スーパーバンタム級でも軒並み強敵を倒している井上。その強さから階級上げを求める声は尽きない。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext  ボクシング界で異彩を放っている井上尚弥(大橋)の行く末は…

 

スーパーバンタム級でも軒並み強敵を倒している井上。その強さから階級上げを求める声は尽きない。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 

 ボクシング界で異彩を放っている井上尚弥(大橋)の行く末は、世界から熱視線が注がれている。ゆえに当人の言葉は関心を集める。

 去る6月8日に井上は、米ニューヨークの“聖地”マディソン・スクエア・ガーデンで行われている興行中に公開となった米スポーツ専門局『ESPN』の番組に出演。今後のキャリアについて問われた中で一部で囁かれるフェザー級への階級上げについて「上げるべき時が来たら、そういう案も考えている。しっかりとフェザー級の身体というものになった時に考えます」と語った。

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 ひとつの負けがキャリアに大きな影響を及ぼすボクシング界。その中で井上の自分の“ベスト”が出せなければ、階級は変えないという考えは不変である。

 すでにスーパーバンタム級のタイトルを総なめにした背景から、「敵なし」として一部メディアで大きな関心を集めたフェザー転級。しかし、井上は期待を寄せる周囲とは裏腹に、早々と駆け上がる可能性を巧みに否定した。

 階級制の難しさを熟知しているからこその判断。この理想を求める姿勢に賛同する元世界王者もいる。IBF世界スーパーライト級、WBA世界ウェルター級の2階級を制したポール・マリナッジ氏(米国)だ。

 自身がレギュラーを務める米メディア『ProBox TV』のYouTube番組でマリナッジ氏は、井上の現況について「いずれはフェザー級に行くだろうと思う」と指摘。そのうえで「ただ階級を上げる、あるいは上げろという絶え間ない圧力は止めるべきだ」と続けてみせた。

「これがボクシング界でパフォーマンスを向上させる薬物が蔓延している最大の理由の1つだ。この男(イノウエ)がスーパーバンタム級まで到達して王座を獲ると、すぐに人々は次の階級で何をするかという話をする。結局、そうなると薬物をやっていない限り、選手は周囲の期待についていけなくなるんだ」

 強い言葉で軽率な“階級上げ論”に警鐘を鳴らしたマリナッジ氏は、「イノウエがフェザーでどうなるのか? もちろんいずれは進むと思う。ただ、彼がバンタムからスーパーバンタムにすぐに移った時のように、すぐに階級が上げるべきとは言えない。もう少しゆっくりしたペースで、少しずつ体重を上げていくことになると思う」と強調。井上の考えを慮っている。

 無敗の快進撃を続けている井上。その強さを維持するための決断に理解を示す声は、増えている。

 

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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