<ボクシング:IBF世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇4日◇エディオンアリーナ大阪挑戦者の同級1位・西田凌佑(27=六島)が判定勝利を飾り、9戦目での世界王座どりに成功した。王者エマヌエル・ロドリゲス(31=プエルトリコ)と対戦。不利…

<ボクシング:IBF世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇4日◇エディオンアリーナ大阪

挑戦者の同級1位・西田凌佑(27=六島)が判定勝利を飾り、9戦目での世界王座どりに成功した。

王者エマヌエル・ロドリゲス(31=プエルトリコ)と対戦。不利とされた戦前の評価を覆し、勝利をつかみ取った。現時点でバンタム級の世界王者はWBC中谷潤人、WBA井上拓真に続き、西田が3団体目を制した。

「地味で悪いか」を地でいく男が世界の頂に立った。奈良・王寺工で国体優勝も、進学した学生ボクシング界の名門、近大では目立った実績を残せなかった。

卒業後、プロボクサーの道はあきらめてもうひとつの夢、「パンを作りたい」と大手パンメーカーに就職した。しかし、希望とは違い、配属先は系列の小売店。商品を陳列する日々にもやもやしているタイミングで、六島ジムの武市晃輔トレーナー(42)が熱い勧誘の声をかけてきた。

「たたけばたたくほど伸びると思った」と武市氏は振り返る。中学時代は陸上部で長距離専門。目立った実績はなかったが、培った足腰が唯一の武器だった。「ブーイングされてもいい、おもろなくてもいい。着実にポイントをとるボクシングしかない」という武市氏の指導は一本道だった。

3戦目に大森将平、4戦目にWBOアジアパシフィック・バンタム級タイトル戦で元世界王者の比嘉大吾を撃破した。いずれも戦前の不利予想を覆す。それを実現したのは、ひたすら足を使ってパンチをもらわない、西田のボクシングスタイルだからだった。

今回も不利を受け入れて試合に臨んだ。「練習でやってきたことをしっかり出す。自分を信じて戦える。1番に勝つ、強い気持ち。それだけです」。

ひたすらに足を動かして相手の強打を防ぐ。そのための下半身強化で、過酷な練習をこなしてきた。

持てる力、すべて出し切って世界のベルトをつかんだ。「KOモンスター」井上尚弥とは違う。新たなスタイルでのし上がった新王者が誕生した。

◇ラウンドVTR

1回 開始からサウスポーの挑戦者・西田が右ジャブを繰り出して距離をはかる。王者ロドリゲスはリング中央でどっしり構えて様子を見る。1分版すぎに西田の左ストレートが王者のボディーにヒット。2分すぎに西田の左ストレートが王者のアゴに浅くヒット。その後も挑戦者が盛んに右ジャブを繰り出して、距離を保つ。日刊採点西田10-9

2回 ロドリゲスがジワジワと前に出る。王者の右ストレートが西田の顔面に軽くヒット。西田も打ち返して左ストレートをヒットさせる。西田の右ジャブが邪魔になり、王者はなかなか中に入れない。1分50秒、王者の右が浅くヒット。終盤に西田もワンツーを浅くヒット。日刊採点西田10-9

3回 ロドリゲスが強引に前に出てパンチを繰り出す。西田も左ストレートでロドリゲスのアゴをはね上げる。ロドリゲスは力んでパンチが空を切るシーンが多くなる。中盤に西田のワンツーから右フック、左ストレートがヒットするが。王者も打ち返す。残り30秒、ロドリゲスの回転の速い連打がヒット 終盤は西田の連打が当たる。日刊採点西田10-9

4回 ロドリゲスが強引に前に出る。西田は右ジャブとボディーブローで打ち返す。ロドリゲスの入り際に西田の右ジャブがタイミングよく決まる。中盤、西田がボディーブローから連打。さらに左ボディーブローでロドリゲスからダウンを奪う。立ち上がった王者に西田が再びボディーを連打。ロドリゲスも打ち返す。 日刊採点西田10-8

5回 ロドリゲスの右ストレートが先制打。序盤から接近戦での打ち合いに。40秒、ロドリゲスの右ストレート、左ボディーブローが決まる。王者は頭をつけて打ち合いに持ち込む。1分半すぎに王者の右ボディーブローがヒット。西田は無理して打ち合わず。残り30秒、王者の上下への連打で西田の体が折れる。日刊採点ロドリゲス10-9

6回 西田が右ジャブで距離をとる。王者は西田をコーナーにつめてパンチを繰り出すが、西田も打ち返す。45秒、ロドリゲスの右ボディーアッパーが決まり、一瞬、西田の動きが止まる。中盤以降もロドリゲスは前に出てプレッシャーをかけて右をヒット。西田はロープを背にする。王者のノーモーションの右が西田の顔面に決まる。日刊採点ロドリゲス10-9

7回 ロドリゲスの右が先制打。西田は細かい連打で反撃。西田が再びボディーに狙いを絞って接近戦。体をつけての打ち合いが続く。1分半、王者の右アッパーで西田のアゴが上がる。さらに王者の左フックに西田の腰が落ちる。終盤も頭をつけあっての打ち合いで、西田の手数が上回る。 日刊採点ロドリゲス10-9

8回 開始から両者頭をつけあっての打ち合いに。打撃戦は両者ゆずらず。西田のワンツーに王者はクリンチ。1分すぎに西田の左ボディーブローにロドリゲスが後退。中盤は意地の打ち合いに。後半も西田のボディーブローが有効でロドリゲスの手数が減る。日刊採点西田10-9

9回 開始から相変わらず頭をつけての打ち合い。30秒、西田の連打が顔面に決まる。ボディーもブローも効果的で、ロドリゲスが両手をついてスリップダウン。中盤は西田がボディーを集中攻撃。ロドリゲスはガードで耐える。2分、西田が王者をロープにつめてボディーを連打。終盤の打ち合いは西田が打ち勝つ。 日刊採点西田10-9

10回 西田が前に出て打ち合いに。ロドリゲスの反撃は高いガードでブロック。その後、西田は左ボディーブローを徹底して打ち続ける。ロドリゲスのパンチは的中率が落ちる。後半は王者も打ち返し、強烈な右アッパーが決まる。終盤は西田のボディーブローに王者がクリンチ。 日刊採点ロドリゲス10-9

11回 序盤はロドリゲスが連打で攻める。西田もボディーブローを返すが、王者はかまわず打ち返す。1分すぎ、顔面へのパンチの応酬は手数で西田、有効打でロドリゲス。2分すぎに西田の左ボディーブローが決まり、ロドリゲスがクリンチ。王者を休ませない。終盤は西田から接近戦を挑み前に出る。日刊採点西田10-9

12回 西田が開始から左ボディーブローを連発して前に出る。ロドリゲスはロープに下がる。1分すぎ、王者の左右フックが浅くヒットするが、西田は前進を続ける。残り1分、西田の左ストレートが画面にヒット。終盤も王者も打ち返す。残り10秒、西田の左ボディーブローが決まる。西田が新王者に輝いた。日刊採点西田10-9

◇西田凌佑(にしだ・りょうすけ)のプロフィル

◆生まれ 1996年(平8)8月7日、奈良・香芝市。

◆陸上長距離選手 中学時代は陸上部で長距離専門。3000メートル9分40秒。

◆ボクシング歴 王寺工に陸上部がなくボクシングを始める。3年時に国体のフライ級で優勝。近大に進み、ボクシング部に所属も実績を残せず、卒業後は大手パンメーカーに就職した。

◆プロデビュー 六島ジム武市トレーナーの熱烈勧誘もあり、同ジムに入門。19年10月、タイ・バンコクでプロデビュー。21年4月、元世界王者・比嘉大吾とのWBOアジアパシフィック・バンタム級タイトル戦で金星。同タイトルを3回防衛した。

◆タイプ・戦績 身長170センチの左ボクサー。

◆夫人もボクサー 昨年3月、全日本女子選手権バンタム級3連覇の元ボクサーで大学の同級生、沙捺(さな)夫人と結婚。今年3月27日に長女の莉奈ちゃんが誕生。