川崎フロンターレ陣内を右から左へ、背番号「10」がドリブルで進んでいたときには、浦和レッズのゴールが生まれる予感はまっ…
川崎フロンターレ陣内を右から左へ、背番号「10」がドリブルで進んでいたときには、浦和レッズのゴールが生まれる予感はまったく漂ってこなかった。
しかし、FW中島翔哉が急停止し、素早い切り返しから川崎のキャプテン、MF脇坂泰斗のマークを外したわずか数秒後に川崎のゴールネットが揺れた。
敵地Uvanceとどろきスタジアムに乗り込んだ3日の一戦。35分に生まれたFW大久保智明の同点ゴールをアシストしたのは、元日本代表の「10番」だった。
中島の右足から放たれたクロスが美しい弧を描きながら、ファーへ走り込んできた大久保の軌道とピンポイントで一致。MF遠野大弥と激しく競り合いながら、大久保は頭ひとつ分も高い打点から強烈なヘディングシュートを叩きつけた。
「翔哉くんはああいう場面で、相手が最も怖がるプレーを選択してくれる。僕もああいった斜めのランニングをすごく意識しているので、呼び込んだというか、翔哉くんも僕が走ると思っていたはずだし、僕も来ると思っていました」
大久保が以心伝心のゴールだったと振り返る。ならば、中島の視界にはどのような景色が映っていたのか。中島は「適当なクロスではない」とこう続けた。
「チアゴ(・サンタナ)がいるので、その裏という感じで狙いました。(大久保が)走り込んでいたので、そこへパスを出した、という感じです」
■「内側に入っていく自由を与えている」
1トップのチアゴ・サンタナを常に意識しているのだろう。一瞬だけルックアップした中島は、サンタナの背後のスペースを突く大久保の姿を見逃さなかった。
中島は4月20日のガンバ大阪戦を皮切りに、名古屋グランパスとの前節、そして川崎戦と3試合連続で先発。4月24日のガイナーレ鳥取とのYBCルヴァンカップ1stラウンド2回戦も含めれば、公式戦で4試合連続先発を継続させている。
鳥取戦と名古屋戦ではフル出場している中島を、今シーズンから指揮を執るペア=マティアス・ヘグモ監督は、左ウイングだけのプレーに束縛していない。
「翔哉には内側に入っていく自由を与えている。フィジカルコンディションのレベルが非常に高いところまできていて、いまは自信を持ってプレーできている」
昨夏に加入して以来、状態が上がらなかった中島は後半途中からの短いプレー時間に終始してきた。ようやくフィットしてきたいま、関根貴大、松尾佑介、大久保、渡邊凌磨が先発してきた左ウイングのファーストチョイスになりつつある。
■中島翔哉は「守備のトリガーも引いている」
自由奔放なプレーが新監督の戦術に縛られ気味だった浦和を活性化させ、対戦相手にも脅威を与える。指揮官から「守備のトリガーも引いている」と、相手のはめ方でも違いを見せている中島は、居場所を築き始めた浦和での今後をこう語る。
「どんどんボールを受けて、どんどん攻撃に絡もうと思っています。これからも状態はよくしたいと思っていますし、成長していきたいと思っています」
攻撃力で違いをもたらす能力の高さは、第1次森保ジャパンが船出した直後のプレーが証明している。身長164cm体重64kgの小さな体から再び放たれ始めたまばゆい輝きが、苦しいスタートを切った浦和の羅針盤になろうとしている。
(取材・文/藤江直人)