【石川祐希、髙橋藍が躍動】 バレーボールの国際大会「FIVBネーションズリーグ2024(以降、VNL)」の男子大会は予選ラウンド第3週が6月18日から始まり、日本代表は戦いの舞台をマニラ(フィリピン)に移す。福岡での予選ラウンド第2週には石…

【石川祐希、髙橋藍が躍動】

 バレーボールの国際大会「FIVBネーションズリーグ2024(以降、VNL)」の男子大会は予選ラウンド第3週が6月18日から始まり、日本代表は戦いの舞台をマニラ(フィリピン)に移す。福岡での予選ラウンド第2週には石川祐希と髙橋藍の両エースが合流し、4試合を3勝1敗(トータル6勝2敗)。世界の頂点への歩みはここからさらに加速する。


福岡大会を3勝1敗で終えた男子バレー日本代表

 photo by Yukihito Taguchi / CB,Ltd.

 パリ五輪を前に、男子日本代表が自国のファンにプレーを披露する最後の場となったVNL福岡大会。会場の西日本総合展示場は連日超満員となり、特に日本戦では8000人近くの観客が大声援を送った。熱気は会場だけにとどまらず、最寄駅の小倉駅周辺には赤色をベースにした日本代表の応援Tシャツを着た人たちの姿も多く、町中がまさに"日本バレー"一色に染まった。

 大会の運営にも趣向を凝らしたものが見られた。小倉駅では階段一面に大会の巨大ポスターが貼られ、ちょっとしたフォトスポットに。また、会場に隣接する汐風公園は日本代表応援グッズ販売のほか、パブリックビューイングも実施されて日中から観戦する人たちでごった返していた。

 そして何より、訪れた人たちの心を踊らせたのが"FAN ZONE"なるエリアだ。これは、アリーナのある会場からサブコートが設けられている別館までの通路が開放され、そこを行き来する選手たちとファンが交流できるというもの。もちろん柵は設けられているが、日本も含めた各国代表のトップ選手たちがサインや自撮りなどに快く対応し、ファンの歓喜の声が響いていた。

 そんななかでの日本男子チームの大きなトピックスは、やはり石川と髙橋の合流だった。

 ふたりは4月いっぱいまでイタリアでクラブシーズンを戦っていたこともあり、VNLの第1週は休養に充てられた。ただ、チームはその第1週を3勝1敗と勝ち越し。唯一の黒星は強敵イタリアに喫したものだったが、試合では宮浦健人がチーム最多20得点と奮闘。また、20歳の新鋭アタッカー甲斐優斗が積極的にスタメンで起用されるなど、チームの底上げが図られた。

 迎えた第2週の初戦(6月4日)ではイランと対戦。試合後に「最高の雰囲気でプレーできた」と語った主将の石川は、豪快なバックアタックに加え、鋭いサービスエースを突き刺すなどチーム最多14得点をマーク。「まだまだ試合勘が戻っていない」と振り返るも、24年度の代表活動スタートの挨拶がわりとして十分なパフォーマンスを見せた。

 一方の髙橋も「攻撃では常に高さを意識しながら、ブロックの指先を狙ったり、シャットされないことを気をつけた」と巧みなアタックを繰り出し、こちらも14得点。イタリアで揉まれてきた経験を日本代表でも発揮した。

【レベルが高いパリ五輪メンバー争い】

 その後も両エースは存在感を発揮したが、第2週で光ったのは彼らだけではない。オポジットの西田有志は、フルセットにもつれたドイツ戦(6月5日)で石川と並ぶ21得点、最後のスロベニア戦(同8日)では4本のサービスエースを含む26得点と大活躍。いずれもチーム最多の数字だった。特にドイツ戦では、石川のパフォーマンスがやや低調だっただけに、より西田のプレーは頼もしかった。

「(石川と髙橋が)すばらしい選手であることは言うまでもないですし、ふたりが苦しくなった時に僕が助けられる存在として、その先頭を走っていけたらいいなと思います。今の日本代表はふたりだけのチームではない。試合に臨むメンバーの全員が、日本バレーボール界におけるトッププレーヤーだと思うので、その存在価値をもっともっと見出せるようになっていかなければと考えています」

 そう語る西田の言葉からは、日の丸をつけて戦う者の責任とプライドが滲み出ていた。

 同時に、パリ五輪のメンバー選考という点において、各ポジションで激しい火花が散った。リベロは小川智大と山本智大が日替わりで起用され、ともに猛烈アピール。ドイツ戦では山本がノータッチも含めてサービスエースを許す場面もあったが、石川や髙橋らが合流して間もないことを考慮すれば、連係面は改善の余地もあるためそこまで問題ないだろう。

 アウトサイドヒッター陣も甲斐が出場機会を獲得する一方で、富田将馬と大塚達宣が併用された。12名プラス補欠1名という数少ない五輪メンバーの枠を巡る争いはレベルが高く、フィリップ・ブラン監督を最後まで悩ませるだろう。

 VNL終了からパリ五輪までのタイトなスケジュールを考慮すると、いずれは選手たちのコンディション調整を優先することも必要だ。とはいえ、チームの強化を緩めるわけにはいかない。福岡大会を終えたあと、石川はこう語った。

「時間があるようでない。どれだけ完成度を高められるか。ピークは絶対にパリなので」

 VNLは予選ラウンド第3週、そしてファイナルラウンドへと続く。パリ五輪でのメダル獲得へ向けた調整はいよいよ最終局面を迎える。