ユーロ2024はグループステージが終了し、ベスト16が出そろった。強豪と中堅の力の差が縮まっているように見える本大会だが、はたして優勝はどこになるのか? 4人のライターに予想をしてもらった。ユーロ2024の決勝トーナメント表。優勝するのはど…

ユーロ2024はグループステージが終了し、ベスト16が出そろった。強豪と中堅の力の差が縮まっているように見える本大会だが、はたして優勝はどこになるのか? 4人のライターに予想をしてもらった。



ユーロ2024の決勝トーナメント表。優勝するのはどこか?

【スペインvsドイツが事実上の決勝戦か】

中山 淳(サッカージャーナリスト)

◎本命:スペイン 
〇対抗:ドイツ 
▲穴:フランス

 開催国ドイツ、スペイン、フランス、ベルギー、ポルトガルと、今回の決勝トーナメント表では片方の山に強豪チームが偏った印象だ。もう片方の山でヨーロッパ上位に位置するチームは、前回王者イタリア、イングランド、オランダといったところ。それを考えると、激戦区となった山を勝ち上がったチームが最後に笑う可能性が高いと見る。

 そのなかでも初戦から実力を発揮できているのがスペイン。グループステージ全勝は出場チーム唯一で、しかも3試合無失点。特に両ウイングの若いラミン・ヤマルとニコ・ウィリアムズが効いていて、アルバニア戦ではターンオーバーを採用してコンディションも万全と見られる。ラウンド16でジョージアに順当勝ちすれば、準々決勝でドイツと対戦する可能性が高く、そこが事実上の決勝戦になるだろう。

 ただ、スペインとドイツのサッカーのかみ合わせでいくと、ホームアドバンテージを含めてスペインが躓く可能性も否定できない。特に長年レアル・マドリーでプレーしたトニ・クロースが中盤に構えることの効果は無視できない。相手を熟知するクロースが、ドイツのキーマンとなるはずだ。

 穴は、本来は本命だったフランス。ここまでわずか2ゴールで、それもオウンゴールとPKによるもの。中盤にエンゴロ・カンテを復帰させたのが今大会の大きなトピックだったが、攻撃面では周囲との連係が悪く、イージーミスも目立っているのが実情。ディディエ・デシャン監督がそれをどう判断するかが見ものだが、仮にエドゥアルド・カマヴィンガを先発起用するようだと、悪い流れが変わるかもしれない。

 キリアン・エムバペの鼻のケガも不安材料のひとつだが、守備は相変わらずの安定感があるだけに、フランスが悪い時の流れから脱却するには、次のベルギー戦で「ガチっとハマる先発陣」を見つけられるかどうかがポイントだ。

【フランスの復調に期待】

西部謙司(サッカーライター)

◎本命:フランス 
〇対抗:ドイツ 
▲穴:オーストリア

 グループステージの試合ぶりで予想すれば、唯一3戦全勝のスペインが本命、開催国ドイツが対抗になるが、ノックアウトステージはそれまでと様子が変わってくる気がする。

 スペイン、ドイツ、ポルトガル、フランスが一方の山に集中している。ここを勝ち抜いたチームが本命だと思うが、その予想がかなり難しい。ポルトガル、フランスの状態がこのままならラウンド16で姿を消しても不思議ではない。

 すんなり通過しそうなのはジョージアと当たるスペインくらい。ドイツは難敵デンマークと当たる。順当ならドイツだが危うい感じもある。ポルトガルは堅守スロベニアに負けるのではないか。ベルギーは相手が強いほうがやりやすいチームなので、フランス対ベルギーもわからない。

 もう一方の山はグループステージ不調のオランダ、イングランド。前回優勝のイタリアがいるが、オーストリアを推したい。オランダ、イングランド、イタリアが調子を上げても、現在のオーストリアを破るのは簡単ではないだろう。スイスも気になるが、こちらはオーストリアが勝ち上がると予想する。

 強豪と中堅の差がなくなってきた。中堅の守備力が上がり、接戦になっている。

 本命はスペインが堅そうだが、あえて復調に期待してフランス。キリアン・エムバペを持っているのはほかの強豪にはない強みだからだ。ラウンド16でどうなるかわからないが、対抗は最初の2試合のパフォーマンスを買ってドイツ。穴は逆の山を勝ち抜いてきそうなオーストリアとしたい。

【オランダには一発の可能性がある】

杉山茂樹(スポーツライター)

◎本命:スペイン 
〇対抗:フランス 
▲穴:オランダ 
☆大穴:オーストリア

 高位安定。キリアン・エムバペという大エースがいるフランス。フランスに比べてやや線は細いが右肩上がりの状態にあるスペイン。どちらを評価するか。悩むところだ。

 負けられない意識が悪い意味で強まりそうなフランスは、受けて立ってしまう可能性がある。フランス絶対の時代が変化することにも期待したいので、スペインを優勝候補の筆頭に推す。ウイング攻撃と中盤サッカーと両サイドバックの関係がどこよりも円滑。攻撃の終わり方がいつになくいい。

 しかしスペイン、フランス両軍が順当に行けば準決勝で争うことになる側のトーナメントの山には、ほかにも有力チーム(ドイツ、ポルトガル、ベルギー)がひしめく。両チームが無事に準決勝で対戦する可能性は、客観的に見て5割程度だ。

 一方の山が楽に見えて仕方がない。イングランドにとってはチャンス到来だ。ユーロ初優勝に向けおあつらえ向きの展開になった。

 オランダも喜びたいところだが、フレンキー・デ・ヨング、トゥーン・コープマイネルスら中盤の有力選手をケガで欠き本来の力が出ていない。実力をつけているオーストリアにグループリーグに続き、足元をすくわれる可能性がある。

 とはいえ、オランダには一発の可能性がある。試合運びは不安定だが、一瞬、光る技術がある。準決勝がイングランド対オランダとなれば、全体的にイマイチなイングランドではなく、オランダの切れ味に懸けたくなる。

 地元ドイツは決め手不足。好選手の数ではどこにも負けないポルトガルは、監督采配に難あり。イタリアは総合力不足。ベルギーはスケールダウンした――と見る。注目選手はベルギーのジェレミー・ドク。そのウイングプレーは必見。

【オーストリアはここまで最大のサプライズ】

篠 幸彦(スポーツライター)

◎本命:スペイン 
〇対抗:ドイツ 
▲穴:オーストリア

 難敵揃いのグループBを3勝、5得点0失点と、文句のつけようのない結果で1位通過したスペインは、間違いなく今大会随一の完成度。クロアチアを3-0で破った初戦は、あまりに見事だった。決勝トーナメントもニコ・ウィリアムズ、ラミン・ヤマルの若き両ウイングの、野心溢れるドリブル突破に注目だ。

 そのスペインと準々決勝で当たるかもしれないドイツも、2勝1分、8得点で1位通過し、好調なグループステージとなった。言うまでもなく、今大会が現役最後となるトニ・クロースは、最後のワンプレーまで刮目すべきだ。それから、第3節スイス戦のアディショナルタイムで同点弾を決めたニクラス・フュルクルクの決定力は、ノックアウトステージでも切り札となるだろう。

 スペインやドイツ、フランス、ポルトガルなど、優勝候補となる国がこれだけ一方の山に偏ったことで、もう片方の山ではどんなサプライズも起こりうる。本来、優勝候補の一角に入るイングランドやオランダは不調で、どこが上がってきてもおかしくない。

 そんななかでグループDを首位通過したオーストリアは、ここまで最大のサプライズだ。突出したスーパースターがいるわけではないが、ラルフ・ラングニックが率いるチームはよく組織され、ダイナミズムに溢れる好チーム。ラウンド16のトルコに勝利すれば、その勢いで決勝まで駆け上がってもおかしくない。今大会のダークホースとなり得る。