仕事などの関係から、どうしても夜しか走れないという方は多いでしょう。しかし夜のランニングでは、車や歩行者との接触などの危険性が日中より高まるもの。そのため、あらかじめ「どんな危険があるのか」を十分に理解するとともに、安全に配慮した装備が求…

 仕事などの関係から、どうしても夜しか走れないという方は多いでしょう。しかし夜のランニングでは、車や歩行者との接触などの危険性が日中より高まるもの。そのため、あらかじめ「どんな危険があるのか」を十分に理解するとともに、安全に配慮した装備が求められます。

 私は基本的に明るい時間帯を選んで走っていますが、レースでは夜通し走る“オーバーナイトラン”も数多く経験してきました。その経験から、夜のランニングで注意したいポイント、そして最低限の必要装備についてお伝えします。

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周囲への配慮を忘れない

 夜によく起きるのが、歩行者や自転車、車などとの接触。そのため夜に走る際には、「怪我しないために自分の身を守る」という視点から装備を考えるランナーが多いでしょう。

 しかし歩行者にぶつかれば、相手を怪我させてしまうかもしれません。あるいは自転車も、転倒させてしまう可能性があるでしょう。車の場合、こちらの不注意から接触すれば、相手に大きな罪を与えてしまうことになりかねません。つまり自分だけでなく、ランニングによって周囲を危険にさらしたり、迷惑を掛けたりする可能性があるのです。

 ランニングに夢中になると、つい自分本位になりがちです。しかし夜のランニングでは、自分だけでなく「周囲に迷惑を掛けない」ことを考えましょう。

追い抜くときは“一声”掛ける

 走っていると歩行者はもちろん、他ランナーより速いスピードで追い抜くことがあります。そうした際には、必ず「右を通ります」など声がけするようにしましょう。

 ただし追い抜く直前だと、突然の声に相手を驚かせてしまうかもしれません。あるいは自分が進もうとしているのと同じ側に相手も避けてしまい、かえって接触の危険性を高めてしまう可能性があるでしょう。そのため、少し余裕を持って手前から声を掛けることをオススメします。

 なお、声掛けはあくまで、自分が後ろから通ることを知らせるためのもの。相手に道を譲らせるためではありません。そのため相手を優先し、追い抜くときは自分が空いている場所を選んで通ることが大切です。

周囲から“見えやすく“するための装備

 夜は当然ながら“暗闇”を走ることになります。そのため、欠かせないのがヘッドライトやハンドライトです。できるだけルーメン(lm)の値が高い、LEDライトを用意しましょう。ライトを装備する目的について、多くの方は「足元や前方を見えやすくする」ことだと考えるのではないでしょうか。もちろん、躓いて転倒するなどの危険があるので、それも1つの目的です。走る場所によっては側溝があり、足を踏み外して大怪我に繋がることもあります。

 しかし実は、もっと重要なことがあります。それは「自分の存在を周囲に知らせる」こと。陸上競技場などランナーしかいない場所を除き、おそらく多くのランナーは公道を走ります。歩道なら歩行者や自転車が、車道では車が前方から向かってくるでしょう。そのため、ライトの明かりによって、前方から向かってくる人に「誰かいる」と認識してもらうのです。お互いが存在を認識できているだけで、接触などの危険性は大幅に低下します。

 同様に、後ろに対しても存在を知らせるための配慮を考えましょう。そのために必要なのが反射板です。襷掛けするもの、貼り付けるもの、あるいは反射板付きのベストなどが販売されていますので、使いやすいものを選んでください。あるいは反射板ではなく、クリップ型のLEDライトを付けるのも1つの方法です。

 なお、バックパックを背負って走る場合、多くの製品には反射板があらかじめ備わっています。しかし製品によって、その量や場所は異なるはず。そのため、バックパックを背負うからと安心してはいけません。部屋の明かりを暗くした状態で、バックパックにライトを当ててみましょう。もし反射板が少ない、あるいは見えにくいという場合には、別途前述したような装備を用意するようにしてください。

万が一の連絡手段

 いくら備えても、怪我・事故から100%身を守ることはできません。そのため、特に夜は携帯電話など、万が一の際に連絡を取れる手段を持ち歩きましょう。

 例えば真夜中に走っていて、脱水や熱中症、低体温症などを起こしてしまった場合。救急車を呼ぶのにも携帯電話は重宝します。あるいは疲れ果てて走れなくなった際、もし終電以後であれば、タクシーを呼ばなくてはいけないでしょう。そのほか、スマートフォンなら道に迷っても、地図アプリで位置情報を確認できるなどメリットがたくさんあります。

十分な備えで夜のランニングを安全に

 このほか、冬場なら体温調節のため防寒具が欠かせません。走っていると汗をかきますが、もし走れなくなった場合、一気に身体が冷えてしまいます。あるいはタイツやアームカバーを装着することで、転倒・接触での怪我(切り傷など)を防ぐ効果が期待できるでしょう。

 最後に、夜のランニングでは明るいウェアやシューズを選ぶこと。黒や紺など暗い色は、そのまま暗闇に溶け込んで見えなくなります。白色、あるいは黄色など蛍光色を選ぶことが大切です。走る場所にどのような危険があるのか、また、周囲から自分がどのように見えるのかを考え、万全の装備を整えてください。備えがあればこそ、夜のランニングを安全に楽しむことができるはずです。

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[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表
【HP】http://www.run-writer.com

<Text:三河賢文/Photo:Getty Images>