■チーム打率.304、1試合平均6得点の打力を支えた守備  早大は2日、東京六大学野球春季リーグの慶大2回戦で打線が19安打を浴びせ、12-2で大勝。2020年秋以来7季ぶりのVを、他の5大学全てから勝ち点を奪う“完全優勝”で飾った。通算…

■チーム打率.304、1試合平均6得点の打力を支えた守備

 早大は2日、東京六大学野球春季リーグの慶大2回戦で打線が19安打を浴びせ、12-2で大勝。2020年秋以来7季ぶりのVを、他の5大学全てから勝ち点を奪う“完全優勝”で飾った。通算では法大を抜き、リーグ単独最多の47回目の優勝となった。

 3-2とリードして迎えた5回には、今季打率.479でリーグ首位打者に輝いた尾瀬雄大外野手(3年)が右翼席へソロアーチを描いたのを皮切りに、1イニング7安打6得点の猛攻。一気に試合の大勢を決した。

 シーズンを通してリーグトップのチーム打率.304、1試合平均6得点の破壊力を誇った。それでも小宮山悟監督は「ディフェンスで勝ったと思っています。守りに関しては『できて当たり前』と厳しく注文をつけ、厳しく指導してきた賜物かなと思います」と強調する。

2020年秋以来7季ぶりのVを決めた早大【写真:加治屋友輝】

 確かに、チーム防御率1.57もリーグトップで、失策も12試合で4つ。主将で4番の印出太一捕手(4年)は「守備からの流れを大事にしてきました。“ピンチのあとにチャンスあり”という言葉がありますが、相手に点を取られそうなところで投手陣が踏ん張ってくれたので、いいムードで攻撃に移ることができました」と振り返った。

 象徴的だったのは、開幕前に有力な優勝候補と目されていた法大との2回戦(5月19日)。2-0とリードして迎えた9回の守りだ。無死一塁から、中前に落ちそうな打球に尾瀬がダイビングしダイレクトキャッチ。さらに次打者の打球も、三遊間を襲う痛烈なゴロだったが、遊撃の山縣秀内野手(4年)は逆シングルで際どく捕球すると、スライディングしながら二塁へ送球し、一塁走者を刺した。美技連発で難敵から勝ち点をもぎ取った。

 印出は「小宮山監督は昨年の冬から今春の沖縄キャンプ(2月29日~3月17日)にかけて、『捕れる打球をいくら捕ってもしょうがない。捕れない球を捕れるようにするための練習をしないといけない』とおっしゃっていました。特に山縣は内野のリーダーとして積極的に特守に取り組み、飛びつき食らいつく姿勢を後輩たちに見せてくれていました」と明かす。「チーム全体として守備範囲の拡大、球際の強化を意識してきて、だいぶ実現できたと思います」と勝因に挙げた。

試合前に印出主将を中心にミーティングする早大選手【写真:加治屋友輝】

■ロッテ時代の背番号にちなみ14回宙を舞うも「選手権で優勝したら30回」

 小宮山監督自身は現役時代に早大で主将兼エースとして鳴らし、プロ野球のロッテ、横浜(現DeNA)、MLBのメッツでも活躍した。しかし当時とは違い、体罰はもちろん、頭ごなしにきつい練習を課すわけにはいかない時代だ。

「選手がやりたいようにやることが理想です。度が過ぎて故障につながりそうな時にブレーキをかけてあげるのが、われわれ大人の仕事だと思っています。彼ら自身に、強くなるために存分に努力してもらえればいい」とした上で、「ただし『俺に言わせれば、そんな程度では努力とは言わないぞ』という話です」と釘を刺す。優勝という結果に行きついてもなお、「まだ物足りない。まだやれるはず。勝ちたいのなら、やりなさいと言いたい」と高いハードルを課す。

 尾瀬が「普段、監督にはほめられたことがない」と苦笑すれば、印出は「監督がまだまだとおっしゃる限り、自分たちは食らいついていくだけです」と語気を強めた。強制はしないが、そう簡単に満足もさせない。小宮山監督の選手操縦術の秘訣は、このあたりにあるのかもしれない。

優勝決定後、ロッテ時代の背番号14にちなんで14回宙を舞った早大・小宮山監督【写真:加治屋友輝】

 優勝決定後、小宮山監督はナインの手で胴上げされ、ロッテ時代の背番号14にちなんで14回宙を舞った。指揮官は10日に開幕する全日本大学野球選手権へ向け、「今の俺の背番号は30ですから、選手権で優勝したら30回やれるように、今から腕立て伏せをしておいてほしい」とジョークを放った。

 一方、「まだリーグ優勝に過ぎない。選手権で監督を日本一の男にして、正真正銘の胴上げをしたい」と泣かせるセリフを吐いた印出は、「今日も10回を超えたあたりから腕が痛くなったので、さすがに30回は無理です。高さを増してカバーします」と笑った。あくなき向上心を求める厳しさの中にも、無邪気な明るさがうかがえた。