いったい、何が起きていたのか? スペインGPのRBは、今季これまでの好調が嘘のような低迷に陥り、2台揃ってQ1敗退。角田裕毅は予選17位・決勝19位。フロアやサイドポッドを中心とした大型アップデートを投入し、これまで以上にトップへ近づく期…

 いったい、何が起きていたのか?

 スペインGPのRBは、今季これまでの好調が嘘のような低迷に陥り、2台揃ってQ1敗退。角田裕毅は予選17位・決勝19位。フロアやサイドポッドを中心とした大型アップデートを投入し、これまで以上にトップへ近づく期待を持って臨んだバルセロナだっただけに、チーム全体が混乱と落胆に包まれた。


角田裕毅を襲った突然の低迷にチームは大混乱

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「クルマのバランスはそこまで悪くはないんですけど、グリップがなくて滑っていて......乗っていて速いと感じられるかというと、そういう感じでもないです。

 セットアップ的には、今あるマシンパッケージのなかで最大限は引き出せたと思います。今週末、ここまでいろいろとセットアップを変えてきたなかで、一番いいフィーリングではありました。それがコースの特性によるものかはわかりませんが、ただただ、何かが足りていないというだけです」

 Q1で3セットのタイヤを投入して、捨て身でなんとかQ2進出くらいはと臨んだ予選で、17位Q1敗退となった角田はそう言った。

 自分としてはこれ以上、どうすることもできないほど引き出したアタック。現場のエンジニアたちとしても、これ以上はもうないというくらい引き出したセットアップ。

「ふだんなら、Q1ではトップから0.2〜0.3秒差で、何かミスがあっても0.5秒程度。0.8秒落ちなんていう差は今までになかった。周りが上がったというより、僕たちがけっこう下がったということじゃないかと思います」

 何かが足りていない──。その"何か"のひとつは、リアウイングだった。

 今回、空力効率を向上させ、つまり空気抵抗を減らした新型リアウイングを投入したRBだったが、フラップの設計に問題があったようで、FP1の走り始めからDRS(※)オン時にフラップがバタつくトラブルに見舞われた。これでは1周あたり0.71秒に及ぶ適正なDRS効果が得られないのに加え、場合によっては閉じなくなって非常に危険な状況にもなり得る。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

【マシン固有の問題ではなかった】

 ピットガレージで対策を試みたものの、チームはこの新型リアウイングの使用を断念せざるを得なかった。

 その結果、バルセロナに合ったダウンフォースレベルのリアウイングが手もとになく、バーレーンで使ったMID仕様ではダウンフォースが足りずにリアが不安定になり、モナコで使ったHI仕様ではストレートが遅すぎて勝負にならないという状況に陥った。

 FP2、FP3とそれぞれ試したもののどちらもフィットせず、結局、予選は薄いウイングで臨むことにしたものの、どうにもならなかった。


角田裕毅は「すごく変だった」と振り返る

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 それだけならば、まだ救いはあった。

 DRSの問題を解消して新型リアウイングを使えるようにすれば、次戦以降は元に戻る。実際のところ、中団トップでダブル入賞を果たしたアルピーヌとは0.3秒差でしかなく、見た目ほど大きな差があったわけではないのだ。

 しかし、問題はそれだけではないかもしれない。

 決勝ではさらに厳しい戦いを強いられ、角田はあまりのリア挙動の悪さに「間違いなくマシンがどこかおかしい」と訴えるほどだった。

 さまざまなセッティング変更をトライしていくうちにドツボにハマってしまったデフのセッティングをリセットしてみたものの、それでも状況は変わらず、問題はもっと別のところにあることがわかっただけだった。

「マシンが完全におかしいとは感じたんですけど、ダニエル(・リカルド)のクルマがどうだったのかはわかりませんし、何が起きていたのかもまったくわかりません。チームからフィードバックを受けて、ステアリング上のスイッチ操作で対応はしたんですけど、完全には直らなかったですね。すごく変でした」

 角田車ほどではなかったものの、リカルド車も同じような方向ではあったという。つまりマシン固有の問題ではなく、今週末のバルセロナに対してRBが用意できた最大限のマシンがこれだったということだ。

【4日間でどこまで立て直すことができるか】

 リアウイングの仕様が最適でなかったことがこうした事態を招いたのか、それとも今回投入したアップグレードに問題があったのか、それとももっと別の要因か。アップグレード自体はデータ上、想定どおりに機能しているというが、どこかに見落としや使いこなせていない部分はないのか。それとも、FP1でつまずいたことでその後の対応が遅れ、最適なセットアップを見つけきれなかったのか。

「やれるところまでやりたかったんですけど、ペースが全然なかったので......不完全燃焼なのかどうなのかもよくわからないまま、終わってしまいました」

 自分の力を出しきることすら叶わないマシンに、角田は唇を噛んだ。

 これまで中団トップを走り続けてきただけに、今回の急降下にはチームもショックを隠しきれない。

 もちろん、中国GPでも同じような状況に陥り、その次のマイアミGPでは見違えるようなパフォーマンスを発揮したことから、サーキット固有の問題とも考えられる。アップデートすら持ち込んでいないアルピーヌが急に躍進したり、アストンマーティン勢が入賞圏に絡むことすらできなかったり、ウイリアムズはRB以上の低迷を喫したりと、今週末のスペインGPではいつもとは違う何かが起きていた。

 昨年サーキットが大幅改修されたことで、これまでとは違う速度域、求められる空力効率点の違いがそうさせているのか、詳しいことはまだわからない。

 いずれにしても、ここバルセロナでのアップグレード投入とそれによる躍進をもとに、次のレッドブルリンクで似たような中高速コーナーでの速さを発揮してさらなる躍進を期待していたRBとしては、その目論見が大きく外れたことになる。

 インターバルはたったの4日。その間にどう立て直すことができるのか。チームとしての真価が問われる局面がやってきた。