<柔道:全日本選手権>◇29日◇東京・日本武道館◇体重無差別男子100キロ級で21年から3年連続で世界選手権に出場した飯田健太郎(25=旭化成)が、まさかの初戦敗退を喫した。阿部拓馬(山形県警)を序盤から圧倒。「体もよく動いていた」と試合の…

<柔道:全日本選手権>◇29日◇東京・日本武道館◇体重無差別

男子100キロ級で21年から3年連続で世界選手権に出場した飯田健太郎(25=旭化成)が、まさかの初戦敗退を喫した。

阿部拓馬(山形県警)を序盤から圧倒。「体もよく動いていた」と試合の半分で相手に指導2が入る好内容で、残り1分47秒では得意の内股を発動。技ありを奪った。

場外際で出たように見えたため、そのまま「待て」がかかるかと思われたが、歓声で審判の声が聞こえず「一本と決めつけてしまった。そして場外に出たという認識でした」。気を抜いたところを抑え込まれた。横四方固めで痛恨の逆転負け。「パニック状態。逃げられませんでした」と、ぼうぜんとし、場内もどよめいた。

昨年12月のグランドスラム(GS)東京大会で敗退し、ずっと1番手だったパリ五輪(オリンピック)の代表争いから脱落。さらには5月の世界選手権(アブダビ)代表選考会を兼ねていた4月の全日本選抜体重別選手権で「1・8キロくらいです」という計量オーバーで失格した。

規定で全日本柔道連盟の強化選手からも外され「これからもやっていくぞ、という気持ちにまだならなくて、今回も出場するか悩んだし、見つめ直すために柔道と距離を取ろうかなとも思ったんですけど、ただただ今回は全日本に挑もうと思って。強化も剥奪され、何のために柔道をやっているのか、柔道のどこが好きで、のめり込んでやってきたのか、向き合いたい」と複雑な心中を明かした。

この大会の予選である、体重無差別の東京選手権(3月中旬)に出たことで、翌月上旬の選抜体重別に間に合わず。「自己管理不足です。逆算して計画的に減量することができなかった」と説明。今後については「100キロ級でまた世界と戦いたい思いもあるんですが、年齢とともに、どう体調と体重が変化するかも分からない」と話すにとどめた。

今後、再び全日本を目指すためには国内大会で勝ち上がっていく必要がある。そこに向けたモチベーションは低下していた。

「五輪を目指して結果が出ず、家族とか近しい人から『昔の方が明るく柔道していたね』と。今はビクビクしている。結果にこだわり過ぎて。こだわらないといけないんですけど、結果を求め過ぎて、やりたい柔道ができていない。階級を上げるのか上げないのか、第一線か。整理がついていない」

国士舘高3年だった17年に18歳でGSパリ初優勝。将来を嘱望された柔道家が今、去就に関する苦悩を吐露するほどの状況に陥っている。【木下淳】