CyberAgent LegitディレクターFISHBOY photo by Hirose HisayaCyberAgent Legit インタビュー① FISHBOY プロダンスリーグ「D.LEAGUE」の4シーズン目のレギュラーシーズン…


CyberAgent LegitディレクターFISHBOY

 photo by Hirose Hisaya

CyberAgent Legit インタビュー① FISHBOY

 プロダンスリーグ「D.LEAGUE」の4シーズン目のレギュラーシーズンが5月19日に終了した。今シーズンはCyberAgent Legit(サイバーエージェントレジット、以下レジット)が優勝し、22-23シーズンに続き、レギュラーシーズン連覇を達成。そのチームのディレクターを務めるのが、FISHBOYだ。ダンサーとして世界一になった実力の持ち主で、オリエンタルラジオ中田敦彦の弟としても知られている。

 レギュラーシーズン終了後の6月9日(日)には、チャンピオンシップ(CS)が待ち構えており、ここでシーズンチャンピオンをかけて戦うことになっている。昨年は惜しくも決勝で敗れ、準優勝となってしまったレジット。今シーズンはどのような思いで挑むのだろうか。

 また、5月27日(月)~6月上旬には、イギリスの人気オーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』(BGT)の準決勝・決勝も控えている。多忙を極めるFISHBOYにそれぞれの意気込みなどを聞いてみた。

【退くことも考えていた】

――まずはレギュラーシーズンの優勝について、感想を教えてください。

 前シーズンもレギュラーシーズンで優勝でき、正直、そこでディレクターを辞めてしまったほうがかっこいいかなと思っていました。しばらく考えていましたが、優勝したあとの景色は、まだ僕の知らない景色であり、それは自分にとって非常に勉強になるんじゃないかなと思い、もう少しやってみようと思いました。

 今シーズンに関しては、もしかしたら、前シーズンより順位は落ちるかもしれないけれど、勝つために貪欲にやってみようと思い、臨みました。その結果、みんなの頑張りがあって、今シーズンもレギュラーシーズン優勝という形で終えることができました。本当にうれしいです。

――予想外の結果だったということでしょうか。

 シーズンに入る前には、想定では4回くらい負けてしまうだろうと思っていました。負けたときのメンタル的なダメージは非常に大きいですが、負けたあとの迅速な対応が非常に重要なると思っていたので、そのシミュレーションはしていました。ただほとんど負けずに済んだので、そのシミュレーションは杞憂に終わりましたね。


質の高いショーで観客を魅了したレジット

 ©D.LEAGUE 23-24

――ここまでの道のりのなかで、初年度は9位(最下位)、2シーズン目は8位と、当初は結果の伴わない時期でした。今、振り返ってみて、レジットにとってどんな意味を持つシーズンでしたか。

 勝利の価値が最大化された期間だと思います。つらい思いをすることで、勝つにはどうすればいいかということをメンバーみんなで考えることができた、いい期間だと思いますね。もし何となく勝っていたのであれば、おそらく「勝つことって何だろう」みたいなことを見つめずに終わっていたと思います。負け続けることによって「勝つって何だろう」ということから入れました。それがすごく重要だったなと思っています。

 21-22シーズンの後半ぐらいからしっかりとミーティングの時間を取るようにしていますが、それによって共通認識を持ち、同じ視座で見られているという実感があります。最初の2シーズンで頑張っていなければ、できない空間だったと思っています。

――そして3シーズン目、4シーズン目で大きな躍進を遂げました。そこまでの道のりを踏まえ、チームとして、何が変化し、どう成長できたと実感されていますか。

 言語化だと思います。思っていることを言葉にできると、如実に違いがでるなと感じています。若いメンバーのKANATO、BBOY SHOSEIは10代からチームに参加していますが、彼らの思いを言葉にする能力が飛躍的に上がっています。これがどう関わってくるかというと、作品の制作過程で、自分が感じた違和感を言葉にできるんです。そうすると、ひとつのアイデアにつながっていきます。

 たとえば10人いたとして、全員が言語化できれば、10のアイデアが出るようになります。なので制作過程でどんどんアイデアが出るんです。最初は3人くらいが違和感を言語化できたんですが、今や10人全員が言語化できるので、アイデアの数も変わってきています。

 あとアイデアと同じくらい違和感を感じることがとても大事です。「これって大丈夫かな」とか「みんなOKな感じで進んでいるけれど、それでいいんだっけ」といったことを伝えてくれることがとても重要。それを深掘ることで、ショーがものすごくよくなってくる。そこがレジットの成長につながっているのかなと思います。

【目標はもちろん優勝】

――今シーズンのなかで、ターニングポイントとなったラウンドや、とくに印象に残っているラウンドがあれば、その理由とともに教えてください。

 TAKUMIのHeartstrings(ラウンド8)と、1ch(イチ)のBoiled Sweat(ラウンド11)です。メンバーが作る作品はすごく好きで、TAKUMIに関しては、前シーズンからここぞというときに作品を作ってくれて、とてもいい結果を生んでくれています。今回も本当にすばらしい作品を作ってくれたと思っています。メンバーが作って結果を出すと、メンバーの士気も上がりますし、あそこで勢いづいたかなと感じています。

 1chに関しては、自分から「作品をつくりたいです」と言ってくれたんですよ。それまでの作品づくりは僕か、TAKUMIか、外注の演出かの選択肢でした。僕としてはずっとそういう言葉を言ってくれるメンバーはいないかなと待っていたので、1chの言葉を聞いたとき非常にうれしかったです。

 ショーディレクションには、答えはないですし、「これで勝てますよ」なんて言ってくれる人はいないです。一日中ずっと頭の中が動きっぱなしの状態が続くので、ものすごくつらいんですね。それに耐えきって、すばらしいショーを見せてくれて、結果も出たということで、1chが自信を持ってくれた瞬間を見られたのもすごくうれしかったです。その姿を見て、メンバーが感化されてくれたらいいなと思っています。

6-0で勝利した1chの作品「Boiled Sweat」

 ©D.LEAGUE 23-24

――チャンピオンシップが迫っています。そこに向けた意気込みを教えてください。

 もちろん優勝を狙っています。前シーズンは決勝で負けてしまって、何をすべきだったんだろうとずっと考えていて、それを試せる時がようやく来ました。そのチャンスをもらえない人ってたくさんいると思いますが、そのチャンスをもらえたというのは、とてもラッキーだし、みんなに感謝です。このチャンスを逃さず、しっかりと結果を出すというのが目標です。

【プロフェッショナルの共有】

――メンバーをずっと見てきているなかで、さらにここから飛躍するために、どんなことが必要だと感じていますか。

 レジット内で環境を変えること、新しい挑戦をすることが一番いいのかなと思っています。ずっとDリーグ内にいると、価値観が固まってしまったり、インプットがなかったりするので、海外に挑戦して、外の価値観をしっかり吸収することで、新しいアウトプットが生まれると思っています。

 もうひとつは、新メンバーだと思っています。もし新しい風を吹かせてくれるようなメンバーが入ってくれたら、表現の多彩さやチームの色が変わっていきます。また新メンバーが入ることで、壁が出てきて、それを乗り越える瞬間にグッと成長できるチャンスにもなると思っています。

――レジットのなかで共有している精神はありますか。

 感謝とプロフェッショナルの定義ですね。プロフェッショナルの定義とは、自分の才能を持って社会貢献することだと、僕は思っています。自分の才能を自分のために使うのは、プロではない。ダンスでいうと、自分たちのしたい踊りをしたいようにするのはアーティストなんですね。というよりは、より多くの人たちが、感動したり、楽しんでもらったりするような作品を、僕たちの能力を持って披露する目線でレジットはいると思います。

 レジットのなかには、アーティスト精神を持っている人が何人もいるんですよ。でも、それはレジットのなかじゃなくて、違う活動でもできますよね。レジットとして活動するのであれば、レジットの時間はみんなのために使って喜んでもらうところに目線を向けようと活動しています。それが作品にも表れているのかなと思います。


レジットが大切にしている精神を語るFISHBOY

  photo by Hirose Hisaya

【本当に幸せだと思った】

――イギリスの人気オーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』に出場しましたが、その経緯を教えてください。

 昨シーズンのチャンピオンシップの準決勝で披露した「ROCK & FIRE」という作品の映像をInstagramに投稿しました。そうしたらものすごい反響があり、海外からもメッセージが来たなかのひとつに、『ブリテンズ・ゴット・タレント』のプロデューサーからのものがありました。「ぜひ、チャレンジしてみないか」と声を掛けてくださって、それをサイバーエージェントの社員の方々に相談したところ、快く引き受けてくださいました。

 その後、メンバーに「チャレンジしてみないか」と話しました。Dリーグの真っ最中での出演だったので、非常に忙しくなると説明しましたが、メンバーは間髪入れずに「出たい!」とすごい覚悟を持って返事をしてくれたのが、出演の経緯です。

――そこでジャッジ陣の中心人物、サイモン・コーウェルからゴールデンブザーを獲得しました。これはジャッジひとりに対して、1シーズンに1回しか使用できないブザーで、準決勝進出を意味するものです。この獲得の瞬間の感想をお願いします。

 僕は観客席から見ていました。みんながショーをしている最中からいい結果が生まれるかもしれないという期待感はありましたが、何があるかわからないので、ドキドキしていました。

 ショーが終わった瞬間に観客がスタンディングオベーションしてくれて、サイモンさんが話している最中に「ゴールデンブザー、ゴールデンブザー」と騒ぎ始めたんです。そこから、ほかのジャッジの方がコメントしている途中でしたが、サイモンさんが待ちきれずにゴールデンブザーを押しました。

 本当に幸せだなと思いましたし、いい人生を送らせてくれているみんなに「ありがとう」と思いました。

 僕は23歳のころに世界大会で優勝させてもらいました。その時は、3つ上の先輩に誘われて連れていってもらい、とてもうれしかったんです。予選から出て優勝できましたが、その景色が今でも忘れられない。さまざまな国籍の人から、「お前らすごいよ!」という感じで、みんなに祝ってもらい、とても素敵な景色を見ることができたと思っていました。

 今回はみんなを連れていけて、みんながそういう景色を見ている、それを見ている自分がいる。その状況にものすごい感謝が込み上げてきましたし、23歳だった僕を連れていってくれた先輩にも感謝が思い浮かびました。みんなの頑張りに本当に泣きました。

――5月27日から6月上旬にかけて、『ブリテンズ・ゴット・タレント』の準決勝、決勝が行なわれます。どんな気持ちで臨みますか。

 今は作品をつくらなきゃということくらいしか頭になくて、それ以外の感情がない。終わった瞬間に感情があふれてしまうのではないかと思っています。

 でも大前提として、まずは結果を出すことだと思っています。それを生かして自分たちでどういう景色を見に行きたいのか、ちゃんと考えておくことが大事だと思っています。結果を残しただけでは何も残らないと考えています。

 このようなオーディション番組は掛け算だと思っています。『ブリテンズ・ゴット・タレント』が3000だと仮定して、積み重ねたものが100ある人が出場して結果を出したら、3000×100で30万になります。でも1の人は掛け算をしても3000にしかならない。自分たちが価値を高めておいて、『ブリテンズ・ゴット・タレント』を経て、どうブーストするか、考えておかなければいけないと思っています。

――世界を視野に入れた今、今後レジットはどんなチームになっていきたいと考えていますか。

 僕らはまったく見たことのないダンスをしているのかというと、そうではないと思います。ダンスジャンルはオールドスクールと言われて、1970年代、その前後に生まれたダンスがわりとメインになっているんです。ですが、それを見たことのない質の高いレベルでやっていることが、新しいんです。「そこまでの質を出せるのか」とダンスをしたことがない人にも伝わるほどの感覚を与えて、世界に衝撃をもたらしたいと思っています。

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【Profile】
FISHBOY(フィッシュ・ボーイ)
1985年12月19日生まれ、山口県出身。10代前半から頭角を表し、数々の全国的なダンスコンテストで優勝を経験。20歳ころからはソロバトルでも優勝を重ねる。世界大会JUSTE DEBOUT(POP、2on2)で優勝した経験を持つ。RADIOFISHとしても活動し「PERFECT HUMAN」が大ヒット。紅白歌合戦出場を果たす。Dリーグ初年度よりCyberAgent Legitのディレクターを務める。