“救世主”の働きだ。2季ぶりの優勝の可能性を残している明大は25日、東京六大学野球春季リーグの法大1回戦に2-0で先勝。先発の高須大雅投手(3年)が7回5安打9奪三振無失点の快投を演じ、相手の法大のエース・篠木健太郎投手(4年)との投げ合…

 “救世主”の働きだ。2季ぶりの優勝の可能性を残している明大は25日、東京六大学野球春季リーグの法大1回戦に2-0で先勝。先発の高須大雅投手(3年)が7回5安打9奪三振無失点の快投を演じ、相手の法大のエース・篠木健太郎投手(4年)との投げ合いを制した。高須は防御率を1.44として、篠木とリーグトップで並んだ。“新エース”の活躍に、監督も太鼓判を押した。

 192センチの長身から投げ下ろす140キロ台後半のストレートに加え、100キロ台のカーブやフォーク、スライダーでタイミングを外し、法大打線を寄せつけない。田中武宏監督は「あの角度が特長で、しかもストレートの質がどんどん上がっているので、余計に縦の変化が有効なのだと思います」と評した。

 田中監督から「5回くらいまでなら、ほぼ必ず抑える」と信頼されている高須。唯一の不安はスタミナだったが、指揮官は「6回終了時点で捕手の小島(大河=3年)と相談すると、『逆によくなってきています』とのことだったので、7回も行かせました」と明かす。結局リーグ戦自己最多の111球で抑え切った。

 打撃でも貴重な働きを見せた。4回に5番・吉田匠吾内野手(3年)の中前適時打で先制した明大は、続く5回に先頭の高須が自ら左前打を放ち出塁。「もともと打撃がよくて、練習でも本当にいい打球を飛ばします。最初の打席(3回無死二塁の好機にスリーバント失敗)でも、打たせた方がよかった」と監督を苦笑させた。

 犠打と安打で三塁に進んだ高須は、小島が放った浅めの中飛で果敢にタッチアップ。ホームに足から滑り込んで、貴重な追加点をもぎ取った。田中監督は「あれだけ足が長いので、三塁からホームまで3歩か4歩で行けますから」とご機嫌にジョークを放った。

5回には安打を放ち、果敢な走塁で本塁へ生還を果たした明大・高須【写真:加治屋友輝】

 身長192センチ、90キロは、ドジャースの大谷翔平投手(193センチ、95キロ)に匹敵するサイズで、しかも大学入学後も伸び続けているという。靴のサイズは驚異の30センチで、潜在能力は計り知れない。まだ3年生だが、「ドラフト1位でプロに行くことが目標」と明確な将来像を描き、「全体的に能力が足りないので、全てレベルアップしないと。まずは最高球速を155キロに上げたい(現在153キロ)」と歯切れがいい。

■開幕当初はリリーフ要員も、最近3カード連続で1回戦先発

 明大は2022年の春から昨春まで3連覇を達成したが、村田賢一投手(ソフトバンク)、蒔田稔投手(JFE東日本)、石原勇輝投手(ヤクルト)ら昨年の主力がごっそり抜け、特に投手陣の駒不足が明らかだった。今季2カード目で早大に勝ち点を落とし、さらに主将で今秋ドラフトの目玉でもある宗山塁内野手(4年)も、上半身のコンディション不良により6試合連続で欠場している。

 そんな中、高須は今季開幕当初「球威があるので」(田中監督)、リリーフとして起用されていた。他の先発投手の不振もあって、早大2回戦の先発に抜擢されると、7回3安打無失点で自身リーグ戦初勝利。その後の立大、慶大、法大との対戦カードでは、大事な1回戦の先発を任されている。

 明大は法大から勝ち点を取ることができれば、通算44回目の優勝の可能性を残し、最終週の早慶戦の結果次第で、天皇杯が転がり込んでくることになる。シーズン途中から現れた“新エース”が、苦しいチーム事情を救っている。

(Full-Count 宮脇広久)