐藤(ともに左右ウイング)らが当選した理由だろう。荒木も、今季移籍したFC東京で、1トップ周辺でプレーしたことが奏功したと考えられる。単なる攻撃的MFからアタック能力を高めたことで当選圏に入った。逆に左足キックに定評がある山田楓喜(東京ヴェルディ)は、右しかできないことがネックになったのではないか。26人枠なら文句なく選考されただろうが、18人になると右サイドオンリーは大きな足枷になる。

 攻撃陣の話を続ければ、ネックは決定力不足だろう。先発候補の細谷は万能型ではない。ポストプレーが得意とは言えないので、必然的にパス回しに関与する機会が減る。攻撃がもうひとつ多彩にならない理由だ。

 ただ、そうも言っていられないのが現実だ。170センチ台の1トップを前線で待つタイプのストライカーにさせている限り、攻撃は活性化しない。多少無理してでもパスワークに関与させるべき。バランス的に、真ん中にボールが入らないと、得意のサイド攻撃も活きてこないのだ。

 さらに言うなら、小柄な割にボールを収める能力がある荒木を、FC東京のように0トップ気味に使う手もある。いずれにしても1トップ問題こそがこのチームの浮沈のカギだと考えられる。現状にどうメスを入れるか。目を凝らしたい。

 先述した藤尾、平河、佐藤に加え、斉藤光毅、三戸舜介もウインガーだ。両翼の高い位置には常に活きのいい選手を置いておきたいと、大岩監督は考えているのだろう。目指すは高い位置からの守備。プレッシングサッカーだと思われる。

 日本代表の森保監督は、アジアカップで5バックサッカーを多用した。難しい状況になると引いて構えたものだ。大岩監督は布陣をいじらず、戦術的交代を含む選手の入れ替えで状況を改善しようとする。プレッシングありきで後ろに引いて構えようとはしない。その象徴が5人のウイングに見える。相手のサイドバックに積極的にプレッシャーをかけようとする意図だろう。森保監督と違い、大岩監督は攻撃的だ。この違いにも目を凝らしたい。

 他国の戦力が現状では判明していないとはいえ、合格点はベスト8か、ベスト4。メダルを獲得すれば万々歳。決勝に進めばお祭り騒ぎに興じたくなる。一方、グループリーグで敗退しても、期待値がもともと低いのでそう大きな問題にはならないだろう。

 よく言えば、大岩ジャパンは無欲で臨める状況にある。そんな背景が、攻撃的サッカーに加えて23歳以下という若さとマッチすれば面白い。波に乗る可能性はある。監督にとって名を上げるチャンスでもある。結果はいかに。楽しみである。