2024年5月25日(土)〜26日(日)の2日間にわたり、静岡県牧之原市静波にある静波サーフスタジアムにて「第3回静波パラサーフィン JAPAN OPEN」が開催された。大会に先立ち、5月11日(土)には身体に障がいを持つサーフィン未経験者…

2024年5月25日(土)〜26日(日)の2日間にわたり、静岡県牧之原市静波にある静波サーフスタジアムにて「第3回静波パラサーフィン JAPAN OPEN」が開催された。大会に先立ち、5月11日(土)には身体に障がいを持つサーフィン未経験者や地元小学生を対象にした初心者向けの体験会が行われ、本大会を含めた今年の『第3回静波パラサーフィンフェスタ』の幕が上がった。

JAPAN OPEN当日の25日と26日には、サーフスタジアム駐車場を使いパラサーフィンを応援するマルシェ『パラマル』も併催し、音楽やダンスの披露を始め、ハンドメイド雑貨やキッチンカーと多くのマーケットが出店され、来場者とパラアスリートが時間を共有し交流を深める機会となった。

「静波パラサーフィン JAPAN OPEN」とは?

今年で3回目となるこの「静波パラサーフィン JAPAN OPEN」は、「ISA World Para Surfing Championship (以下:WPSC)」や「Association of Adaptive Surfing Professionals (以下:AASP)」のツアーには紐付けされていないものの、パラサーフィン日本代表選手を含む世界5か国から多くのパラサーファーがエントリーする国際大会である。今年は日本・アメリカ(ハワイ含む)・オーストラリア・カナダ・イギリスから約50名の世界トップパラアスリートがここ静波に集結。今年から女性アスリートもエントリー可能となり男女混合でアツい熱戦を繰り広げた。

生まれつきや事故などによって、身体に障がいを持っている方が行うパラサーフィンでは、さまざまな身体的個性を持ったサーファーが計9種類のクラスに分かれ、オリジナルのスタイルでサーフィンを演技し得点を競い合う。この9種類のクラス分けはISAでも採用されスタンダードになっており、予選はレフト・ライト3本づつ計6本・決勝では2本づつ計4本で争われ、採点基準はISAが定めた国際ルールであるスピード・パワー・フローに加え、各選手のスタイルも加点のポイントとなった。

クラス分類

多くのパラアスリートが2日間の熱戦を繰り広げられた。

・Stand 1 (スタンド1)Stand1 加藤真吾のライディング

決勝の4名は世界で戦う選手が出揃い、ハンティントンで昨年行われたWPSCのStand1クラスで2位と世界でも結果を残すほどの実力者の加藤真吾がキレのあるリップアクションを重ね、エクセレントポイントをメイクし9.00ptと5.60ptでトータル14.60ptとし見事連覇達成した。

2位の近藤健太郎はレフト方向ではトップをキープしていたものの、3本目で加藤に逆転を許し、ニード6.77ptまで迫るもあと一歩及ばず。島川幹生は3本目に際どいターンをみせ7.90ptと高得点をマークするもバックアップスコアを伸ばせず3位となった。

5年前にサーフィンを本格始動したという池上凪は深いボトムターンからリップへと一気に駆け上がるアクションを得意とする選手。昨年のWPSCでは世界チャンピオンにも輝いたスーパールーキーだ。今回は4位に甘んじたものの、これからの国内外での活躍が期待される。

・Stand 2 (スタンド2)Stand2 伊藤建史郎のライディング

Stand2は健常者サーフィンと同様に自立して波に乗るクラス。このクラスではやはりボトムとリップアクションが評価のポイントとなる。ここでは経験豊富な伊藤建史郎がスピードとパワーで大きなマニューバーを描き、エクセレントポイントの9.50ptと7.67ptのトータル17.17ptと高ポイントでまとめ、2位以下の選手を大きく突き放し圧巻の演技で優勝を決めた。

・Stand 3 (スタンド3)Stand3 勝倉直道のライディング

勝倉直道は現在AASPツアーでオーストラリアの選手と同律首位をキープしており、両選手が次戦のコスタリカをスキップするため、グランドチャンピオンを賭けた戦いは9月のUSオープンでの決着となる。その為にもこのJAPAN OPENで優勝することで、グランドチャンピオンへと弾みをつけたいところだ。

その勝倉は良いポジションからテイクオフでスピードをつけ、エンドセクションまで乗り継ぎ4.33pt。最後4本目では片膝立ちからバレルを狙うもタイミング合わず惜しくもインコンプリートとなり2.33ptだったが、トータル6.66ptで見事優勝した。この調子でUSオープンに進みグランドチャンピオンの座を掴み取ることに期待したい。

JAPAN OPEN独自のカテゴリークラス

・OPEN(オープン)Open 高山剛のライディング

オープンクラスはパラサーフィン競技のクラス分け区分に属さない障がいを持った方がエントリー出来るJAPAN OPEN独自のクラス。決勝はCarter Parry (アメリカ – ハワイ)・高山剛・安田京弘・菊地翔万の4名の戦いとなり、地元牧之原市出身の高山が安定したKneelスタイルで13.27ptで初カテゴリーで優勝を飾った。

Monoが絶対王者の意地をみせ連覇

・Kneel (ニール)Kneel Mark Mono Stewartのライディング

決勝には、5度のISAワールドチャンピオンに輝いたVictoria Feige (カナダ)・Kneel界の絶対王者Mark Mono Stewart (オーストラリア)・ハワイ代表の実力者のJosh Bogle (アメリカ – ハワイ)・日本パラサーフィン界のパイオニア的存在のMasafumi Masa Kobayashi (日本)の4名。

昨年のJAPAN OPENで前人未到の20ptというパーフェクトポイントを叩き出したMonoは25日の予選でも圧巻のライディングをみせるも、プルアウトした波にもまれて左膝を痛め、そのまま予選途中で会場を離れたが、決勝日の朝にはいつものMonoスマイルで会場入りしてくれた。

そのMonoは肩の力が抜けたリラックスライディングが特徴だが、1本目からアクセル全開でレールtoレールで加速し、深いボトムから際どいリッピングを連発し8.00pt・8.27ptのトータル16.27ptで連覇を達成した。

最後に「全てのスポンサー・企業それからボランティアスタッフ、そして支えてきてくれた皆さん本当にありがとう。そして世界中へ行き日本をアピールしてくれているマサ、本当にありがとう!是非また応援してください。」と感謝喜びを語った。

・Sit (ウェーブスキー)Sit 辰巳博實のライディング

決勝は辰巳博實・Richard Julian (アメリカ – ハワイ)・Spike Kane (イギリス)の3名により競われた。Sitはパドルを持っての演技となるため、ライディングが他のカテゴリーよりも大きく迫力のある演技に期待が高まる。その反面、ボードに腹這いの状態からのテイクオフではないので、少し波とのタイミングが取りづらいらしく、どの選手も各方向1本目は苦戦している様子だった。しかし2本目にはレフト・ライトそれぞれの方向でしっかりリカバリーし、素晴らしいライディングをみせてポイントを更新した。

辰巳はレフト方向ではリードを許すもライト方向でスピードを保ちつつ、しっかりとしたターンにトップアクションで6.67pt・7.33ptのトータル14.00で優勝した。

・Prone (プローン1)Prone1 Parker Olenickのライディング

プローン1はParker Olenick (アメリカ合衆国)が良いラインに良いマニューバーを描き、波全体をボトムtoトップでパワーゾーンをうまく使いながら、まるでエアーを決めてくるのではと思うようなスピードでトップターンをしっかり2本メイクし、7.67ptと6.67ptのトータル14.34ptで優勝を決めた。

最後に『本当にたくさんの支援をありがとうございました。素晴らしい波にも乗れ、この週末は本当に楽しかった。また来年会いましょう!ありがとう!』と感謝を示した。

・Prone Assisted (プローン2)Prone2 藤原智貴のライディング

プローンには簡単に言えば、自身によるテイクオフか介助者によりプッシュしてもらうかでクラスが異なり、このプローン2では、板が波に刺さりそうな所での細かな体重移動とボードコントロールで勝敗が分かれる。

ここでは日本代表として世界を転戦している藤原智貴がボトムからのトップへのアクションでマニューバーを描く。3本目には綺麗なテイクオフから1ターン・2ターンと繋ぎ、最後のエンドセクションでは大きくカットバックも入れてギリギリのところまで波に乗り、できる事全てを足し切ったライディングで9.00ptをマークし、8.17ptと合わせて優勝を決めた。2位の生方も細かなコントロールでマニューバーを描くも逆転はできず敗退となった。

・Visually Impaired 2 (視覚障害2)Visually Impaired 2 Matt Formstonのライディング

VI1の選手は全盲であり、こちらのVI2は薄っすら光が見える程度の視覚度数3%という選手が出場するクラス。ここではMatt Formston (オーストラリア)が圧巻のライディングを披露し優勝した。前回大会優勝の藤崎滋も負けじと健闘するも2位で大会を終えた。

Mattはその視覚度にも関わらず、研ぎ澄まされた感覚で健常者同様の動きを披露。ボトムtoトップと素晴らしいライディングで14.00ptと高得点で優勝した。試合後、表彰式では『皆さんのお陰でここに立つことができました。マサをはじめ日本チームの皆さんありがとうございました。』と喜びの声を伝えてくれた。

今大会のベストライド

菊地翔万のライディング

今回のベストライドはオープンクラスにエントリーした菊地翔万のライディング。予選はレフト・ライト両方向の波を3本づつの計6本で争われたのたが、そんな中で1本・2本・3本と本数を重ねるたびに大きくなる声援が彼の力となり、ついに4本目にして人生初のロングライドをメイク。今大会最高得点のパーフェクト10ptをマークした。

会場が一体となり菊池自身はもちろんオーディエンスもストーク!サーフィンは波に乗りライディングするいわば個人競技なのだが、声援が選手にどれだけの力を与えるかを教えてくれたのではないだろうか。そしていま彼は自身と同じDS(ダウン症候群)サーファーを増やすべく活動もしており、来年はDSサーファーの仲間を引き連れて体験会へ参加することを楽しみにしている。昨年は体験会そして今年はJAPAN OPENの選手として出場。来年、再来年と今後の成長が楽しみな選手のひとりだ。

第3回静波パラサーフィンフェスタ閉幕の挨拶

一般社団法人 静波パラサーフィンフェスタ実行委員会 代表理事 松下貢汰氏

松下貢汰氏

「この第3回パラサーフィンフェスタは5月11日の体験会からスタートしました。ここではサーフィンであったり、このウェーブプールに初めて入る人のきっかけ作りの日になりました。

そして昨日と本日にわたり、第3回パラサーフィンJAPAN OPENを開催しました。ここではおそらく5月11日にきっかけを作った方々も来場していたと思いますが、選手たちのライディングを間近にみて夢を見られたのではと感じています。

また昨年から地元の小学校の生徒たちとも授業をしてきました。その生徒たちと応援うちわを作り、応援し合うこの空間が僕にとっても忘れられません。

今回もご協賛頂きました方々を含め約80社の協力団体が集まりました。この素晴らしいイベントを来年も再来年も続けていくために、是非引き続きご協力頂き、来年もまたここ静波でお待ちしております。本当に皆さま3日間ありがとうございました!」

大会結果

・Stand 1 (スタンド1)
1位 Shingo Kato (Japan)  14.60pt
2位 Kentaro Kondo (Japan)  14.06pt
3位 Mikio Shimakawa (Japan)  13.40pt
4位 Nagisa Ikegami (Japan)  12.77pt

・Stand 2 (スタンド2)
1位 Kenjiro Ito (Japan)  17.17pt
2位 Takaaki Koiso (Japan)  3.00pt
3位 Seiichi Yamamoto (Japan)  1.56pt
4位 Masatsugu Nishida (Japan)  No Ride

・Stand 3 (スタンド3)
1位 Naomichi Katsukura (Japan) 6.66pt
2位 Tetsuya Kaizuka (Japan) No Ride

・OPEN (オープン)
1位 Go Takayama (Japan)  13.27pt
2位 Carter Parry (United States)  10.50pt
3位 Kyohiro Yasuda (Japan)  10.17pt
4位 Shoma Kikuchi (Japan)  6.66pt

・Kneel (ニール)
1位 Mark Mono Stewart (Australia)  16.27pt
2位 Victoria Feige (Canada) 16.20pt
3位 Masafumi(Masa)Kobayashi (Japan)  15.64pt
4位 Josh Bogle (United States -Hawaii) 13.94pt

・Sit (ウェーブスキー)
1位 Hiromi Tatsumi (Japan)  14.00pt
2位 Richard Julian (United States -Hawaii) 8.50pt
3位 Spike Kane (United Kingdom) 6.00pt

・Prone (プローン1)
1位 Parker Olenick (United States)  15.84pt
2位 Daisuke Sakamoto (Japan)  7.43pt

・Prone Assisted (プローン2)
1位 Tomoki Fujiwara (Japan)  17.17pt
2位 Ryoma Ubukata (Japan)  11.50pt
3位 Hiroyuki Horikawa (Japan)  3.20pt
4位 Akihiro Nakao (Japan)  2.07pt

・Visually Impaired 2 (視覚障害2)
1位 Matt Formston (Australia)  14.00pt
2位 Shigeru Fujisaki (JAPAN)  1.17pt

イベント概要

イベント名称:第3回 ジャパンオープン
開催日程:5月25日(土)〜26日(日)
大会スケジュール:
5月25日 (土) JAPAN OPEN 3rd 予選
5月26日 (日) JAPAN OPEN 3rd 決勝
会場:静波サーフスタジアムPerfect SwellⓇ
(〒421-0422 静岡県牧之原市静波2220)
主催:一般社団法人静波パラサーフィンフェスタ実行委員会
協催:静岡県牧之原市、Nami-nications、サーフスタジアムジャパン(株)
参加団体:一般社団法人静波パラサーフィンフェスタ実行委員会・牧之原市・JAST (Japan Adaptive Surf Team)・ NSA (Nippon Surfing Association)・Onestep・スイングビーチホテル・榛原総合病院
後援:ふじのくにパラスポーツ推進コンソーシアム、一般社団法人ユニバ、NSA

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