井上という世界最強の猛者を前に堂々と振舞い続けるキャリントン(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext 目下、27戦無敗(24KO)という圧倒的な戦績を残し、敵なしの強さを誇る…

井上という世界最強の猛者を前に堂々と振舞い続けるキャリントン(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 目下、27戦無敗(24KO)という圧倒的な戦績を残し、敵なしの強さを誇る井上尚弥(大橋)。アジア人史上初にして、世界2人目となる2階級での4団体統一という偉業もやってのけた“怪物”の存在感は日増しに強まる一方である。

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 ゆえに井上と拳を交わそうとするべく、挑戦を申し出るライバルは少なくない。その大半はモンスターの功績を軽んじるような挑発的なものばかりで、対戦することで生じる巨額のファイトマネー目当てと言われても致し方のないような“煽り”の感が否めない。

 そうした井上への“アピール合戦”の中で一線を画すのが、フェザー級WBO4位につけるブルース・キャリントン(米国)だ。

 実力は確かだ。21年にプロ転向を果たした27歳は、12戦無敗(8KO)と好成績を記録。現地時間6月8日に行われたフェザー級10回戦で、ブラヤン・デ・グラシア(パナマ)に8回TKOで勝利。観戦に訪れていた井上の眼前でポテンシャルを発揮した。

 試合後にリングサイドにいた井上にお辞儀をしたキャリントン。彼の「打倒・モンスター」に対する想いは特別なものがある。デ・グラシア戦を前に英衛星放送『Sky Sports』の取材に応じた際に「自分がこれから何年も注目される男であることを証明し続けたいんだ」と漏らした27歳は、犯罪行為が横行するニューヨーク市ブルックリン東部のブラウンズビル地区出身であるという特異な生い立ちを語っている。

「俺が初めて人が殺されるのを見たのは、5、6歳の時だった。あんなことを目の当たりにするなんて、どうかしていると今でも思う。気づけば、銃声で目を覚ましたりするようになった。それでタフになった。俺の周りには支えとなる人たちがいた。彼らは道を外れそうになった俺を何度も何度も説得し、成功できる人間なんだと信じさせてくれたんだ」

 周囲の支えもあり、複雑な環境から這い上がったからこそ、大物と対峙することで成功を掴めると信じている。キャリントンは「イノウエは最強として知られているし、文句なしのチャンピオンだ。だから戦いたいんだ」と強調する。

「俺は野心家だ。だから彼のキャリアを狂わせることができる男だと信じている。もちろん、彼に対するリスペクトの上で話している。俺は執拗に追い詰めるタイプじゃないし、彼がいようといまいと、自分のキャリアは変わらないと思っている。

 あくまで俺はファイターとして成功するつもりだから、対戦の可能性にあまり重きを置きたくない。でも、何度も言っているけど、ブラウンズビルの人間は決して逃げない。俺もそうだ。もし実現するならやりたいね」

 将来的なフェザー転級も囁かれている井上。その際にキャリントンが獲得を熱望する世界タイトルを手にできていれば、“待望の一戦”は実現するかもしれない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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