【チームとして目指した世界の頂点】 バレーボールの国際大会「FIVBネーションズリーグ2024」の男子大会は、ファイナルラウンドが開催されたポーランドの現地時間6月30日に閉幕。男子日本代表は初の決勝進出を果たし、最後はフランスの前に屈した…

【チームとして目指した世界の頂点】

 バレーボールの国際大会「FIVBネーションズリーグ2024」の男子大会は、ファイナルラウンドが開催されたポーランドの現地時間6月30日に閉幕。男子日本代表は初の決勝進出を果たし、最後はフランスの前に屈したものの、過去最高を更新する銀メダルを獲得した。


ネーションズリーグで銀メダルを獲得した男子バレー日本代表

 photo by FIVB

 すでに予選ラウンド終了直後の6月24日には、パリ五輪の代表内定選手13名は発表済み。本戦まで1カ月を切り、チームは最強メンバーを揃えて集大成を迎えようとしている。

「HISTORY FOR TEAM JAPAN!」

 ネーションズリーグ準決勝で日本がスロベニアを下し、初の決勝進出を決めた際、FIVB(国際バレーボール連盟)は、そのような言葉で快挙を称えた。訳するならば、「歴史が動いた」「歴史を作った」といった表現だろう。すでにパリ五輪出場を決めていた国々は予選ラウンドこそ調整の様相もあったが、ファイナルラウンドからはフルメンバーを揃えていた。しかし、男子日本代表はそれをも撃破。国際大会で銀メダル以上の成績を収めたのは、1977年のワールドカップ以来(同大会は2位)。実に47年ぶりのことで、まさに新たな歴史の1ページを刻んだのだ。

 振り返れば、ネーションズリーグで男子チーム史上初の銅メダルを獲得したのは1年前のこと。最後の3位決定戦で、2022年世界選手権の王者イタリアを相手にフルセットの激闘を制しての表彰台だった。

 2021年にパリ五輪に向けたチームが始動してから初のメダルとあって、その成功体験は選手たちの自信となり、続くアジア選手権を制覇。そして秋のパリ五輪予選を兼ねたワールドカップもオリンピック出場権獲得を果たしている。

 そうして臨んだ今年のネーションズリーグは、パリ五輪を前にした最後の国際大会であり、貴重な実戦の場。とはいえ、フィリップ・ブラン監督はネーションズリーグで「メダル獲得」という目標を掲げることはしなかった。

 もちろん、ネーションズリーグ予選ラウンド終了時点でのFIVBランキングが高いほど、パリ五輪本番のプール分け(予選ラウンド)で同ランキング上位勢との対戦を避けられるため、ブラン監督は「(ランキングの)上位5位以内を維持することが大切」と口にしていた。

 ただ、ネーションズリーグの予選ラウンドを突破するとなれば、フィリピンで実施された第3週からポーランドでのファイナルラウンドに臨むにあたって移動を要し、なおかつ期間も短いため、疲労の蓄積が懸念材料となる。ゆえに指揮官は、あえてネーションズリーグでの上位成績を目標とせず、それでも「各試合の質にこだわることが重要。パフォーマンスが素晴らしければ、おのずと掲げる目標は達成できる」と語っていた。

 一方で、選手たちの口からはギラギラとした野心がうかがえた。ネーションズリーグの目標について、みなが口を揃えたのは「昨年以上の成績を残す」ということ。この大会がパリ五輪予選に向けた最終調整の機会、また個々に目を向ければ、五輪メンバー入りへの最終選考という側面があったとしても、だ。日の丸をつけて国際舞台で戦う以上、「チームとしては世界の頂点を目指す」。ただそれだけなのである。

【磨いてきた「最後の1点を取りきる力」】

 昨年のワールドカップでパリ五輪の出場権を獲得したことは、コンディション調整を図りながらネーションズリーグを戦うことができる"アドバンテージ"となった。

 実際に予選ラウンド第1週では、石川祐希、高橋藍を登録外としてクラブシーズンからの疲労回復と調整に充てている。対角のエースふたりを欠いても、チームは3勝1敗と勝ち越しに成功。ふたりが合流した第2週も、黒星を喫したのは控えメンバーで挑んだポーランド戦だけ。そして第3週はカナダにこそ競り負けたものの、フランスやアメリカという上位勢から勝利を収め、結果的にFIVBランキングは2位まで上昇した。

 予選ラウンドは9勝3敗で4位の成績を収め、決勝トーナメントに進むことに。初戦の準々決勝では、予選ラウンドで敗れたカナダにストレート勝ちでリベンジを収め、続く準決勝でもストレート勝ち。その試合では予選ラウンド首位通過のスロベニアを相手に、一歩も譲らぬ壮絶なラリーも制するなど、実力で押しきって見せた。

 そうした1点をもぎ取る力もまた、チームが磨いてきた部分にほかならない。2年前の世界選手権の決勝トーナメント1回戦(ベスト16)では、その前年に東京五輪を制したフランスを相手に、一度はマッチポイントに到達。最後は敗れたが、それ以降、選手たちは「最後の1点を取りきる力を」を合言葉に、それぞれ研鑽を積んできた。着々と身についてきたその力は、スロベニアとの準決勝でも確かな成果として表れたのであった。

 思えば、29年ぶりの決勝トーナメント進出を果たした東京五輪から、男子日本代表は数々の勲章とともに、その歴史にいくつものドラマをつづってきた。パリ五輪では、おそらくこれまで以上に高いパフォーマンスを発揮してくるであろう強敵との対戦や、ネーションズリーグ決勝で後塵を拝したフランスへのリベンジの機会も巡ってくるかもしれない。そんな戦いを潜り抜けた先に、メダルがある。

 今年、男子日本代表が掲げたスローガンは「ALL FOR PARIS Creating history together」。すべてはパリのために、ともに歴史をつくる。その準備は、できた。