MLBの各チームの残り試合数は40を切り、レギュラーシーズンは終盤に差し掛かっている。プレーオフ圏内のチームがラス…

 MLBの各チームの残り試合数は40を切り、レギュラーシーズンは終盤に差し掛かっている。プレーオフ圏内のチームがラストスパートを目論む中、ポストシーズン進出が難しくなったチームは、早くも来季に向けての準備を整え始めている。



20日のメッツ戦で、メジャー歴代40位となる2602試合出場を果たしたイチロー

 ナショナル・リーグ東地区の4位で、ワイルドカード争いでも12位に沈むメッツは、この1カ月の間にジェイ・ブルース、カーティス・グランダーソン、ニール・ウォーカー、ルーカス・デューダといった実績あるベテランを次々と放出した。

 一方で、8月18日からのメッツとの3連戦を2勝1敗で勝ち越し、ワイルドカード獲得まで6.5ゲーム差(5位)に迫ったマーリンズは、判断の難しい位置にいる。プレーオフ進出への望みを残してはいるものの、球団の身売り問題でチームの周囲は揺れ続けているのだ。

 8月11日、実業家のブルース・シャーマンと元MLBのスーパースターであるデレク・ジーターを中心とするグループが、マーリンズを買収することで合意したことが報道された。譲渡額は12億ドル(約1300億円)。これが正式に決まれば、ジーターが編成部門のリーダーになり、チーム作りを担当すると見られている。チーム創設から24年のうち18年のシーズンで負け越してきた”弱小球団”は、ようやく新時代へと足を踏み出すことになった。

 新生マーリンズは、まず主砲ジャンカルロ・スタントンの処遇という難しい決断を迫られることになる。スタントンは8月20日までの16試合で12本塁打と大爆発して、ここまでメジャートップの45本塁打を放つなど好調だ。しかし、2014年11月に結んだ13年3億2500万ドル(約377億円)という途方もない契約がチームに重くのしかかっている。

「それぞれのチームに適した給料総額がある。ひとりの選手の給料がペイロールの半分を占めてしまうようなら、チームは編成できない」

 メッツとの3連戦中、ドン・マッティングリー監督はそんな言葉を残した。マーリンズの今季の給料総額は1億1870万ドル(約130億円)。単純計算するとスタントンの年俸は約29億円で全体の半分まではいかないが、約4分の1を占めているとなれば、放出が話題にのぼるのは当然かもしれない。

 新体制でのチーム作りに臨むにあたり、巨額の契約を残したスタントンをトレードに出して新しい方向に向かうべきか、パワーというわかりやすい魅力を持つ彼を看板に据え続けるべきか。ここでどんな選択をするかで、ジーターが理想とする球団のビジョンが見えてくるだろう。

 また、スタントンほどではないものの、イチローの来季の契約にも注目が集まっている。昨季オフに1年200万ドル(約2億600万円)でマーリンズと再契約を交わしたが、2018年の契約は追加オプションとなっており、球団の判断に任されている。イチローを高く評価している現オーナーのジェフリー・ローリアはまもなくチームを去ることになるため、10月に44歳を迎えるMLB最年長野手のオプションがピックアップされるかどうかは定かではない。

 今季のイチローは、6月中旬まで打率が2割にも満たなかったが、オールスター以降は打率.307(39打数12安打)と復調。代打ではメジャートップの20安打を放ち、適応能力の高さをあらためて印象づけている。1995年にロッキーズのジョン・バンダーウォールがマークした、代打でのシーズン最多安打記録(28本)への到達も不可能ではなく、依然としてメジャーでチームに貢献できる力を保っている。

 外野の3つのポジションを守ることができる点も、大きなプラス評価になるだろう。また、メッツとの3連戦でも代打で登場するたびに敵地のファンから大歓声を浴びていたように、知名度や人気は健在。不人気球団のマーリンズが、あと1年はそのスター性の恩恵に預かろうとしても不思議はない。

 ただ、今のイチローはチームにとって”不可欠な選手”には見えない。今季の長打率.313は一昨年に次ぐ自己ワースト2位。代打で出ても相手に「怖さ」や「いやらしさ」を感じさせる打者ではないため、マーリンズがイチローとは違うタイプの控え選手を欲しがる可能性はある。新体制に移行するなら、現役最年長野手を手放し、よりフレッシュな陣容に変えるのが自然な流れなのかもしれない。

 ともあれ、すべてはマーリンズの新たな首脳陣の考え方次第。”キャプテン”ジーターが本当にチーム作りのカギを握ることになったとしても、フロントでの現場経験はないだけに、どんな手腕を見せるのかを読むのは難しい。

 ヤンキース時代の同僚だったスーパースターに、イチローの去就が委ねられることになれば運命的なものを感じる。これまで盛んにイチローへのリスペクトの想いを述べてきたジーターに、再契約を拒まれるという皮肉な結末を迎えることも十分に考えられる。どんな結果が待ち受けようと、マーリンズとイチローにとってドラマチックなオフシーズンとなることは間違いない。