香妻琴乃(25歳)がまだ”大きな殻”から抜け出せないでいる。 あともう少し、何かきっかけをつかむことができれば、大きく羽ばたく可能性は秘めている。個人的には、そんな予感がしている。復調気配にある香妻琴乃 201…

 香妻琴乃(25歳)がまだ”大きな殻”から抜け出せないでいる。

 あともう少し、何かきっかけをつかむことができれば、大きく羽ばたく可能性は秘めている。個人的には、そんな予感がしている。



復調気配にある香妻琴乃

 2017年シーズン、昨季シード権を失った香妻はQT(※)ランキング44位の資格でツアーに参戦している。ランキングからすれば、25~30試合ぐらいは出場できるだろうが、シード復帰を目指す香妻にとって、1試合1試合がとても貴重で、大事なものとなる。そしてその中で、彼女が最大目標とするツアー優勝も狙っていく。
※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。

 今季はここまで22試合に出場して、トップ10入りは4月のフジサンケイレディスクラシック(10位タイ)と、6月のアース・モンダミンカップ(7位タイ)の2回。予選落ちは9回と、やや好不調の波があり、安定した成績を残していくことが課題となる。

 ここまでの戦いを振り返って、香妻はこう言って笑顔を見せた。

「昨年よりはショットはよくなっているのですが、つい最近までパッティングにいい感覚がなくて、なかなか入らなかったんです。でも今は、それも修正できてきています」

 少しずつではあるが、調子が戻りつつあることは確かなようだ。それでも、前半戦の出来について、香妻は「30点」と辛口の点数をつけた。及第点には程遠い。残りの「70点」については、こう説明した。

「どうしても試合中に焦ってしまうので、もっと余裕を持ってプレーできるようにしたい。そういう気持ち的なミスはなくしていきたいですね。それと、バーディーをもっと取らないといけないと思っています」

 具体的には、どういったシーンで焦ってしまうのだろうか。

「例えば、初日に『伸ばしたい!』と思う気持ちが強いと、ボギーをひとつでも打ちたくないと思ってしまうのですが、そこでもう少し余裕を持ってやれればいいな、と感じています。ボギーを打っても、すぐに気持ちを切り替えて『(その分)バーディーを取ればいいや』という余裕があれば、もっと攻めていけると思っています」

 結果を求めるあまり、ついプレー中に焦ってしまうという香妻。ラウンド中の表情を見ていると、終始冷静に、淡々とプレーしているように見えるが、内面は意外にも繊細で、状況によって気持ちが揺れ動いているようだ。

「プレーが終わって振り返ると、そう(焦りがあったと)感じるんです。プレー中は『大丈夫。バーディーをすぐに取ればいい、取ればいい』と思っているんですけど、(その思いとは裏腹に)きっと焦っているんでしょうね」

 そうした状況にあっても、香妻が少しばかり安心していることがある。それは、「昨年よりもずっと、成績が悪くなる幅が狭くなってきている」ことだ。

 昨年はいいときと悪いときの差が激しく、悪いときはとことん悪かった。70台後半から80台を叩くことも結構あった。それが今年は、一気に崩れて大叩きするようなことが少なくなった。

 問題はショットだった。昨年はショットが安定せず、香妻はかなり悩んでいた。しかし、今年のオフの合宿で「崩れる幅を少なくして、この1年間を過ごしていけるように(練習に)取り組んだ結果、悪い部分が出ても、それを早く修正できるようになった」という。

「悪いスイングは、試合中でも自分で直せるようになりました。あと、ルーティン。(昨年は)ルーティンでスイングが崩れることが多かったのですが、それを今年は、一度崩れても、意識的にいいときのルーティンに戻せるようになってきました。『こうして戻せばいいな』とか、そういうことに気づけるようになったんです。それと、昨年よりも自信を持って(スイングが)振り抜けている、というのも大きいです」

 実際、昨年の香妻はグリーンセンターを狙うような、安全に攻める試合が多く見られたが、今年はスイングの不安が解消され、ピンを狙ったショットが打てている。

 さらにショットへの自信が戻って、プレーの意識も変わった。昨年はどちらかと言えば、ミスしないようにプレーしようという気持ちが強かったが、今年はバーディーを取ろうという攻めの姿勢を重視。そのほうが、結果がいいことに気づいてからは、成績も徐々に上向いてきたという。

 そのうえ、今季はもうひとつ、大きな悩みがなくなった。ずっと患(わずら)っていた腰痛を気にすることがなくなったのだ。

「周囲から『少し太った?』と言われることが増えてしまった」と苦笑するが、中島弘二コーチから言われて、朝、昼、晩としっかり3食摂るように食生活を改善。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの出来合いのおにぎりやサンドイッチで、簡単に朝食を済ませることもやめた。その結果、腰痛はいつの間にか気にならなくなったそうだ。

「腰痛がなくなったので、練習もたくさんできるようになりました。これは、自分の中ではかなり大きいことです。練習ができないストレスを抱えると、本当に疲れますから」

 香妻が目指すのは「勝利」。ツアー初優勝を手にすることを常々口にし、それを第一としてきた。いよいよ、その準備は整いつつあるのだろうか。

「状態はよくなっているので、1試合1試合、やっていくしかないです。自分のベストを尽くしていければ、自分がそのときにできる一番いいゴルフをしていけば、結果的に優勝につながっていくんじゃないかなと思います」

 焦る思いはありながらも、今はその気持ちを抑えて、チャンスが来るのをじっと待ち構えている香妻。ちょっとしたことで、その瞬間は意外に早く訪れるかもしれない。