センバツ高校野球決勝(31日、甲子園)○健大高崎(群馬)3―2報徳学園(兵庫)● 痛烈なゴロが一、二塁間を抜けた。2―2の三回1死三塁、健大高崎の3番・高山裕次郎が放った勝ち越しの右前適時打。報徳学園の堅固な内野陣は極端な前進守備を敷…
センバツ高校野球決勝(31日、甲子園)
○健大高崎(群馬)3―2報徳学園(兵庫)●
痛烈なゴロが一、二塁間を抜けた。2―2の三回1死三塁、健大高崎の3番・高山裕次郎が放った勝ち越しの右前適時打。報徳学園の堅固な内野陣は極端な前進守備を敷かなかったが、それでも触れないほど打球が速かった。
高山は「準備していたものが出せた」と振り返る。事前の分析で、相手バッテリーが多投する内角直球に狙いを定めていた。1ストライクからの2球目。膝元の143キロ直球に対し、右肩を開かず、しっかりと踏み込んで引っ張った。
高山は「犠飛を狙うと内野フライになりそうだった。素直にはじき返す意識だった」。現チームは中学時代に実績を残した選手が多いが、昨秋は長打狙いのフライアウトや三振が目立って苦戦した。
飛ばない金属バットへの完全移行も見据え、選手たちは「個人の野球をしていては勝てない」と悟った。各自が「つなぐ意識」を共有し、緩いボールを低い打球で打ち返す練習を繰り返した。一回の5番・森山竜之輔の左中間への2点二塁打も内角直球をシャープに引っ張ったもの。大会屈指の本格派・今朝丸裕喜の真っすぐに振り負けなかった。
健大高崎は足でかき乱す「機動破壊」が代名詞だ。8強入りした2014年夏の甲子園では1試合で11盗塁を記録したこともある。
だが、今大会の盗塁は1回戦の一つだけ。「ゴロゴー」などしたたかな走塁で得点を奪い、打線が上向けば強打で挑んだ。青柳博文監督は「機動破壊にこだわると、選手が小さく縮こまってしまう。能力の高い選手がいるので、将来も見据えている」。機動力も選択肢の一つに過ぎなくなったところに、健大高崎の進化がある。
個々の能力の高さと泥臭さ、走塁と打撃。「二つのハイブリッド」を生かし、21世紀に入ってできた野球部が、創設100年を迎えたセンバツの歴史に名を刻んだ。【石川裕士】