■小宮山悟監督「受けている捕手が言うのなら間違いないだろうと思いました」 早大は19日、東京六大学野球春季リーグの法大2回戦に2-0で競り勝ち、連勝で勝ち点を4として単独首位に立った。2020年秋以来7季ぶりの優勝へ前進し、残すは最終週の慶…
■小宮山悟監督「受けている捕手が言うのなら間違いないだろうと思いました」
早大は19日、東京六大学野球春季リーグの法大2回戦に2-0で競り勝ち、連勝で勝ち点を4として単独首位に立った。2020年秋以来7季ぶりの優勝へ前進し、残すは最終週の慶大戦のみとなった。この日はNPB通算117勝をマークした小宮山悟監督が、主将の印出太一捕手(4年)の進言を受けて、当初描いていた継投の構想を変更。結果的に功を奏した。
「本来なら、香西(一希投手=2年)に代えるつもりでした。しかし印出が『安田(虎汰郎投手=1年)で行けます』と言うので、受けている捕手が言うのなら間違いないだろうと思い、安田を続投させる決断をしました」。小宮山監督は試合後の会見で、そう明かした。
2-0とリードして迎えた9回。7回から登板した早大2番手の安田は、すでに2回を投げ無安打無失点に抑えていた。1年生の安田は過去3試合に登板し、最長でも1イニングしか投げていなかっただけに、3イニング目には不安もあったが、指揮官は主将の判断を尊重した。
安田には、初見でとらえるのが極めて難しい“魔球”チェンジアップがある。印出は「9回の守りで一番怖かったのは、走者を1人出してから同点ホームランを打たれることでした。その点、安田のチェンジアップが一番、本塁打されにくいと思いました」と説明する。安田にも「単打は3本打たれても構わない。ただし、ロングを打たれてはダメだ」と言い聞かせたという。
9回、安田は先頭打者を四球で歩かせ、いきなり暗雲が垂れ込めるも、続く3番・中津大和内野手(4年)を中直に仕留める。4番・松下歩叶内野手(3年)には、チェンジアップをレフトポール際まで運ばれるファウルがあったが、11球かけて遊ゴロに打ち取った。印出は「(チェンジアップに)結構対応してきていたので怖かったですが、その前に先発の宮城(誇南投手=2年)が内角を速球で攻めておいてくれたので、(チェンジアップにはタイミングが早すぎて)ファウルになるだろうという計算もありました」と笑みを浮かべた。
■打っても初回に先制打、8回には追加点もぎ取る適時内野安打
最後は吉安遼哉捕手(4年)を113キロのチェンジアップで右飛に仕留め、ゲームセット。結局安田は終盤の3イニングを無安打無失点で抑え切り、優勝へ向けて値千金の白星をもぎ取ったのだった。
1、2年投手をリードして法大打線を零封したのも印出だが、2得点をたたき出したのも印出のバットだった。この日も4番に座り、初回2死二塁の好機に、法大先発の左腕・吉鶴翔瑛投手(4年)から“逆方向”の右前へ先制適時打を放った。「僕はこれまで左投手に対して、内角寄りに入ってくる変化球や真っすぐを引っ張ることが多かったので、そういう球は来ないだろうと予想して、逆方向を意識していました」という読みが的中。実際、打ったのは「外角へ逃げていくツーシーム、もしくはフォーク」だった。
8回2死三塁の第4打席では、遊撃へゴロを放つと、一塁へのヘッドスライディングで適時内野安打にして、貴重な追加点をもたらした。リードでも、打撃でも理詰めで考え抜いた印出。試合後には「頭が破裂しそうでした」と苦笑した。そんな主将の姿に、小宮山監督は「俺もこの2日間で5歳は老けたよ」と語りかけた。
2019年1月に小宮山監督が就任してから11季目。優勝は今のところ2020年の秋だけだが、その理論は着実に浸透し、選手個々が状況判断できるようになってきた。スタメンの編成に選手たちの意見を取り入れることもある。指揮官に進言した印出の姿などは、実に頼もしい。
「ここまでは計算通り来ていて、怖いくらいです。あとは慶応対策をしっかり練って、天皇杯を奪還できればと思います」と小宮山監督。早大の通算優勝回数は、法大と並びリーグ最多の46回。ここで一歩抜け出すことができるか。