井上のパワーに圧倒されたフルトンが、この苦々しい記憶を振り返っている。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext  真夏の日本に味わった“苦い経験&r…

 

井上のパワーに圧倒されたフルトンが、この苦々しい記憶を振り返っている。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 

 真夏の日本に味わった“苦い経験”をいかに活かすか。元世界王者の真価を問われている。

 昨年7月に井上尚弥(大橋/現スーパーバンタム級4団体統一王者)に敗れ、王座から陥落したスーパーバンタム級前WBC&WBO王者のスティーブン・フルトン(米国)は、来る8月10日に米ラスベガスでロニー・リオス(米国)との一戦でようやくリングに復帰する。当初はWBA世界フェザー級6位のルイス・ヌニェス(ドミニカ共和国)との試合が6月開催で予定されていたが、相手の負傷離脱で延期に。紆余曲折を経て、ようやく新階級での初陣を迎える目途が立った。

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 思い返せば、井上との試合は完敗だった。当時WBC&WBOの2団体統一王者として絶対的存在感を誇っていたフルトンだったが、序盤からモンスターがリング上で圧倒。終始主導権を握られたまま、疲労の色が濃くなっていた8回に右ストレートと左フックを被弾し、崩れ落ちた。

 プロキャリアで初黒星を為す術なく喫したフルトン。井上に刻み込まれた複雑な思いは今も消えてはいない。米老舗誌『THE RING』のインタビューで「あの試合から俺は多くのことを学んだ」と回想している。

「もっと一生懸命に練習すべきだった。それ以外のことはあまり言いたくない。ただ考え方が変わったと思うし、自分の武器が増えた。でも、俺は乗り越えたよ。そのことについて話すことにはすっかり慣れている。誰もが何を言っているのかわからないシナリオを押し付けてきた。とにかく俺はスーパーバンタム級の身体を作るために自分を殺していた」

 さらに「イノウエに対してとやかく言うつもりはない。あいつは正々堂々と勝ったんだ。素晴らしいファイターだし、俺にチャンスを与えてくれた」とも語る29歳は、「ただ、俺はもっといい戦いができたと思うから、自分に腹が立った」と強調。そしてひとつ階級を上げての挑戦に自信を見せる。

「俺にとって今年は大事な年だ。俺は3階級での世界王者になるつもりだ。イノウエ戦でも感じていたけど、俺を止められるのは俺だけだ。もっとハードなトレーニングや努力をすることもできたはずだが、今さらこぼれたミルクのことで泣いても意味がない。俺は厳しい環境に足を踏み入れて、また頑張る準備はできている」

 すでにフェザー級WBA1位にランクされているフルトン。来る8月のリオス戦次第では、世界王座戦の可能性も膨らむだけに、目に見える結果が望まれる。

 

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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