井上と激闘を演じ、東京ドーム決戦を彩ったネリ。このビッグマッチを本人が振り返った。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext東京ドームを沈黙させた一撃に悔い 激闘の末に喫したショッキングな敗北をメキシコの悪童…

井上と激闘を演じ、東京ドーム決戦を彩ったネリ。このビッグマッチを本人が振り返った。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

東京ドームを沈黙させた一撃に悔い

 激闘の末に喫したショッキングな敗北をメキシコの悪童は自らの糧にしようとしている。去る5月6日にボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)との東京ドーム決戦に挑んだルイス・ネリ(メキシコ)だ。

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 今も色褪せない衝撃的な光景だった。初回から積極果敢に仕掛けたネリは井上が左アッパーを突き上げ、二の矢を見舞おうと右ストレートを繰り出そうとした刹那、ぽっかりと空いたわずかな隙間に左フックが炸裂。モンスターからキャリア初ダウンを奪ったのだ。

 そこから「ダメージはさほどなかった」という井上は挽回。6回までに3つのダウンをもぎ取る完勝劇を収めた。だが、初回に“モンスター”を崩したネリの一撃は、瞬間的ではあったが、熱気に溢れていたドームを沈黙させた。

 井上を崩した手応えは今もある。激闘から約1か月が過ぎ、メキシコに帰郷したネリは、地元メディア『Global Comunicacion』のインタビューで「どんな結末になるかは分かっていた。彼が倒れるか、俺が倒れるか。先に強く当てたほうが勝つと思っていた」と回想。世界に衝撃を与えた1ラウンドの攻防も振り返っている。

「勝つためにはノックアウトしかなかった。だから俺は彼を最初に倒した。その瞬間は『よし!いいぞ!』と素直に思ったよ。でも実際は擦れた感じで当たったんだ。ダウンはさせたけど、クリーンヒットじゃなく顎の辺りをかすめた感じで、しっかり当たらなかったんだ。それでもイノウエは倒れた。正直、『この男はなんて簡単に倒れるんだ』と思った」

 赤裸々に衝撃シーンを振り返ったネリ。ただ、「正直、『この男はなんて簡単に倒れるんだ』と思った」という“油断”を本人は悔やむ。

「すぐに仕留めようとしたのが間違いだった。そこから俺はガードが疎かになったんだ。12ラウンドもあることを思い出して、時間をかけるべきだった。あんな大きな試合だったからプレッシャーは半端じゃなかった。だから俺は時間を見失った。そういうことだ。もう結果は出てしまったから仕方がないけどね」

「俺は体重管理に焦点を当てすぎた」

 数々の名手が成し得なかった井上からのダウンを早々にやってのけたことがネリを急かせた。逆に言えば、相手に生じたわずかな隙を見逃さなかったチャンピオンも見事と言うほかにない。

 日本を熱狂させた一大決戦について「俺は体重管理に焦点を当てすぎた。だからタフなパートナーとのスパーリングとかを怠った。でも、全力は尽くしたからリングを降りた時は幸せだった」とも振り返ったネリ。早々とフェザー級への転級を決めた今後は、ふたたび世界王者になることを目標に掲げている。

「俺はフェザーに進むよ。じきにイノウエもスーパーバンタム級から去ると思うから、あの階級には本当に有名な選手はもう残っていない。仮にイノウエがアフマダリエフや他の選手たちとスーパーバンタム級で戦っても試合が売れるとは思えない。俺はひとつの王座が空位になると聞いているから世界タイトルを目指す。それが今の計画だ」

 良くも悪くも日本で話題をさらったネリは、新たな階級でいかなるパフォーマンスを見せるのか。その再起への道も波乱万丈となる気配が漂っている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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