得意のカットインから先制弾を叩き込んだ中村敬斗は間違いなくミャンマー戦の主役だったが、5バックのミャンマーに対して、3…
得意のカットインから先制弾を叩き込んだ中村敬斗は間違いなくミャンマー戦の主役だったが、5バックのミャンマーに対して、3ー4ー2ー1の左ウイングバックに位置する中村が、高い位置で前向きに仕掛けたり、フィニッシュに絡めるように、流れの中で4ー2ー3ー1のようになる可変性の高いオーガナイズで、もう一人のキーマンが堂安律だった。
先制点のシーンでは守備で、右サイドのボール奪取に貢献したところから守田英正、旗手怜央、鎌田大地、左の中村と繋ぐ間に、逆サイドからゴール前に走って、1トップの小川航基とともにミャンマーのディフェンスを分散させた。
結果的にボールには触らなかったが、中村が折り返しのクロスを入れてくれば勢いよく飛び込んで合わせていた可能性は高い。このシーンでは左シャドーの鎌田が中盤まで引いていたこともあり、堂安がオフで走り込むのは”森保ジャパン”の約束事と言っていい。
■堂安律の得点を可能にしたもの
その堂安による追加点は前半34分にもたらされた。1ー0になっても5ー4ー1のブロックを崩さないミャンマーに対して、日本は全体を押し上げてボールを保持していた。そこから左センターバックの伊藤洋輝が、左外の中村に開くと見せかけて、縦にスルーパスを送る。それに反応した中村がエイン・ピョー・ウインの背後を取り、カバーに来たセンターバックのソー ・モー ・チョウも内にかわして、ペナルティエリア中央の鎌田にグラウンダーのパスを通す。
1トップの小川にディフェンスが引っ張られたことで生じたスペースで、前を向いた鎌田が反転しながら右足を振り抜くと、GKチョウ・ジン・ピョーを破ったシュートはゴールポストを直撃。
しかし、跳ね返ったボールに素早く反応した堂安が左足で流し込んだ。伊藤から中村に縦パスが出た時点で、堂安は右サイドの後ろめにポジションを取っていたが、中村が左から抜ける流れで生じた逆側のポケットを逃さず、フリーで小川の右側まで走り込んでいる。
中村からボールを受けた鎌田がシュートに持ち込む時点では、小川が右に流れて鎌田のシュートコースを作ったことで、堂安の方が内側になったが、左でチャンスを作る間に、相手ディフェンスの死角となる反対サイドからゴール前に走り込むという狙いが、シュートのリバウンドを押し込む形でのゴールに還元されたわけだ。この堂安の動きを可能にしたのは右ウイングバックの菅原が大外で、ズヴェ・テッ・ミンを引き付けていたからでもある。
■左寄りだった日本代表の攻撃
ミャンマー戦のメンバーは試合前の予想で、左のボランチに入ると見られていた鎌田がシャドーで中村をサポートする形になり、むしろ旗手がボランチのポジションを取るオーガナイズだった。その分、攻撃が左寄りに。どこまで森保監督の意図したものかは分からないが、左から中村が仕掛けて、右からは堂安が”裏のストライカー”としてゴール前に顔をだす仕組みは興味深い。
さらに相手が強くなってくると、ビルドアップに対するプレッシャーが厳しくなるので、ここまで絵に描いたような形は難しいし、逆にもっと右側から仕掛けることも必要だろう。ただ、左ウイングバックの中村がこれだけ高い位置で、攻撃的に振る舞うためのベースとして、菅原由勢や堂安といった右側の選手が、縁の下の力持ちになる必要があった。
試合の終盤には相手の守備も間延びする状況で、中村を左シャドーに出して、前田大然と相馬勇紀を左右ウイングバックで起用するなど、異なる組み合わせもテストしながら5−0という結果で終えた。ここからメインオプションとして、3バックが継続的に使われていけば、別の組み合わせでもトライすることになるはず。
それこそカタールW杯のドイツ戦で見せたような左右ウイングバックにサイドアタッカーを置く”ファイヤー型”も見られるかもしれないが、組み合わせによるバリエーションの面白さというのは今後の”森保ジャパン”を観ていく1つの楽しみな要素になることは間違いなさそうだ。まずは広島でのシリア戦でも3バックを使うのか、どういった組み合わせになるのか注目したい。
(取材・文/河治良幸)