UCI(世界自転車競技連合)認定の国際ステージレース「ツール・ド・熊野」第2ステージは、三重県に舞台を移し、国内屈指の山岳コースである「熊野山岳コース」で5月11日に開催された。青々とした緑と、水を張った千枚田を駆け上がる選手たちの姿がフォ…

UCI(世界自転車競技連合)認定の国際ステージレース「ツール・ド・熊野」第2ステージは、三重県に舞台を移し、国内屈指の山岳コースである「熊野山岳コース」で5月11日に開催された。青々とした緑と、水を張った千枚田を駆け上がる選手たちの姿がフォトジェニックで、多くのファンを持つ、大会を象徴するクイーンステージだ。

今年は最大の難所「札立峠」への上りが通行止めとなったため、コースが変更された。新たに「日本の棚田百選」にも選ばれた「丸山千枚田」を含む1周17.2kmの周回部分が設定され、熊野スカイパーク球場前をスタート・フィニッシュとし、周回に向かい、4周したのちにフィニッシュに戻る計107.7kmで競われる。





スタートフィニッシュから、タフなアップダウンが続く周回に向かい、4周回った後に、フィニッシュに戻る。非常に厳しいコースだ

スタートライン最前列には、第1ステージを制し、個人総合成績首位となったジョン・カーター(キャッシュ・バークップ)がイエローのリーダージャージを着用して立つ。カーターが所有するポイント賞首位のグリーンジャージは、岡篤志(JCLチーム右京)が、ヤングライダー賞首位のホワイトジャージは、ネリア・ムニエ ソー(NIPPO・EF・マルティーグ)がそれぞれ繰り上げで着用して走る。赤い水玉の山岳賞ジャージを着用するのは小林海(マトリックスパワータグ)だ。



山岳賞ジャージの小林海(マトリックスパワータグ)、個人総合首位のジョン・カーター(キャッシュ・バークップ)、グリーンジャージを着る岡篤志(JCLチーム右京)とホワイトジャージを着るネリア・ムニエ ソー(NIPPO・EF・マルティーグ)

リアルスタート直後から抜け出しを図る動きが起きるものの、厳しいアップダウンが繰り返される周回部分を控えているためか、前半は集団が大きく崩れることなく穏やかに進行していく。



レースが始まった



厳しい展開を懸念してか、目立った動きが生じない

レースは周回部分に差し掛かり、厳しいアップダウンを繰り返す中で、次第に選手が淘汰されていった。2回の周回を終えた時点で、先頭集団は30名ほどまで絞られていた。



集落の中を抜ける集団



苔むす巨岩の横を走り抜ける。このエリアには印象深い自然と人々の暮らしが広がっている



集団は次第に絞り込まれて行った

最後の4回目の周回に入ったところで、動きがあった。丸山千枚田の登りでクドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)が飛び出し、小林海(マトリックスパワータグ)が追従、2名が先行を始めたのだ。

JCLチーム右京が中心となって10名ほどが追走するも、ゲブレメディンと小林は40秒ほどの差をつけ、先行した。
アップダウン区間に入るとゲブレメディンが抜け出し、30秒差をつけて単独先行を始めた。メイン集団からの追走集団が生まれ、小林を吸収、そのまま差を少しずつ縮めていき、ラスト10kmを切ったところでゲブレメディンに追いついた。



先行していた2名からクドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)が抜け出し、先行

その直後、山本大喜(JCLチーム右京)が飛び出し、単独先行を始める。前日3位でレースを終え、個人総合でも3位に位置する山本大喜の動きは容認されるはずがなくラスト500mで後続集団が飲み込んだ。
レースの行方は、上りのスプリント勝負へ。ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)が抜け出し、その後ろにベンジャミ・プラデス(スペイン)がピタリと着く。加速する二人だったが、プラデスの勢いが勝り、カバナをかわすと、プラデスはそのままフィニッシュへ向かった。ここで後部からスルスルと加速してきたのは、レオネル・キンテロ(ヴィクトワール広島)だ。キンテロはカバナを抜き去りプラデスに迫る。この2名に食らいつこうと懸命に走るカバナ。



フィニッシュを前に先行するベンジャミ・プラデス(スペイン)にレオネル・キンテロ(ヴィクトワール広島)が迫る

プラデスは全力で加速しながら、振り返り、フィニッシュに飛び込むと両手を上げてガッツポーズ。チーム右京時代に上げた2015年の勝利以来、9年ぶりとなる熊野山岳コースでの優勝を決めた。2位にキンテロ、3位にカバナが入った。



逃げ切ったプラデスがガッツポーズで優勝を決めた

リーダージャージを着たカーターは32位でフィニッシュ、8分以上遅れてしまった。この結果を受け、4位に入った岡篤志(JCLチーム右京)が総合首位に浮上した。



優勝したプラデス、2位のキンテロ、3位のライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)



個人総合首位は岡篤志(JCLチーム右京)に移った

ポイント賞はカーターが守った。山岳賞は、この日4回設定されていた中の3回を首位通過した小林海が守り、最終ステージには山岳賞の設定がないため、小林は最終ステージを完走さえすれば、大会の山岳賞を獲得できることになった。ヤングライダー賞は山口瑛志(レバンテフジ静岡)の手に移っている。
プラデスは「優勝できて非常に幸せ!」と喜びを語った。「たくさんの有力な選手がプロトンにいて、終盤はアタック合戦が繰り広げられて、非常に難しいレースだった。しかし最終的にチャンスがやってきて、なんとか勝利を掴むことができた」とコメント。最終日に向けての高いモチベーションを語った。
翌3日目は、最終ステージとなる「太地周回コース」。個人総合成績は、10秒差の中に、16名がひしめき合い、逆転の可能性も大きい。最後にリーダージャージを着るのは、どの選手になるか__。

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【結果】
ツール・ド・熊野2024 第2ステージ・熊野山岳(107.7km)
1/ベンジャミ・プラデス(VC福岡)2時間44分39秒
2/レオネル・キンテロ(ヴィクトワール広島)+0秒
3/ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)
4/岡篤志(JCLチーム右京)
5/クドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)

【個人総合時間賞(第2ステージ終了時)】
1/岡篤志(JCLチーム右京)5時間39分35秒
2/山本大喜(JCLチーム右京)+5秒
3/クドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)+6秒

【ポイント賞(第2ステージ終了時)】
ジョン・カーター(キャッシュ・バークップ)26p

【山岳賞(第2ステージ終了時)】
小林海(マトリックスパワータグ)39p

【ヤングライダー賞(第2ステージ終了時)】
山口瑛志(レバンテフジ静岡)5時間40分52秒

【チーム総合時間賞(第2ステージ終了時)】
1/JCLチーム右京キナンレーシングチーム 16時間59分12秒
2/マトリックスパワータグ +0秒
3/宇都宮ブリッツェン +7秒

画像:©TOUR de KUMANO 2024

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【ツール・ド・熊野2024 大会レポート】
第1ステージ・古座川清流