今年のパ・リーグはリーグ3連覇中のオリックスがスタートで苦しみ、混戦の兆しを見せている。1980年代から1990年代にかけて、黄金時代の西武をチームリーダーとしてけん引してきた石毛宏典氏に、パ・リーグの順位予想と展望を聞いた。今季からソフ…
今年のパ・リーグはリーグ3連覇中のオリックスがスタートで苦しみ、混戦の兆しを見せている。1980年代から1990年代にかけて、黄金時代の西武をチームリーダーとしてけん引してきた石毛宏典氏に、パ・リーグの順位予想と展望を聞いた。
今季からソフトバンクの指揮を執る小久保監督
Sankei Visual
【1位予想:ソフトバンク】
――ソフトバンクを1位と予想されましたが、その理由は?
石毛宏典(以下、石毛) 今季から指揮を執っている小久保裕紀監督に注目しているのですが、彼がチームを引き締めて再建すると思うんです。もちろん、山川穂高や(アダム・)ウォーカーら長打が期待できるバッターの加入も大きいのですが、何よりも大きいと思うのが小久保監督の存在です。
――石毛さんが現役晩年にダイエー(現ソフトバンク)に在籍していたとき、小久保監督とチームメイトだった時期がありました(小久保監督は1994年入団。石毛氏は1995~96年に在籍)。どんな印象をお持ちですか?
石毛 30年ほど前のことなので記憶が曖昧なのですが、「厳しさがある人間だな」と感じていました。厳しさは、リーダーにとって欠かせない要素だと思います。選手ひとりひとりをよく見ているでしょうし、メンバーを束ねて同じ方向に気持ちを向けさせる統率力が優れている印象があります。現役時代はリーダーシップを発揮して、ソフトバンクが"常勝軍団"となる礎を築きましたが、監督としてのリーダーシップにも注目しています。
【2位予想:オリックス】
――パ・リーグ4連覇を狙うオリックスは2位の予想ですね。
石毛 チーム力はソフトバンクと拮抗しているので、今年もオリックスがリーグを制する可能性は十分にあると思っています。西川龍馬の加入が大きいですし、若くて馬力のあるピッチャーも多いので。山本由伸らが抜けたのは痛いですが、逆に若いピッチャーがひとり、ふたりと出てくる可能性が高くなりました。「チームを循環させるチャンス」とプラスに考えることもできます。
――これまでどおり、中嶋聡監督の選手起用、采配にも注目が集まっています。
石毛 オリックスがリーグを3連覇できているのは、中嶋監督の手腕によるところが大きいです。それと、若くして優勝争いや日本シリーズの経験値を積んでいる選手たちが多いこと。特定の選手というより、チーム全体でスキルアップしているように見えます。昨季ほどの独走は難しいかもしれませんが、やはりチームの総合力は抜けています。
【3位予想:西武】
――近年はピッチャー陣が力をつけている西武。石毛さんもその点を評価されていますね。
石毛 やはり、野球はピッチャーを中心とした守りが重要です。髙橋光成は出遅れていますが、先発ピッチャー陣は層が厚いです。
ルーキーの武内夏暉は球に力がありますし、どの変化球でも空振りが取れる。3年目の隅田知一郎も、昨季にある程度の成績を残したことで自信をつけた。甲斐野央の加入もリリーフ陣にとって大きいと思いますが......問題は打つほうですね。
――新外国人選手たちがどれだけ活躍できるかにかかっているでしょうか。
石毛 外野手でレギュラーと呼べる選手がいませんし、新外国人選手たちにかかっている部分は大きいでしょう。その点、(ヘスス・)アギラーは巨漢ですが、柔らかいバッティングをするし、(フランチー・)コルデロも長打が期待できる。昨季よりは得点力が上がると思うので、3位に予想しました。
【4位予想:ロッテ】
――昨季2位だったロッテは、4位の予想となりました。
石毛 西武と同じで、打線が弱いです。佐々木朗希、種市篤暉、小島和哉など計算できる先発ピッチャーがいるのですが、打てないので、リリーフを含めたピッチャー陣がかなり踏ん張らないといけません。(ネフタリ・)ソトの加入は得点力を高めるうえで大きいですが、山口航輝、ケガで離脱中の安田尚憲や藤原恭大といった若い選手が伸びてこないと厳しいです。
――やはりロッテも、外国人選手の出来がチームの成績を左右する?
石毛 そうでしょうね。ただ、これはほかのチームにも言えることですが、本来は外国人選手に頼りすぎなくてもいいチームであることが理想です。その点でロッテは、荻野貴司や角中勝也らベテラン選手にも頼らざるをえない状況ですし、チームの底上げがうまくいっていない印象です。
【5位予想:日本ハム】
――近年、若手の成長が目につく日本ハムは5位予想。
石毛 万波中正は成長しましたね。打撃も守備もいいんですが、バッティングはまだ粗いところがあります。プロのピッチャーは甘くないですし、相当に研究されているはず。昨季に花開いて実質2年目のシーズンですし、今季が本当の意味で勝負の年になるでしょう。
その万波や、新外国人選手の(フランミル・)レイエス、(アンドリュー・)スティーブンソンらの長打に期待するのもいいですが、相手にプレッシャーをかけるには、打線における"脇役"の出塁が重要になると思います。
――新庄剛志監督の3年目。今季は勝負の年になりますか?
石毛 1年目、2年目と選手を見極め、若い選手に経験を積ませてきた。今季はある程度固定したメンバーで戦うでしょうし、やはり勝負の年になるんじゃないですか。ピッチャー陣は上沢直之が抜けましたが、先発もリリーフもある程度そろっている。昨季目についたミスをなくすことも、上位浮上のカギになりますね。
【6位予想:楽天】
――今季から指揮を執る今江敏晃監督のもと、2年連続Bクラスからの巻き返しを図る楽天。最下位に予想した理由は?
石毛 まず、松井裕樹が抜けたのが大きいです。則本昂大をクローザーに配置転換しましたが、そこがどうなるか。田中将大は楽天に復帰して以来負けが先行していますし、先発に"柱"と呼べるピッチャーがいないのも厳しいです。ただ、先発ピッチャー陣に加わった(コディ・)ポンセ、リリーフ陣に加わった(ニック・)ターリーは日本での実績があるので、ある程度は計算できそうです。
――バッター陣はどう見ていますか?
石毛 補強がなかったので上積みがなく、浅村栄斗以外に長打を期待できるバッターが少ないので、今季も(浅村への)負担が大きくなりそうです。それと、昨季は小郷裕哉や村林一輝がそこそこ試合に出ましたが、もっと若い選手が出てこないと。日本ハムは若手を積極的に起用してきているので伸びしろを感じるのですが、楽天にはそれを感じません。総じて、厳しいと言わざるをえない状況です。
【プロフィール】
石毛宏典(いしげ・ひろみち)
1956年 9月22日生まれ、千葉県出身。駒澤大学、プリンスホテルを経て1980年ドラフト1位で西武に入団。黄金時代のチームリーダーとして活躍する。1994年のシーズン後、FA権を行使してダイエーに移籍。1996年限りで引退し、ダイエーの2軍監督、オリックスの監督を歴任する。2004年には独立リーグの四国アイランドリーグを創設。同リーグコミッショナーを経て、2008年より四国・九州アイランド リーグの「愛媛マンダリンパイレーツ」のシニア・チームアドバイザーを務めた。そのほか、指導者やプロ野球解説者など幅広く活躍している。